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ニューイヤー in チェンマイ【タイランド#8】


大晦日の夜もチェンマイの町を2人でひたすら歩き回っていた。
チェンマイには金土日の夜に滞在をしたのだが、チェンマイに弾丸で来るなら週末が絶対良い。
サタデーナイトマーケット、サンデーマーケットという催しが、それぞれ土日に開催されているのだが平日はやっていないのである。
私たちは金曜の夜は年中やっているナイトマーケットへ行き、土日は限定のマーケットに行くことにしていた。
今日が何曜日か忘れてからが旅の始まりだと私は常々思っているのだが、長旅なのにチェンマイでは唯一、しっかりと曜日を意識して旅をしていた。そのため、大晦日という認識の方が薄れていた気がする。
大晦日に衛星テレビのあるホテルの部屋でNHK紅白歌合戦を見ることを楽しみにホテルを選んだのだが、残念ながら紅白は映らなかった。
なので大晦日も、とりあえず土曜日ということでサタデーナイトマーケットに繰り出した。

ちょうど日本が年を越した時間帯に、チェンマイで私たちは、小さなステージで演奏している子供バンドを見て、クセの強い曲調と振り付けに大笑いして手拍子して大盛り上がりした。
私たちが好きになった曲「Oh,yes」と「トイトトイ」の2曲(勝手に曲名を2人でつけた)をアンコールしてくれて最高だった。

(ぜひ聴いてほしいこの2曲。)

ナイトマーケットをブラブラ歩いて、さっきの2曲を振り付きで真似して歌って笑いころげて歩いていたら、後ろから「ハロー!ハロー!」と呼ばれた。
振り返ったらさっきの子供バンドのボーカルの少年だった。
最前列を陣取って盛り上がってバンドメンバーの振り付けを一緒にやって、歌も覚えて、終わってもまだなおはしゃいでいた外国人のファンに、ボーカル自ら声をかけてくれたのである。
もう胸熱!
3人でOh,yesのポーズをして記念撮影し、コップンカーと言い合い、ボーカルの少年は衣装が入っていると思われるパンパンのリュックを背負って夜の町に消えていった。

かわいいし、さすがボーカルだけあって自信に満ちている。

最高の夜やと興奮し、その後チェンマイの銀閣寺で年越しの謎の儀式を見た。
銀色の寺がライトアップで緑、紫、青、ピンクと変化し、白装束を着て白い糸で繋がれ熱心に祈る人たち。
何だかとてもシュールであった。


銀閣寺を出て空を見上げたらUFOの大群のようなものが見えた。
「あれ?UFOかな?めっちゃいっぱい飛んでる。」と私が言ってほぼ子さんも空を見て、もしやあれはロイクラトンのコムローイ(小型の熱気球のようなもの。空飛ぶ灯籠)では?!と2人で興奮して、UFOの飛んでいる方角へと方向転換した。
すると後ろを歩いていた多くのツーリストも同じようにマネしてついてきて、それがいつの間にか色んなところから大勢が合流し、集団でターペー門に到着。
「密」中の「密」の大盛り上がり。
ここは何となく慌ててマスクを着用した。

こんなにも欧米人がチェンマイにいたのかと驚きの集団。
そして皆がどこで手に入れたのかコムローイを持っている。
ロイクラトンのイベントのように統制されていないため、はちゃめちゃにあちこちから適当にコムローイをあげている。木に引っかかって燃えそうになっているものもあれば、上に上がらなくて燃えたまま落下するものもありカオスではあったが、みんなハイテンションなのでこちらも楽しくなってきた。

私は屈み込んで下からのアングルでコムローイを上げている人を激写するのに夢中になっていたら、右肩に熱いものを感じたと同時に「ヤバい!のりまきさん!!」というほぼ子さんの叫び声。
そして「Oh,shit!」という男性の声。
振り返ったら落下してきたコムローイが私の右肩に落ちてきた。「うわー!」と尻もちをついたらその角度がちょうど良くて、間一髪炎がズレて燃えずに済んだ。
そして5秒前からのカウントダウンが急に始まって、ハッピーニューイヤー!とあちこちで声が上がり、空には花火も上がった。
何とも言えないドラマティックな年明けだった。


ワットチェディルアンに戻るとライトアップがされていた。
ちゃんと子供のお坊さんたちが1つ1つのキャンドルに火をつけられたみたいで安心した。
そこで小太りの大人のお坊さんに呼ばれて祈願してもらってなぜか大量の水をかけられて、手首に紐を巻いてもらった。
日本のお正月はしめちゃんと除夜の鐘をついて甘酒を飲むのが毎年恒例だったが、甘酒のようなものが並んでみたので行ってみるとソイミルクとミルクと生姜湯だった。私は甘いミルクをもらって揚げドーナツのようなものもいただいた。
ほぼ子さんは、お寺の人が余って困っていたソイミルクを水筒いっぱいに入れてもらっていた。そしてそろそろ帰ろうかと言ってまた40分くらいかけて歩いてホテルへ帰った。大晦日は12時にホテルを出て、3時前に帰ってきた。ご飯を食べてお茶してくっちゃべってはいたが、そりゃ3万歩超えるはずだなと今はそう思う。
途中、フットマッサージの店に寄り、私はマッサージ師のお姉さんに交渉して、足を30分、肩と背中と頭のマッサージを30分のオリジナルコースを組んでもらった。ほぼ子さんもそれにしたいと言い、2人で並んで体の疲れを取ってもらった。
私はお姉さんに「腰に持病があるから強くやらないでほしい。上半身を反らせるものはNG。」だとか「頭痛持ちだから前頭部を強めにやってほぐしてもらいたい。」だとか「足はセンシティブなので痛いのはやめてほしい。それで効き目が減ったとしても構わないからとにかく足はリラックス目当てで。リンパは流してほしいけど。」とか念入りに頼み込んだ。お姉さんは、分かった分かった任せてと言っていたが、私のその交渉術を見てほぼ子さんは感心していた。
私は年齢を重ねて、見ず知らずの他人に完全に体を任せることが難しいくらいにあちこちに難ありの体だが、自分の体と自分がしてほしくないことを知った上で臆せず伝えるということができるようになったのも、年を重ねたおかげかも知れない。
お姉さんは約束通りにしてくれて、ほぼ子さんの足の疲れも軽くなったようで良かった。


総じて良い大晦日、良い年明けだった。
とりあえず今年一年は、時々は空を見上げること、振り返ったら何かが起こるかも知れないこと、とにかく歩くこと。
これがテーマかも知れない。

タイに到着した夜は、細い線みたいな月だったのに、今夜は半月を超えてふっくらしてきたなぁと、空を見上げて思った。




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