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京都宝ヶ池の動物と人間たちと作る彫刻 v02

京都の宝ヶ池で作品を制作し始めたのが5月。3ヶ月はあっという間に過ぎました。京都FabCafeでのCounterPointレジデンスプログラムはいよいよ今日7月30日で終了です。現在、当初計画していた4作品のなかから、2作品は試作までこぎつけました。そしてなんと、京都市さんのご協力を得て、晩秋までプロジェクトは続きます!

今決まっている予定のお話をしますと、
1)京都FabCafeでのプレゼンテーション 7月29日
2)宝ヶ池公園での京都市主催の市民交流会での作品デモ 7月30日
です。
その先に、9月にクラウドファンディングをして、11月に京都市さん企画のイベントで作品完成版を体験する、、といった計画が控えています。

今日は、2作品の試作、3作品目の経過のお話をしたいと思います。

作品「鹿のための彫刻」
作品「月にある鏡」
作品「動物の身体に近づく」

この3作品は、それぞれ以下のテーマと関わっています。
3つのテーマをもって、プロジェクト全体のテーマ、野生との距離を再考する、を形作ります。

見えない野生をみる
暗闇と親しむ
自分自身の体を野生に近づける

鹿のための彫刻

宝が池にはたくさんの野生の鹿が生きていますが、奈良公園の鹿のように人に慣れた個体たちではありません。生きて繁殖するために公園の植物を食べ、長期的にその結果が風雨による公園の地形の変化に影響したりなど、人間の利害と対立する存在でもあります。
ただそのことを知っている人は行政、研究者、自然に関心のある一部の方々など、限られています。まず。この普段見えにくい野生の動物たちを知り、見てゆく態度が必要でしょう。その結果、保護をしたり、あるいは駆除をしたり、といった判断が必要になるとしても。

鹿に私たちが近づくための彫刻作品として、鹿に見せるためのインタラクティブな彫刻作品を作り、鹿と人工物の間の関係を映像記録などの形で一般の方々に見せよう、というのが作品の骨子です。

宝が池公園の鹿たち
最初の作品スケッチ

鹿を検知すると、照明が鹿を迎えるように光る。シンプルな光の彫刻を作り、光への鹿の反応を自動で撮影するトレイルカメラを設置します。

トレイルカメラを仕掛けて鹿の生態を追う(撮影 FabCafe Kyoto)

最初の実験、6月10日
足掛け3日間にわたって2ヶ所にトレイルカメラをしかけ、まずは夜間の鹿の活動を調べ、彫刻設置に適した場所を探るのがゴールでした。そして。。

たぬきと見られる動物

2夜にわたっての撮影の結果撮影できたのは、
人間・犬・たぬき
だけでした。。肝心の鹿を撮影することはできなかった。。
次の日、京都市主催の交流会に出かけた私は、「深夜、鹿の群を自転車で追いかけるのが趣味」という方にお会いしました。その方の最新情報から、公園のとある場所に必ず深夜鹿が現れるということを知ったのです。

2度目の実験、7月10日
交流会で得た情報をもとに、北園での撮影を開始。雨にもかかわらず、夜中に草を食べている鹿の群れが写っていました。次の彫刻の設置に進めます!

宝が池公園 北園でのカメラ設置
トレイルカメラの設置。(ピンクの光は赤外線で、人や鹿には見えません)
撮影された鹿の群れ。午前2時ごろ

最初の彫刻の設置 7月11日
初めて鹿の群れを撮影できた日、急拵えで鹿に見せるための光の彫刻の最初のバージョンを制作、設置しました。。
まずはこんな光の彫刻です。人や動物が近傍にくると、ランダムにいくつかのデザインのなかから一つを選んで光ります。

大きな樹を囲むように設置
近くで見ると格好悪いですね。。

この日の夜の撮影結果です。。残念ながら光の彫刻を動かすセンサーの部分が雨で故障していたらしく、この映像は「光の彫刻」なしでの鹿の様子になります。。

これから
鹿の生態を追いかけるだけで長い時間をつかってしまいました。。
11月の京都市によるイベントのために、もういちど、今度はカメラと照明の連動部分を改良して実験したいと思っています。

