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知の休日―退屈な時間をどう遊ぶか (五木 寛之)

 今から20年ぐらい前の五木寛之氏のエッセイです。

 五木氏流の「休日の過ごし方」を、本と遊ぶ、アートと遊ぶ、車と遊ぶ、体と遊ぶ…といった8つのテーマごとに紹介しています。五木氏のエッセイの中でもかなり軽めです。

 さて、内容ですが、「アートと遊ぶ」の章で「一流の絵画との接し方」について語られていました。五木氏が薦める秘訣は「夢中になること」です。

(p94より引用) 展覧会や画廊での時間を無駄にすごさない秘訣は、自分の大好きな「この一点」という作品を探しだし、それに夢中になることである。・・・
 いろいろ玄人じみた批評をしたり、芸術の高みに魂を遊ばせたりするのも結構だが、まず大切なのはドキドキすることである。退屈していては、はじまらない。まず好きになることだ。気持ちを集中することだ。好きになるためには、とりあえず数を絞ることである。

 私は、美術に造詣が深いわけでも何でもないのですが、美術館は結構好きです。(とはいえ、ここ数年はほとんど訪れてはいないのですが・・・)

 はるか昔学生時代、長期の休みで帰省した際に、倉敷の「大原美術館」には時折足を運んでいました。実家から車で1時間とはかからない距離にあったので手頃だったのです。当時は、人でごった返しているようなこともなく、いつもゆったりと回ることができました。常設展示でも美術の教科書に載っているような作品がいくつもあって、ミーハーな私としては納得感はかなりありました。

 ミーハーといえば、20年ほど前、スペインのプラド美術館を訪れたときに観た、ベラスケスの「ラス・メニーナス(女官たち)」は確かに印象的でした。
 最近でもその手の有名な作品に接する機会は「特別展」という形で数多くあります。ただ、開催される度にいつも気にはなっているのですが、長蛇の列を思い浮かべるとついつい足が遠のいてしまうのです。

 あと、本書で印象に残ったフレーズです。
 休日の遊びとして「飲料水の銘柄あて」が紹介されているくだりです。

(p191より引用) 人間の感覚を鋭敏にすることは、とても大事なことだ。私たちは近代的な暮しの中で自分の本能や感覚というものを、いつの間にか眠らせ、役に立たなくしてしまっている。水を味わう。そのひとつのことだけでも徹底的にやれば、休日の午後は結構たのしくすごせるものである。

 そういえば、意識して「五感を働かせる」ということはやっていないですね。五感を通して刺激を受けるような機会を、できるだけたくさん作りたいものです。
 そのためには、まず外に出るのが“はじめの一歩”なのでしょうが、それもなかなか億劫になっているのがマズイところです。


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