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幸福なる人生 (中村 天風)

 中村天風氏の本は、以前「君に成功を贈る」を読んだことがあります。この本も、前書と同様に天風氏の講演を書き起こしたものです。

 著名な政治家・経済人にも多くの信奉者をもつ天風氏の根本思想は「心身統一」。本書は、その具体的な実践方法を語っています。

 さて、「心身統一」において天風氏が最も大事だと説くのが「心の持ち方の積極化」です。
 そのための具体的な方法が「感応性能の強化」、この実現のためのステップについて、天風氏はさらにこう続けます。

(p100より引用) この感応性能を強くするには、三つの条件が解決されなきゃいけないんです。第一が観念要素の更改、第二が積極観念の養成、第三が神経反射の調節・・・

 この三つの条件を満たすための修練法がこのあと縷々解説されていきます。

 まずは「観念要素の更改」
 これはどうやら、人間の潜在意識にある消極的な考え方を追い出し「積極観念」で満たそうとすることのようです。

(p126より引用) 観念要素の更改は、順序として理論的にいえば、われわれの心の持つ暗示感受習性が特別に旺盛に働くときに実在意識を積極的にすればいいんです。

 正直なところ何のことがわからないですね。じゃあどうすればいいか・・・。
 「暗示感受習性が特別に旺盛に働くとき」、これは熟睡に入る直前なのだそうです。このタイミングに思ったことは直ちに人の潜在意識に入り込むというのです。そこで天風氏が示す方法はこうです。

(p131より引用) どんなことでもいいから、思うほどに、考えるほどに自分の心が何となく勇ましく、微笑ましくなるようなことだけを考えてりゃいい。・・・
 寝際だけは心に一切の重荷を負わせないというこの気持ちこそ、まことに観念要素の更改の秘訣であります。

 こういった感じで、「積極観念の養成」「神経反射の調節」の法についても語っていきます。天風氏の講演の書き起こしですから、比較的わかりやすい反面、内容は少々冗長な印象を受けますね。

 また、本書では天風氏独特の辛口の言葉も印象的です。
 たとえば、人生訓・処世術等を諭した古今の名著を読んだ人に対して。

(p108より引用) 学者や識者の著した名文句を見て、煩悶を感じないで感心しているやつは、人生に対する考え方がまだ浅い人間ですぜ。・・・本当に人生を考えている人間はすぐ、そのよい文句のとおりの人間にどうしたらなれるのだろうか、というところにクエスチョンマークをつけるはずです。・・・
 私は遠慮なく言う。現実の人生への要求が満たされない者が、軽はずみに感激したり感心したりするのは、自分の浅はかさをさらけ出す行為であると。
 ・・・本当に腹の減っているやつは、絵に描いてるご馳走を見ただけじゃ腹は大きくならないのです。

 このくだりは確かに首肯できます。
 うわべだけで感心してそのまま何も変わらず、自らそうなろうという実践・努力を怠っているというのは、まさに耳に痛い指摘です。



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