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地元に愛されてこその三方良し(日経MJを読んで想うこと)

 新聞の発行部数。日本全体で、約5,000万部(2000年代)から、約3,000万部(2022年現在)へ、劇的なスピードで減っています。折れ線グラフにしたら凄そう。詳しくはこちら(↓)。

 このデータに電子版が入っているかは記載がないのですが、電子版は伸びてるんじゃないかなと。新聞の根本的な強みは「確かな取材力」と「贅肉のない文章力」でしょう。そして、一見、自分に興味がなさそうなことでも、その2つの力でまとめられた記事は、読み手に潜在的なニーズを気付かせる。自分の読みたいもの、知りたいことを追いかけているだけでは、自分のウォンツ(欲求)が満たされるだけで、根本的な気づきに繋がりにくい。ドリルの穴理論ですよ。
 ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である(セオドア・レビット)
 
クレイトン・クリステンセン教授の「ジョブ理論」にもつながります。
あ...かなり脱線しちゃった。言いたかったのは、みんな日経MJの電子版読もうよってことです。

「持続可能な観光」の試金石に(2023/6/2日経MJ)

 今回、ナナメ読みして気になったのはこちら。

ホテル・旅館はお客が来れば来るほど儲かるけれど。

 コロナ禍で真冬の時代を過ごしてきたホテル・旅館業界。ようやく外国人観光客の皆様も戻ってきて、これからだ!そういう雰囲気ですね。ここ数年は本当に大変だったはずです。ホテル・旅館は装置産業。旅館のロビーで鯉を育ててたりもするでしょ?また、ホスピタリティを高めるにはどうしても優秀なスタッフが必要(逆に、スタッフ1名がちょっとイケてなかったりすると、それだけで2度と来てくれない)。だから、設備投資とか人件費とか、「固定費」のウェイトが大きいんですよね。
 そうなると、儲かるときはどんどん儲かるんです。固定費が大きいってことは、お客様が増えた分増える「変動費」は小さいはずなので。これを、営業レバレッジ(てこの原理)だの、「レバレッジが利く」だのっていうのですが、お客様が来なかった場合は、逆にレバレッジが利いてくんです、てこの原理で。固定費が回収できなくて、困るんです。だから、コロナ禍は相当過酷な日々だったはずです。

所有と運営の分離=強みの追求

 この構造的な問題に、いち早く取り組んだのが「星野リゾート」さん。ホテル・旅館を「所有する」のをできるだけやめて、「運営する」ことにフォーカスしたんです。海外では当たり前だっていう声もあるんですが、日本では、私は他によく知りません。旅館というのは、オーナー会社で、代々受け継がれてきた家族経営みたいなもので、ホテルだって、ホテルのオーナーが運営もするでしょ、と。
 やっぱり強みを追求した結果なんだと思います。旅館やホテルを「所有する」ことは、別に料理のおいしさ、接客の丁寧さ、旅館やホテルの強みと関係ないんですよね。長年培ってきたノウハウが生かされるのは「運営する」ことの方なんです。

連泊サービスは客単価も上がるけど。

 ようやく記事の中身です(笑)。今回は「星野リゾート 西表島ホテル」のお話。旅館とかホテルに限らず、お客様は囲い込みです。旅館に来たら、旅館で食事してもらって、旅館のお土産屋さんで買い物してもらう、そうすれば客単価が向上します(教科書どおりです)。
 で、西表島ホテルはこれからどうしてくのか。連泊するとお得になるサービスを始める、と。これは何だかよくありがちな気もするんです。連泊してもらえれば客単価が上がるんだから。
 ただ、そういう冷ややかな視点では語れないのが、課題認識の部分です。他もそうですが、西表島はオーバーツーリズム(観光地が荒らされてる)状態だそうで、石垣島に泊ってる観光客が日帰りで来て、日帰りだと特定の場所(こういうところかな)にしか行けないから、そこだけ荒らされる、と。それを解決したい。その手段が「連泊」なんだ、と。これは結局、ドリルの話(↑)、ジョブ理論の話(↑)なんです。深いなって思って、記事を読みました。

地元に愛されてこその三方良し。

 売り手に良し、買い手に良し、世間に良し、の三方良し。記事にはこうあります。連泊によって「1泊では難しいアクティビティーや食事を体験できる」。「ホテルが島の事業者と観光客を仲介する」。
 やっぱり、少しアウェイ感があるんでしょうね、星野リゾートさんとしては。地元に根差した旅館やホテルでは、今のところないですからね。だからこそ、地元に愛される大事さを、痛感しているんでしょうね。
 これを読んで、私たち、どんな危機感を持とうかな。星野リゾートさんが、地元に愛されることをはじめたら、地元の旅館・ホテルはどうしよう。そもそも、そういう視点、あなたたち持ってますか?そういうメッセージが、この記事には込められているな。 
 こんなことを考えながら、毎週月・水・金の3回発行、月額2,300円(税込)、1部あたり約200円の日経MJをパタンとしました。これ、破格の値段だと思うんだけどなあ。(おしまい)


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