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遺譜 浅見光彦最後の事件 上・下 (内田 康夫)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 このところ、かなり以前に読んだ内田康夫さん“浅見光彦シリーズ” の中から、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみているのですが、図書館でそれに該当する本を探していたおり、目についた作品です。

 ともかく “浅見光彦最後の事件” という副題はインパクト十分ですね。まんまと内田さんの餌に食らいついてしまった気分です。

 ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、主な舞台は浅見光彦シリーズの締め括りということもあり、ダイナミックにドイツ、オーストリアにも足を伸ばし、その地の観光案内にも匹敵するような風景や街並みの詳細な描写が印象に残ります。(ということで、残念ながら「出張先」とは全く無縁です)

 また、登場人物はお馴染みの浅見家の面々はもとより、過去の事件で関わりのあったヒロインたちも数多く顔を出し、そのうちの主だったキャラクタはこの物語の中でも大切な役回りを演じていました。

 肝心のストーリーも完結版に相応しく “正統派の構成” だったと思います。こういうセリフで浅見光彦へのエールを語らせるのも完結版ならではですね。

(下 p350より引用) 「何を考え何をしようと、浅見はんらしく生きなはれ。・・・ 浅見はんの立派なのは融通無碍や。囚われず、縛られず、自由闊達に動いて、しかも踏み外すことがない。ほんまにあんたは誰をも愛し、誰にも愛されるお人やなあ。それは時にはしんどいかもしれまへんが、天命やと思うて、こらえてください。誰もがそう願うとりますよ」

 「あとがき」で内田さんは今後の “復活” についてもちょっと言及していましたが、私としては、内田さんのみの筆として完結させた最後の作品である本作を区切りとして、またそれに至るまでの作品を辿っていこうと思います。



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