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置かれた場所で咲きなさい (渡辺 和子)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 著者渡辺和子氏が学長を勤めた「ノートルダム清心女子大学」は、私の出身地岡山にあるので、卒業生の友人も何人もいます。
 そういった親近感とともに、いくつかの書評でも薦められていたので手にとってみました。

 ストーリーがあるわけではないので、気になったフレーズをいくつか書き留めておきます。

 まずは、著者が紹介している他の方々の言葉から、「美しく生きる」の章。

(p45より引用) 「うばい合えば足らぬ。わけ合えばあまる」相田みつをさんの言葉です。

 もうひとつ、こちらは「あなたが大切」の章で語られているノートルダム清心女子大学を訪れたマザー・テレサにまつわるエピソードです。

(p70より引用) マザーの話に感激した学生数人が、奉仕団を結成して、カルカッタに行きたい、と願い出たことがあります。それに対してマザーは、「ありがとう」と感謝しつつも、「大切なのは、カルカッタに行くことより、あなたたちの周辺にあるカルカッタに気付いて、そこで喜んで働くことなのですよ」と優しく諭されたのです。

 そして、以下は著者自身の経験から発せられた言葉。
 著者の人生にもいくつもの悩みや苦しみがありました。50歳のころには「うつ病」にも苦しんだとのこと。そういった「人生の穴」に落ち込んだ時、著者が得たのはとても大切な新たな気付きでした。

(p73より引用) 人生の穴からのみ、見えてくるものがあります。そこから吹いてくる風の冷たさで、その時まで気付かなかった他人の愛や優しさに、目を開かされることがあるのです。

 穴の底から上を見上げたとき云々・・・、こういったシチュエーションにまつわる話を歌手の加藤登紀子さんから伺ったことがあります。
 加藤さんは身長が低く、大抵の場合、人と話をするときには見上げることになるとのこと。そうするといつも「空」を見ることになる。背の高い人の場合は人と話すとき「地面」しか見えない。背が低いことが良いこともあるんだとのお話でした。

 さて、本書からの引用の最後は、著者が大学での講義で学生たちに伝えているという「2%の余地」の勧め。

(p137より引用) どれほど相手を信頼していても、「100%信頼しちゃだめよ。98%にしなさい。あとの2%は相手が間違った時の許しのために取っておきなさい」といっています。

 ひとりひとりの人格を尊重することは、自分と他者との違いを認めることでもあります。異なる人格ですから考え方も変わっていて当然です。したがって、付き合っていく中で、相手から自分の想定と異なる態度・反応が返ってくることもあるのです。

 人を信じると同時に、それでも生じうるコミュニケーションの齟齬を埋め合わせる「心のゆとり」を持っておくべきとの教えです。



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