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【東大理転激闘記4】オアシス


これは小学四年生で法学部に憧れるほど文系として生きてきた人間が
東大に入って理転したお話の続きです。

0. ここまでのおさらい

 これまでの4つの記事では理転を決めて授業が始まるところまでの話をした。上のマガジンにまとまっているので、時間があれば読んで欲しい。

…と言いたいところだが、前回投稿からあまりに期間が空いたので、しっかり目に振り返る。

・東大に文系で入学、経済系をなんとなく志している
・1年夏に参加したSFPで理転を勧められる
・そこから進振り(後期課程の学部選択)を真面目に考える
・工学部電子情報工学科と後期教養学部総合社会科学分科(相関社会科学コース)で迷う
・最後は勢いで電子情報工学科(以下EEIC)に決めて理転が決まる
・大学1年時に数Ⅲ範囲の数学を少しやり、2年夏の進学先決定後に少し高校物理をかじる
・新学期0日目の学部ガイダンスで授業数の多さ数学演習のやばさに絶望する
・数学演習の予習をサークル同期宅で前日夜、終電までやる
・1,2限の授業を終え、いよいよ数学演習の時間…

 前回は授業初日の午前中を乗り切り、いよいよ数学演習の授業というところで終わってしまった。今回はその続きから始まる。


1. 金曜3,4限:電気電子数学演習

 いよいよ電気電子数学演習の時間だ。お昼ご飯を食べ、パソコンの前に座り、授業が始まる13:15を待った。

 ちなみにこの13:15という3限の始業時間であるが、通常ならば13時のところ、コロナの影響で移動時間を確保する取り組みとして90分授業に統一され、昼休みが延びていた。
 少し時間に余裕があったので、まだ解き終わっていない問題を解いていた。

 そして時は来た。zoomに先生の顔が映り、総勢130名ほどのEEIC生が集まっている。少し緊張する。

 この数学演習という授業、演習形式のため基本的に解説はなく、ひたすら学生が答えを発表していくというスタイルなのだ。そのため、zoomでは発表機会を確保するためA, B, Cという3つの部屋に分かれる。文系出身の生徒は全員A教室に固められ、文系サポートをしてくださっている先生が担当としてついてくださっていた。

 今回は初回のため、全員A教室に集められていた。
 先生が軽く授業の形式についての解説をしたが、それもすぐ終わった。いよいよ授業かと思ったが、するとまさかの130人自己紹介リレーをまたすると言い始めた。

 みなさん覚えているだろうか。東大理転激闘記2「内定ガイダンス編」でやった恐怖の130人自己紹介リレーである。いや、正確に言えば恐怖でもないのだが、単純に誰も覚えられないのでしんどい、という方が正確かも知れない。

 例年は内定者ガイダンス後の懇親会でもあるらしいので、計3回やるのだが今年は懇親会がGather.townというオンラインのサービスでの実施だったため2回で済んだそうだ。ただ、隣の人みたいな概念がないので、誰から優先して覚えればいいのかもわからず、本当にただただ情報が右耳から左耳へと流れていく1時間となってしまった。


2. じゃんけん

 なかなか終わらない自己紹介も結局は終わりが来てしまうわけであって、そして終わりは始まりである。

 各部屋に分かれ、いよいよ本編の開幕である。担当の先生が簡単に挨拶と説明を済ませると、早速始まった。ただ始まると言っても演習の授業なので単元の説明は一切なく、いきなり問題の答え合わせである。24時間前には読めなかった記号によって構成されている問題の答え合わせから入る、超ハードモードでのスタートだ。

 各問題を学生に割り振っていき、担当の学生はその問題に対する自分の解答を写真にとってgoogle formsにアップロードすると、先生がそれをgoogle slidesに貼り付けてくれて、出揃ったらそれを画面共有しながら担当学生が解説する。

 問題を担当した学生には加点がされるのだが、問題の担当決めはなんと「じゃんけん」である。

 私は来る学科を間違えてしまったのかと思った。ここは本当に電子情報工学かなのだろうか。乱数でもなんでも使えばいい。じゃんけんとは他でもない、あのグーとチョキとパーで三角関係を繰り広げるあれである。
 ましてzoomでの授業である。対面ではない。問題ごとに立候補する学生はカメラをonにし、手が見えるようにして、先生の合図でじゃんけんをするのである。なんだかEEICは伝統を重んじているようだ。

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 ↑じゃんけんのルール

 何はともあれ、試験でまともな点数を取れる気がしない私はここで平常点を稼ぐ必要がある。特に数学演習は必修のため、なんとしてでも単位を死守する必要があった。

 初めの方の問題は基礎的な問題(24時間前は読めもしなかったが)であるため、とりあえずなんとか誤魔化しながら説明できそうだと思い、立候補してみた。当然簡単な問題なのでたくさん立候補者がいたが、意外とじゃんけんに強いもので、何問目かで見事に勝つことができた。久しぶりの本気のじゃんけんだった。

 私が当たったのは、z=f(x,y)のある(x,y)における接平面を求める問題である。

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↑解いた問題のイメージ

 接線の方程式を3次元に拡張したみたいなやつだったので、比較的理解しやすかったものである。ただし、もう忘れてしまっているので、私が近くにいてどうしても接平面が知りたいときもちょくちょくあるだろうが、私には聞かないで欲しい。申し訳ない。


3. 週末へのカウントダウン

 この授業、一回の授業で発表できるのは基本的に一人につき多くとも一回であるため、一度発表してしまえばもう自分の発表はなくなる。これほど気が楽なものはない。

 時間が足りずまだ解けていない問題もあるにはあったが、金曜午後の授業、これが終われば週末という中で、発表をすでに終えてしまっているのである。この開放感と言ったら半端でない。

 何を隠そう、この週はこの日しか授業を受けていない。にもかかわらず、である。この疲労感というか、達成感というか、開放感というか、サラリーマンが金曜夜に盛り上がりすぎてしまっているのもわからざるを得ない。

 月末の金曜日、15:30に発表を終えていたその時の私は、まさにプレミアムフライデーである。

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 「月末金曜、何もしない!」

 ということで、1時間ほどゆったりと聞いていたら授業は終わった。


4. オアシス

 EEICに入って迎える初めての週末。数学演習に丸二日間追われていた身としては、まさにオアシスである。

 数学演習の予習はしなければいけなかったが、当然ながら読めなかったので諦めた。というか例の友人宅に平日また訪問することにしたので、土日は放棄した。ただベクトルの微分積分を一から説明するとそれだけで終電の時間を超えてしまうから、多少は予習してこいと喝を入れられてしまい、参考書と睨めっこはしておいた。

 金曜1,2限の授業は宿題のない授業で、他の授業は始まってもいなかったので、まだ宿題はない。つまり、土日は学科から解放されたのだ!
 カテキョはあったものの、日曜夜は友達とご飯に行き、優雅な土日を過ごすことができた。

 ただ、止まない雨が無いように、終わらない晴れもない。オアシスはそう長くは続かないものであった…。

次回もお楽しみに!


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