ウィキリークスの衝撃 世界を揺るがす機密漏洩の正体 (菅原 出)
(注:本稿は2011年初投稿したものの再録です)
ウィキリークスにより夥しい量の機密外交文書がオープンにされて約1年。本書は、「ウィキリークス」とその創設者「ジュリアン・アサンジ」をテーマにしたノンフィクションです。
従前の軍事・外交における「常識」を根底から覆し世界に激震を走らせたウィキリークスですが、その特異な行動の目的について、アサンジはこう語っています。
ウィキリークスで公開された25万点以上にのぼる国務省の外交公電等の漏洩元は、イラクに派遣されていた米陸軍インテリジェンス分析官だと目されています。
なぜ、一陸軍軍人が国家機密情報にアクセスし持ち出すことができたのか、その背景について著者はこう説明しています。
この中の一人が、漏洩元ブラッドリー・マニングだったのです。
しかし、これが事実ならあまりにも杜撰と言わざるを得ません。
(正直なところ、国家機密情報の管理がこの程度の厳格さ(セキュリティレベル)であったという説明内容はどうしても信じられませんが・・・)
そして、もう一つの誘因に、対イラク戦の不調がありました。
インターネットは、世界中の情報の流れを一変させました。
日本においても、尖閣諸島中国漁船衝突事件における実写ビデオの流出に見られるように、「機密情報」に係る一人の判断と行動がとてつもなく大きな社会的影響を与えうることが実証されています。
多様な価値観の存在は、決して否定されるべきものではありません。その条件の中で、守られるべき権利・権益等をどう捉えるか、異なる価値が交錯する具体的事例を前にしてどう対応・対処するか、非常に悩ましい問題です。
さて、最後に本書の印象です。
見開きには「全ての謎に迫る渾身のノンフィクション」と大書されていますがどうでしょう・・・。
著作のボリュームとしては、ウィキリークスが公開した情報の紹介・解説がかなりのページを占めていて、実際の「ウィキリークス」という組織の内情の追究・「ジュリアン・アサンジ」というベールに包まれた人物の深堀りといった点では、正直なところかなり物足りなさを感じました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?