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「組織人」崩壊の時代

【ショッキングな事件】
ニュースを見ると「規律が全て」の日本の自衛隊という組織に、何らかの変化があるように見えて仕方がない。

●最初の事件は訓練中の若い自衛官が上司を射殺した、という事件。
●次の事件は「階級でモノ言うんじゃねぇぞ」という暴言事件

他にも覚醒剤、婦女暴行、などなど、今年前半だけでも「自衛官の起こした事件」は数多いのは、「自衛官 事件」で検索すると、たくさん出てくる。地方レベルの報道でも多い。

【数で見て見よう】
現在、日本の自衛隊には約225,000人がおり、陸上自衛隊約140,000人、海上自衛隊約42,000人、 航空自衛隊約43,000人が勤務している。企業の従業員数で比べると、日本で一番多い従業員数を持つトヨタ自動車が約365,000人。自衛隊の規模は、人数だけで見ると、住友電工(約250,000人)、ホンダ技研工業(約210,000人)の間くらいの規模だから、日本でも有数の巨大組織だ。そのため予算も多いのだが、最近は日本のGDP比での防衛予算が問題になっているのは、よく報道される通りだ。日本の国家予算における支出総額は現状約114兆円で、そのうち防衛費は6.9兆円。現在、予算では日本政府歳出の6%が防衛費ということになる。

【組織の質の低下】
最近は、自衛隊に限らず、あるいは日本に限らず「組織の脆弱化」が問題となっている。自衛隊は大きな組織でもある上に国民の税金で賄われているうえ、その業務自身がいわゆる「生産」を伴わないものであるので、なにかと問題にされるのだが、それを差し引いても、大きな組織の問題は世界で増え続けている。

【隣の芝生が常に見える時代】
かつて地域国家間の「南北格差」が問題となったことがあったが、今は地域内、組織内、組織外での格差是正が大きな問題になっている。SNSなどインターネット上の「統率されない情報の流れ」は止めようもなく、転職などは当たり前になり「終身雇用の保証=組織内での将来の給与増額」で組織の構成員のまとまりを作れる時代でもなくなった。その役職も今は保証はない。様々な「成長あっての、目の前にぶら下げる餌」そのものがほとんどなくなった時代になった。規律の厳しい自衛隊員でも、休暇で自宅に戻れば、あるいは勤務時間外にはスマートフォンを持って、組織外の情報が雪崩のように入ってくる。当然、組織内だけでなく組織外の業種などによる給与格差、組織内での様々な規律の差、働きやすさ、などの情報が山のように組織内人員個人に入ってくる。「青く見える隣の芝生」が毎日、目にちらつく。今はそんな時代になったのだ。組織だけでのシステムで個人の行動をまとめられる時代ではなくなった。

【水は高いところから低いところに流れる】
「水は高いところから低いところに流れる」とよく言う。「当たり前の差は当たり前の結果を産む」という意味だ。いま、組織での雇用ということで言えば「人は給与の低いところから高いところに流れる」のであり「人はきつい仕事から楽な仕事に流れる」ということになる。加えて、最近の「戦争」はウクライナ-ロシア紛争でもドローンなどのハイテク武器が大きな役割を果たすようになっている。おそらく、近い将来は機械化部隊どうしの「無人の戦場」さえ出来上がる、とさえ言われている。そこで重要なのは「組織」「体力」ではなく、ハイテク武器を使える「頭」になる、そして、そのハイテク武器を作るための技術力、生産力、生産力を支えるお金、というのは、おそらくSFではなく「高いところから低いところに水が流れる結果」でしかなくなるだろう、ということだ。

【「頭の良さ」が戦闘のキーだとすると】
頭の良さ、素早いマインドの切り替え、ハイテクへの素早い習熟などが戦場で大きな価値を持つようになるとすると、それができない「体力はあるがそれ以外の能力はない」人員を多数抱えることはリスクでしかなくなるだろう。それはこれからは「戦えない組織らしきもの」にしか過ぎない。しかし、人員不足で多数の人員を未だに必要とする「この組織」では「そういう人員」も受け入れざるを得ない。結果としてそういう組織は「社会的に底辺の(頭が悪く・体力もなく・低い収入に甘んじる)人の集まり」となりやすく「組織人の質の低下」は当然起きる。そしてその組織に入った若者は、若いうちから思うのだ。「来るところまで来てしまった」。そう考えて将来の希望を捨てた毎日を過ごすことも多いだろう。「士気?なにそれ?」。その彼らに心痛める先輩は少ないし、いたとしても数は少ないだろう。彼はスマホのSNSの画面を見て思うのだ。「みんないいことしていやがって。ここでしばらく我慢したら、出て行って、俺もいい思いをするのだ」と。彼らに本当のことを教え、社会の中で生きるチカラを得るための教育をしようとする人は少ないだろう。そして、組織も、そうすぐには変われないほど大きくなってしまった。

【巨大組織の時代が終わったのかも知れない】
人の組織は、農耕や狩猟のための組織から始まった。お互いが目の見える位置にそれぞれが納得していた。狩猟であれば「獲物を追い込む役目」「追い込んだ獲物を仕留める役目」「仕留めた獲物を料理する役目」などなどだ。自分のいる「位置(職業)」に納得があった。それが、規模が大きくなると、お互いの顔が見えなくなっていき、従って自分の本当の役目への納得もなくなっていく。しかし、組織は維持しなければならないので「規律」を作る。個々人はその規律に従うことで「報酬」をもらう。結果として、組織で働く人は「報酬が全て」という時間を人生の多くに持つ。しかし、インターネット/SNSで組織横断の情報が流れ始めると、組織間格差が組織内人員に見える。人の流動が組織間で始まる。巨大組織は、こうやって崩壊していく。

そんな時代がやってきたのかも知れない。

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