薩摩スチューデント、西へ (林 望)
エッセイでは定評のある林望氏の長編小説です。
舞台は幕末、薩英戦争敗戦後の薩摩です。攘夷の不可能を痛感した薩摩藩主島津久光は、国禁を犯して薩摩の若人をイギリス留学に旅立たせました。西欧諸国と伍して行くために決断した薩摩藩の先見です。
ストーリーの大半は、薩摩スチューデントの往路の航海での体験描写です。
薩摩スチューデントは、最初の寄港地香港で国際社会の現実的序列を思い知ることになります。
香港で定期便に乗換えた後、英国までの長い航海の中で、彼等は多くのヨーロッパ人の日常の姿と接することとなりました。
その過程で、彼らの「攘夷」が如何に現実離れした考えであったのか、それぞれがそれぞれの体験を通して気づき始めたのでした。
この吉田は、井上馨外務卿の元で条約改正にあたった後、初代農商務次官となった吉田清成です。
また、地中海の航海で寄港したマルタ島では、海の堅固な要塞とともに西欧文化にも触れました。それは、教会であり、オペラハウスであり、図書館でした。
この畠山義成が、東京開成学校(東京大学の前身)初代校長となるのでした。
一致団結して渡英した4名の使節と15名の留学生。当初の留学目的は諸般の事情で貫徹できず、帰国はバラバラとなりました。
その後世もまた、様々ではありました。
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