月にある鏡

野生生物が生きる場所は、いわゆる都市とは違う環境です。宝が池のような郊外型の公園に夜に足を運ぶと、周囲の都市が失ってしまった暗闇がそこかしこにあり、野生生物がそのなかにいる気配を感じます。都市化する、ということのなかに、夜間も明るく安全な空間を作る、ということが暗黙のうちに含まれている以上、それは当たり前のことですが、逆に考えれば、このような公園には暗闇という私たち都市生活者が失くした資源をもっているともいえます。この作品は、都市に生きながらも暗闇ともういちど付き合おうという意志の表明です。

作品のインスピレーションになったのは、ずっと昔に宇宙に打ち上げられた、最初の通信衛星や、今でも月と地球の間を計測するために使われている、月に置かれた鏡です。今回は、ずっとずっと地上に近い、数メートルを飛ぶドローンですが、、

1960年に打ち上げられた直径40メートルのエコー2号
1971年にアポロ14号が月面に置いた鏡
最初の作品スケッチ

市販のドローンに自作のミラーボールを装着して飛ばし、観客(参加者)が懐中電灯でそれを追って、周囲の闇の空間を光の粒で満たします。

最初のフライト 6月10日

古いドローンにまずミラーをつけて飛ばし、夜間の飛行状態や光の反射を見る目的です。

FabCafe Kyotoで鏡をドローンに貼り付け(撮影 FabCafe Kyoto)

最初のフライトで、この古いドローンでは夜間の飛行が難しいことがわかりました。ミラーの付け方にも改善が必要です。

第二世代。3D印刷でミラーボールを作り、新しいドローンに装着
ドローンに詳しい方に相談し、比較的新しいドローンを購入。ミラーボールの下半分を模したパーツを設計して、3Dプリントで制作、モザイク画用のミラーを貼り付けました。

第二世代ドローン用ミラー。一部が欠けているのは、プロペラやIMU(姿勢制御)用センサーのため。
室内ではこんな風に見えます。

2回目のフライト 7月10日
FabCafe kyotoのマネージャー 高田さんに撮影をお願いしての2度目のテストフライトは、ドローンもミラーも新しく、本物のミラーボールも持っていって比較もしてみました。

直径15cmのほんもののミラーボールを使ってのテスト
ドローンを実際に飛ばします
ドローンから反射して見える光の様子

奥久慈アートフィールドへの展開
FabCafe京都での活動と並行して、茨城県大子町でのアーティスト印レジデンス、奥久慈アートフィールドでの活動を始めました。こちらのテーマは夜の闇。ここでもこの作品の実験をしています。

動物の身体に近づく(仮題)

私たちは野生を見て、調査して、必要に応じて駆除や保護の形で介入します。そのプロセスの全体を通じて、私たちは文化的な人間のままです。安全な文明のなかにいて、たとえば一人で鹿の群れのただなかに入り込んだりはぜず、野生の外から超然と関わろうとします。でもそれは当たり前のことです。野生に接するために、人間は人間をやめて、動物になる必要はありません。
でも本当にそうなんでしょうか?動物に接するために、人間の中に眠っている野生を呼び覚ましてみてはどうでしょうか?プロジェクトのテーマである、野生との距離を再考する、を考えたとき、人間が野生に一歩歩み寄る瞬間があってもよいと考えたのです。

作品の最初のスケッチ。宝が池の鳥たちの鳴き声を真似してみることで、野生の身体に自分たちが一歩近づけるのではないかと。
宝が池公園で、早朝の鳥や鹿の鳴き声を録音中です。


おわりに

3作品の経過を駆け足で紹介しました。11月の京都市主催のイベントに向けて完成度を上げていく予定です。9月にはそのためのクラウドファンディングを行います。ここnoteやSNSでお知らせしていきますので、みなさんよければぜひ支援していただけると嬉しいです!いまのところ、本プロジェクトはいろいろな協力を得ながらも、費用については作家の藤村が負担して進んでいます。

2022年7月30日  藤村憲之



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