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となりのクレーマー ‐「苦情を言う人」との交渉術 (関根 眞一)
著者の関根眞一さんは、実際に西武百貨店の「お客様相談室」で数々の苦情・クレーム対応を経験された方です。
やはり現実の経験に裏打ちされた話には圧倒的な説得力がありますし、「事実は小説より奇なり」といった風のエピソードも紹介されています。
それらの中から、私の興味を惹いたものをいくつかご紹介します。
まずは、クレーム対応の王道の話です。
(p21より引用) 細かいクレームに対して真摯に対応している事業体には、隙がありません。「クレームはトラブルになる」という、危機意識を持っているからです。
一方、「クレームごとき」と、軽い要望すら無視するような態度のところは、一見、クレームに強そうに見えるのですが、逆にクレームが大きくなり、トラブルに発展する場合が多いのです。
次に、「クレーム対応のプロ」の反省の弁です。
(p147より引用)
●「たった二円」という気の緩みで、誠意を感じられない対応を見抜かれた。
●「普段から怒鳴るいやな感じのお客様」というレジ係員の言うことが先入観になって、お客様像を勝手に作って訪問した。
こちらは、またか・・・何度も何度もといった対応であっても、お客様から見ると「一発勝負」です。一回一回の対応は、常に「真剣勝負」の気概で取り組まなくてはならないということです。
特に二点目は難しいですね。事前にお客様について知るということは当然基本動作として必要なことです。ただ、そこでこれから対応するお客様像を想定する際、「(お客様に関する)事実そのもの」と「事実からの(他人の)評価」とを、きちんと意識・峻別してイメージすることが重要なのでしょう。
最後に、「苦情・クレーム対応の極意=お客様の立場に立つ」という点について。
(p156より引用) 「お客様の立場に立つ」ことは、実際に簡単なことではありません。・・・
私は、一年経って、ようやく店側でも顧客側でもない、中立の立場になれたと自覚できました。・・・
二年もすると、かなり顧客側に立てるようになりました。・・・
しかし、三年も経つと、ほぼ顧客側の立場になりました。そうすると、不思議なことに八割は電話だけで解決できるようになったのです。残りの二割も、店内で調査して後日連絡する、で解決できることがほとんどになりました。
店側に立って苦情やクレームを処理するほうが、よほど時間がかかり、非効率的なのです。
さもあらんとは思いますが、実際ここまでの姿勢になりきるのは、生半可なことではないでしょう。
自己の精神状態を意識的にコントロールし、その考えのスタート・発想の始点の立ち位置を変えるのですから、ただ「経験」を積めばよいというレベルではありません。
能動的な「自らを変えようという意思の力」を感じます。
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