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大阪の米袋メーカー後継ぎと九州の水門メーカー後継ぎがSNSで出会ったら

中小企業の後継ぎには悩みが多い。

先代が事業を立ち上げて数十年が経過したビジネスモデルには寿命が見えていることが多いけれど、新しいことを始めようにも社員からの理解が得られなかったり、お金も人も足りなかったり。事業承継問題だとかステークホルダーとの人間関係だとか、身近な人には相談できないアレコレが起こることだってある。

だから、後継ぎは同じ境遇の人間を求めて業界を越えて集まる。集まって悩みを共有したりビジネスの相談をしたりする。昔からある青年会議所がそうだし、最近は企業後継者限定のオンラインサロンなんかもある。そうした場で悩みを共有すると「自分だけじゃなかったんだ」と気づき、連帯感が生まれる。住んでいる地域が違っても、ビジネス上の関係がなくても、彼ら彼女らは「同志」なのだ。

そんな同志の一人、大阪の米袋メーカー「シコー株式会社」の白石社長がTwitterでバズっていた。彼は、米袋をかぶっていた。

バズる米屋社長

米袋の用途を探せ!

こんにちは。福岡県の水門メーカー後継ぎムスコ、乗富鉄工所の乘冨賢蔵です。発注が減りつつある水門事業の穴を埋める新規事業として、職人技を生かしたプロダクトブランド「ノリノリライフ」を3年前に始めました。業務が忙しく地元の団体には入らなかったのですが、Twitterで同じような悩みをもつ全国の後継ぎ仲間と繋がり、日常的にDMやZOOMで仕事の相談をするようになっていました。冒頭の白石社長もその一人です。

以前から米袋をなにか別の形で活用したいとお話されていたのでZOOMで米袋大喜利、もといアイデア出しとかしてたらこの大バズリ。なんで米袋かぶったの?

白石さんの投稿にたくさんの意見が寄せられ、ニュースサイトにまで取り上げられていくのを「なんだかすごいことになってるな」と指を加えてみていた数日後、「袋王」を名乗り出した当の白石さんからDMが。

紳士的な袋王

米袋で薪袋を…?でもそういえばキャンプ場で米袋使ってる人見たことある気がする。「ずいぶん米が好きなんだなあ」とか思ってたけど、あれ薪を入れてたのか。ググったらキャンプで米袋を使うといい!みたいな記事も出てくるし、知り合いのアウトドア好きに聞いてみたら、「実際に使っている」という人がいる一方、「デザインが気になって使ってない」という声もありました。これはもしかしたら可能性あるかもしれない。

また、当時の「ノリノリライフ」のプロダクトは安いものでも6000円オーバー。イベントなどで気軽に買える商品がないというのが悩みの種でもありました。シコーさんの米袋で薪袋を作ることができれば、これも解決するかもしれない!

そんなわけで、シコーさんで作っている米袋を送ってもらって使ってみることに。

コテンといきました。

米袋って水弾くんだ…!

10分くらい水をかけてても中の薪は無事でした。これは嬉しい発見です。自立しないのが気になるけど、そこさえなんとかできれば面白いかもしれない。ちょっと真面目にやってみようか。

そうしてアウトドアで使える米袋を開発するプロジェクトをスタートしました。

米袋の技術を生かして

商品開発ではメーカーがもつ技術を生かしたものにすることも大切です。従来技術から離れれば離れるほど、開発も製造にも時間が掛かり商品の価格に反映されます。なるべく既存製品の技術を踏襲しつつ、でも変えるところは変えないといい商品にならないので、バランスが超重要です。

では、シコー株式会社の技術的な特徴は何なのか?白石さんに聞いてみました。

◎ 底幅のサイズを変えられる
◎ 1つの工場で米袋のバンド(※)貼りまでできる
△  バンドの種類は変えられるが手作業
✖ 袋の素材を変えることはできない
✖   色を変える事はできない
              ※バンド:米袋の上部についている紙製の紐

袋王の話

なるほどなるほど。底幅のサイズを変えられるのは大きい。マチを広げれば、薪を入れてもコテンといかなくなるはずです。バンドの種類を手作業で変えられるのは面白いけれど、手作業の割合が増えるほどに商品の価格は高くなってしまうので実際に作ってみることに。

手作業でロープをつけてもらった

持ちやすくなるかもしれないと紙紐を太いロープに変えてみたけれど、実際に使ってみるとあまり持ちやすさが変わらないことが判明。手作業が入るので結構なコストアップにもなるということで、紙のバンドのままいくことにしました。

完成、マキカミブクロ!

そんな感じのやり取りをこっそりと続けること約1年。完成したのがアウトドアで使える米袋、「マキカミブクロ」です。マチが広く自立するのがポイントで、35cmの薪が約5kg入るサイズ。タフで水にも強いので薪以外にもいろんな用途に使える紙袋になりました。米袋とまったく同じやり方で持ち手を作ることもできます。

マキカミブクロは6/1、ノリノリライフのECサイトにて発売します。

ワンコインで買える「マキカミブクロ」
フチを折り返すと円柱型にも
米袋と同じ要領で持ち手ができる
薪5kg入れてみた

アトツギの出会いが生んだプロダクト

ちなみにこの記事を書いてる時点で、袋王こと白石さんとは一回もリアルで顔を合わせていません。やりとりはTwitterのDMと数回のオンライン会議だけど、Twitterでお互いの人となりが分かっていたのでスムーズに開発を進めていくことが出来ました。

京都でニアミス

地域も業種も違うアトツギ同士の不思議な関係から生まれたマキカミブクロが、アウトドアファンをノリノリにできたらオモロイなと思っています。

ちなみに袋をかぶっても袋の気持ちは微塵も分かりませんでしたが、覆面キャラになったみたいで楽しい気分になることが分かりました。ノリノリで撮影中に、たまたま部屋に入ってきた新入社員に「あっ…ごめんなさい」と言わせてしまいました。おのれ袋王…

袋をかぶってお会いできるのを楽しみにしています。ありがとうございました。

認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを

P.S.マキカミブクロはノリノリライフのECサイトから予約受付中です。マキカミブクロを被ってノリノリになりましょう!笑

P.S. 6/1 には波佐見の窯元とコラボした新商品も発売します。こちらもオモロイ開発経緯がありますのでよかったらみてみてください。
https://note.com/noridomi/n/n22fff2cd3b77

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