能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ (安藤 寿康)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目についたので手に取ってみました。
“遺伝子” や “ゲノム” の話題に関しては、最近は「食糧問題」の文脈から堤未果さんの「ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?」を読んでいます。
翻って本書は、「人間の遺伝」の最近の研究成果を紹介したものです。ただ、私がイメージしていた内容(「分子遺伝学」的なジャンル)とはかなり異なっていました。
本書は「行動遺伝学」の入門書のようです。
「行動遺伝学」という学問、私は初めて耳にしたのですが、著者の安藤寿康さんは、こう紹介しています。
また、こうも説明しています。
この「行動遺伝学」で使われる「用語」が意味しているものは、通常私たちが思い浮かべるものとかなり異なります。「才能」「能力」「努力」・・・、そのあたりの解説は第2章で丁寧になされるのですが、正直、私にはちょっと理解しきれないところがありました。
なので、そういった定義を前提にした専門領域に係る解説や議論は、興味深い内容ではあったにも関わらず、全くといっていいほどついていくことができなかったというのが正直なところです。
しかしながら、最後の第5章「遺伝子と社会」で、安藤さんの論調がいきなり大きく変化します。
現代の実社会においてしばしば “タブー視” されがちな「遺伝」の議論を、正面から受け止め捉え直すことを訴えているのでしょう。
現時点までの「行動遺伝学」の知見を踏まえた安藤さんなりの “未来観の表明”ですね。
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