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町立大島病院に産婦人科を開設 その背景と目的

12月議会の議案で最も議論が巻き起こったのが、
議案第 17 号;周防大島町病院等事業の設置等に関する条例の一部改正について
だったと思います。
議案説明資料では、次のようにありました。

 1 改正理由
 周防大島町立大島病院に産婦人科を開設するために関係条例を改正しようとするもの。
2 改正の内容
別表(第2条関係)の改正
周防大島町立大島病院の診療科目に「産婦人科」を追加する。
3 施行期日
令和6年4月1日から施行する。

もう何年も前に、産婦人科が町内から消えてしまった周防大島。
10数年前には、近隣の柳井市のクリニックでも出産が扱われなくなって、1番近いのが周東総合病院になりました。
この議案、現在病院事業局では、「経営改革プラン」を策定し、スリム化を図ろうといしている中で出された話で、受け止めにかなり戸惑いました。

経営改革プラン素案の資料の中で示されている医療需要をみても、これから産婦人科を開設することが、経営的には赤字にしかならないことは明白です。

周防大島長病院事業経営改革プラン素案より

○“産婦人科開設“の実態

議案説明と質疑により、次のような中身がわかりました。

  • 令和6年度から、大島病院に、週1回半日の受診外来を開設する。

  • 医師は、周東総合病院からの派遣。

  • 町立3病院の中で大島病院を選定した理由は、看護師等のスタッフ体制が確保できるから。

  • 健診は、妊婦健診のほか子宮がん検診が可能になる。

  • 妊婦健診の需要自体はあるが、本町の出生数は年間40人を切っており、大きな需要は見込めない。

  • 不採算になることは織り込み済みだが、周産期医療は国の交付金等が上乗せされるので、それを充てる。

○産婦人科の運営経費は

この議案に先立って審議・可決された補正予算では、妊婦健診等に必要な医療機器の購入に1560万円計上されていました。
機器の償却期間は5年ということなので、年間約300万円。その他医師や助産師(幸い有資格の看護師採用ができたそうです)等の人件費等を考えると少なくとも年間700万円以上はかかると推測できます。

○周東総合病院産婦人科の維持も目的のひとつ

令和4年、常勤の小児科医がいなくなったり(複数非常勤で小児科は維持)、令和5年度から産婦人科医が足りなくなり、出産の受け入れができそうにないので10月以降新規の受付はできないと、病院から広報されていました。

もし周東総合病院で出産ができなくなったら、柳井医療圏には出産できる病院がなくなります。周防大島からはより遠くの光市や周南市、岩国市まで通うことになります。医療圏の中で、距離的に最も影響が大きいのが周防大島町の住民、とも言えると思います。

山口県としても、医療圏の中に出産できる病院がひとつもなくなるということは大きな問題で、産婦人科医の配置に総力をあげてくださいました。

おかげで現在は、医師が確保され、安心して出産できる体制を整えていただけました(ホッ)。

本年度から、柳井圏域で唯一の出産ができる病院、周東総合病院の体制を維持していくために、棚井圏域の1市4町が財政的支援の拡充も行っています(周防大島町;周産期医療提供体制支援事業351万円)。しかし、周東総合病院での分娩数が(令和4年度が特別だったとしても)減少傾向にあるのは、現実のようです。

周東総合病院ウェブサイトより
https://shuto-hp.jp/pages/57/

本町に住んでおられる方が妊娠されたとき、どこの病院を利用されているのか。そのデータも、経営強化プラン素案の中で示されています。

妊婦健診などの通院


出産などの入院

このグラフをみると、およそ3割の妊婦さんが周東総合病院を利用されていることがわかります。
年間40人の妊婦さんのうち3割となると、12人。

周南市や光市の民間医療機関が結構人気のようで、車で片道プラス30分以上かかっても、そちらを選ぶ方も多いようです。

○出産経験者に色々聞いてみると

議員の中に、現在女性は私ひとりだけ。しかも、産婦人科には行ったことはありますが、出産を経験していません。
知人の出産経験者に、今回の産婦人科開設について、意見を伺うことにしてみました。
質疑で分かった上記の内容もご説明した上で意見を伺うと、それを知る前と知った後では、考えが変わった、深まったという意見も寄せていただきました。

  • つわりがひどい人は、少しでも近いところで妊婦健診できるのはありがたいのでは。

  • 里帰り出産をする場合、妊婦健診にだけ通うのは便利そう。

  • 大島病院と周東総合病院は、車で20分しか離れていない。それなら周東総合病院まで行く(橋からより遠い地区にお住まいの方の意見)

