(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
かなり以前に「氷川清話」は読んだことがあるのですが、久しぶりの勝海舟関連の本です。
勝海舟といえば、江戸末期、万延元年(1860年)に咸臨丸で渡米、帰国後は軍艦奉行に就任、その後、中核の幕臣として江戸城無血開城を実現。明治維新後は、参議・海軍卿・枢密顧問官を歴任し伯爵に叙せられた傑物です。
本書は、晩年、明治28年(1895年)から32年(1899年)にかけて海舟が語った体験談を巌本善治氏が筆録したもので、その口調まで写した興味深い著作です。
そこに記されているストレートな政治・社会批評ともいうべき内容は、その視座の高さ・本質を一言で突く鋭さ等、とても刺激に富んでいます。
たとえば、こんな感じです。
同じような言は、その他の会話の中にも見られます。
もうひとつ、巌本氏から「維新後、大機会をあやまったということは、いかなる場合ですか」との問いに答えて。
このあたりの社会・政治情勢の見方も、多勢に流されず冷静ですね。
これに似た姿勢は「金貨本位制の賛否」に関する海舟の言葉の中にも表れています。
社会の潮流を大局的につかむ認識力の鋭さに加え、現実の社会を動かしていく人材を見抜く海舟の洞察力には際立ったものがありますね。
このあたりの海舟の資質の底流にある考え方を、自身、こう語っています。
さて、本書ですが、海舟の語りを筆録し「清話のしらべ」と名付けられた本編にとどまらず、後半の「附録」も必読です。
海舟所縁の人々が語る数々のエピソードや思い出が紹介されているのですが、これがまたなかなか面白いものです。
その中から、足尾鉱毒事件の解決に尽力したことで有名な田中正造氏の海舟評を書き留めておきます。
やはり海舟、破格のスケールをもった正に稀有の人物だったのでしょう。
最後に、海舟といえば、やはり西郷隆盛。
海舟ならでは、本心からの言葉でしょう。