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北斎のデザイン 冨嶽三十六景から北斎漫画までデザイン視点で読み解く北斎の至宝 (戸田 吉彦)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着書の棚で目についた本です。

 「北斎のデザイン」というタイトルがまずは私の興味を惹いたのですが、さらに「カラー図版」がたくさん掲載されているので見やすいかと思い借りてきました。

 著者の「デザイン」という視点からの専門的な解説は、美的鑑賞力のない私にとっては、なるほどと思えるものばかりでした。
 「第1章 構図」「第2章 色彩」「第3章 意匠」「第4章 カメラ・アイ」「第5章 季節と人間」「第6章 幾何学的形態」「第7章 線の魅力」と章立てされていますが、まず第1章において、「欧米での北斎の浮世絵の評価」の背景について著者はこう語っています。

(p15より引用) そもそも浮世絵は、江戸時代に美人画と役者絵で大衆を喜ばせて発展し、後に旅行ブームから名所絵が登場した商品です。当時の客は興味ある名所ゆえに絵を求め、近代の西洋と比べて絵の鑑賞意識が違います。その中で、自らの画想を追求して描かれた「山下白雨」はじめ「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」の存在自体に驚きますが、さらにそれが西洋に登場すると同時に賞賛され、今も高い評価を受けることは北斎の代表作にふさわしく、ここから日本の近代的風景画が始まったと言えます。

 本書は、「デザイン」という切り口から北斎作品の魅力を読み解いたものですが、併せて、北斎にまつわる数々のエピソードの記載も豊富です。

 「第2章 色彩」の章では、贅沢を禁ずる幕府の政策を受け、使える「色彩」を制限されたなかでの北斎の画家としての矜持が紹介されています。

(p91より引用) この苦労を生涯続け享年90歳まで絵を描き続けた北斎は、多くの絵の手引書を描き残し、亡くなる前年に刊行した最後の本は、色についての指南書 『画本彩色通』 (1848年) でした。

 さて、本書を読んでの感想です。

 数多くの北斎の作品を、興味深い観点からの解説付きでまとめて鑑賞できるのはとてもありがたかったですね。
 紹介されていた多彩な作品の中でも、私が気に入ったのは「北斎漫画」の数々と「富嶽三十六景 御厩川岸より両國橋夕陽見」
 特に「富嶽三十六景 御厩川岸より両國橋夕陽見」は、ダイナミックな構図と細かな工夫の描き込みがとても印象に残りました。ちょっとコミカルな味を残しているのが粋ですね。

 本来なら、美術館でホンモノとじっくり対面したいのですが・・・。北斎の作品は海外の美術館所蔵のものが多いようで、それもなかなか難しそうです。
 本書に掲載された作品を参考に、また「北斎の作品集」でも探して眺めてみたいものです。



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