  • クリニックではなくて総合病院の産婦人科だと、知り合いにたくさん知られてしまいそう。。。

  • 「子育てしやすいまちづくり」のための事業にお金をかけるなら、より優先順位が高いのは、時間外の小児対応(現在、徳山中央病院まで行かないといけない)

  • 詳しく聞くまで、町内で出産ができるようになると周りの人も含めて勘違いしていた

などなど。特に、「もう決定事項なの?!」という驚きの声が多かったと感じます。ユーザー候補者に何のヒアリングもなく決定しようとしていることに、まずびっくりされていたようです。

その上で、前向きなご提案もいただきました。

周東総合病院での分娩件数自体が落ち込んでいるし、そもそも町内の出生数が少ないので、妊婦健診で利用する人はごく限られるだろうし、それは今後も続く。であれば、新たに開設される産婦人科は、何か特色を出してほしいと。
産科よりも婦人科に期待していてい、子宮筋腫などの相談、ピルの処方、思春期の生理の相談、不妊治療ができたり。婦人科系の悩みをもつ方に寄り添うような取り組みがあったらいいな。


周防大島町民の半数以上が女性。女性しか行かない産婦人科。開設に向けた準備や運営にあたっては、女性目線、女性の意見を活かしていただきたいと強く思いました。

○当事者ごとと、町政運営と。議員として

今回の案件は、議案の説明、質疑から、討論・採決まで16日と時間がありました。おかげで、疑問点や腑に落ちない点を関係部署(病院事業局と、健康増進課)に問い合わせ確認することができたし、自分含めユーザーとなる女性に色々意見を聞くことができました。

それらを踏まえて、賛成ではありますが、開設にむけて課題と考える点がいくつかあるのでそれらを討論の場を使って、執行部、同僚議員、町民の皆様にお伝えさせていただきました。

【周産期・子宮がん検診以外の婦人科診察もしっかり行っていただくこと】
本町は、人口の半分以上が女性です。妊婦さんは年間40人といっても、婦人科系の悩みを持つ女性は、相当数いらっしゃるはずです。
思春期の生理の相談、ピルの処方、子宮筋腫などの相談、不妊治療、更年期の相談などにもしっかり対応いただけると、これまで受診に至らなかった方々にも、受診のきっかけになると考えます。

【産婦人科について、大島病院と周東総合病院のPRを連携して行うこと】
ここ数年、周防大島町民の周東総合病院での分娩数は減少傾向にありました。
人員体制の課題があったと聞いておりますが、昨年度、出産の受け入れが一時中止されたということもあったためか、大幅に減少しています。
関係各所のご尽力と、柳井圏域の市町からも財政支援を拡充し、産婦人科医師が確保され、出産の受け入れも再開されています。
しかし、現在のところ以前の利用者数には戻っていないようです。
大島病院での週1回の外来受診とあわせ、周東総合病院のPRもセットで行っていく必要があると考えます。

【開設に向けた準備段階では女性の視点を中心に据えて】
採決されたとして、開設まで、あと3か月しかありません。残念ながら、この場(議場。つまり、議員矢管理職)には女性は少なく、私も出産経験がありません。
これから開設に向けた具体的な準備にはぜひ、当事者となる女性の視点を中心に据えていただき、子育て担当部局(健康増進課)としっかり連携して、女性目線で通いたくなる産婦人科の開設に向けた準備を求めます。

(さらに、私が1番懸念していることとして)
今回開設されたとしても、数年で閉じるというようなことはあってはならないと考えます。
本町の病院になくてはならない部門になるよう、しっかり運営していっていただく覚悟と努力を求めます。

また、今回の議案について、子育て世代の女性たちに、多くお話を伺いました。
その方々からは、産婦人科に増して、小児科、特に緊急時に対応いただける小児科を近隣で確保いただくことを切に望む声が多数聞かれます。
子育てしやすい環境整備に向けて、小児科の緊急対応をいただける体制確保にもより一層力を入れて取り組んでいただきたい。
以上、今後の課題について指摘と要望をし、賛成討論とします。

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今回の「大島病院で周東総合病院の医師による週一の産婦人科開設」は、現在子供を産もうとされている方々だけではなく、10年後も柳井圏域で安心して出産・子育てをできる環境を守るための、長期的視野に立ったものであると受け止めて、賛成の立場で討論をさせていただきました。

。。にしても、ほんとに突然で、現状やそれに基づいた目的などは、根掘り葉掘り関係部署に個別に確認していかないといけないのでしょうか。
それが議員の仕事だと言われたらそれまでですが、一般質問ではなく執行部側からの議案なので、もう少し、何かこう。。。
これは、求めすぎなのでしょうか?

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