リーダーとマネジャーの違い:ジョン・コッター(1)リーダーが創るのは「もう一つの未来」


元ハーバードビジネススクール教授のジョン・コッターが1990年にハーバード・ビジネス・レビューで執筆した「What Leaders Really Do」(*)という論文は、リーダーというものの役割、あるいはリーダーシップというものをマネジャー、あるいはマネジメントと対比することにより、非常にわかりやすく切り取った。僕はかねてより、この混迷の日本に、いま一番必要とされている論文は、この古典だと思っている。この論文は示唆に富んでいるだけでなく、とても美しい、とさえ思う。この論文を皮切りにはじまるジョン・コッターの世界の魅力を少しでもお伝えできたら嬉しい。 

     (*) 日本語版は「リーダーシップ論」 by ジョン・P・コッター(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部)に「リーダーシップとマネジメントの違い」として収録

コッターさんによれば、マネジャーが目の前の仕事をつつがなく回し、組織を機能しつづけさせるという役割を担っているのに対して、リーダーは「変化」を創り出す、あるいは、「変革を成し遂げる」役割だと言ってる。

これは、とんでもなく大きな違いである。
片や、これまで回ってきたことを、そのままつつがなく進めていこうという役割なのに対して、もう一方は、それを大きく変えてしまえ、という役割なわけである。
これまでまっすぐ進んできたものを、そのまま、まっすぐ進めたいひとと、それを大きく曲げていきたい人。
ー ある意味、真逆でさえある。

お互いの役割自体がそんなに大きく違うことから、マネジャーとリーダーは、その思考、言動、すべてが大きく変わってくるわけである。
そして、ここをきちんと理解できないと、組織は混乱に陥ったり、硬直化されて進化がなくなる・・・・というわけだ。

では、その違いは何か、というのをこれからご一緒に少しずつ見ていきたいのだけど・・・

まずは、最初に着目したい言葉が、リーダーが創造するものを表す言葉だ。
それは、英文の原文中に一度だけ出てくる

「an alternative future」

という言葉だ。

これは、日本語版では「選択すべき未来」と訳されている。
文脈的には、その訳が最適であろう。
ただ、この言葉だけを切り取ってリーダーの役割を考えるとき、ここは、あえて「もう一つの未来」と訳すことも、アリ、というか面白いのではなのか、と個人的に思う。

この論文では、マネジメントをの創り出すものを、「The aim of management is predictability—orderly results(マネジメントの目的は予測可能性ー整然とした結果)」であると言っている。
つまり、マネジメントが皆を連れて行こうとする先にあるもの、、、マネジャーが創り出すものは、「予測できる未来」なわけだ。
ー このまま皆で一生懸命仕事を続けていれば、必然的にたどり着く、予測可能な未来。
そこに、きちんと皆を、安全に、失敗なく連れていくのがマネジャーなわけだ。

ところが、リーダーは違う。

そんな、現状の延長線上にある未来に皆を連れていくのではなく、そのリーダーやその仲間たちが、そもそも強く心に描かなかったら、きっと成し遂げられるどころか形さえも見えなかった「もう一つの未来」、、、そこに皆を連れていく、それがリーダーシップなのである。

an alternative future、、、もう一つの未来。

そこに向かって皆と一緒に歩みだすのがリーダー、というわけだ。

どうだろう。
コッターさん、、、うっとりするように美しい、と思われないだろうか。

また、いろいろな角度からご紹介させて頂きたい。


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