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副業診断士の生きる道(上)~副業・兼業の現在地を知る

(今回の内容は約3,000字、所要時間は6~7分程度です)

副業。
サイドビジネス、副収入のイメージが強い。中小企業診断士の世界では、副業診断士と呼ばれる。ただ、お客様にとっては正も副もないわけだから失礼な話で、私はせめて“複業”診断士と言うことにしている。

とはいえ、御託を並べたところで実質は副業だ。
じゃあ、私含めて、この中途半端な副業診断士とやらは、変化の激しい社会の荒波をどう乗り越えていこう?今年の中小企業白書から、そのヒントが垣間見えた気がする。
今回は前編として、副業そのものを整理して、理論武装してみたい。


1.副業・兼業の現在地(2024中小企業白書より)

(1)やりたい人はいるけれど、会社は圧倒的に認めない

中小企業白書 第2部 第1章 第2節 多様な人材の育成では、副業・兼業に関する実態が整理されているが、これがまあ面白い。笑えるのだ。

①従業員の社外での副業・兼業を認めてない&これからも認めるつもりはない(51.6%)
②社外からの副業・兼業人材を受け入れていない&これからも受け入れるつもりはない(74.3%)

2024年版中小企業白書(330-331ページ)よりNORICONが意訳

また、人材大手パーソルのパーソル総合研究所「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」には、こうもある。

①正社員の副業実施率は7.0%、現在副業を行っていない正社員のうち、副業意向がある層は40.8%(やってる人&やりたい人で5割
④一方で、副業者の受入れ率は24.4%で、21年調査から変動なし

第三回副業の実態・意識に関する定量調査よりNORICONが意訳

2つの調査は、だいたい一致する。
やりたい人はいるけれど、会社が圧倒的に副業を認めていない。
そもそも会社が、①社員の副業を認めること、②副業者を社内に受け入れること、のメリットを理解できていない。そういうことになる。

まあ、気持ちも分かる。副業なんか考えてないで、まずは自分の仕事をちゃんとやれよ!とか、よく分からない人間に仕事任せられるか、と言いたくなるのも当然ではある。

2.会社に認めてほしい、会社も認めたい副業とは?

(1)会社も社員も、まずは本業を大事にする

まず大前提を考えたい。会社も社員もWin-Winなのは、本業で利益が出て、給与に反映されることだろう。ここを大事にすることだ。

この大前提に立てば「会社の収入じゃちょっと心細いんで...」というサイドビジネス的な副業を排除することができる。実際、副業・兼業の目的をアンケートするとこういうことになる。

副業・兼業による新たな人材・人口還流方策(2022.2月 東北活性化研究センター発行)より

・収入を増やしたい(49.3%)
・本業だけでは生活が苦しい(25.4%)
仲良くワンツーフィニッシュだ。

まあ、気持ちも分かる。
お金はあって困るもんじゃない。もらえるものはもらっておきたい。
ただ...

  • 会社にとっては、自己否定(うちの会社は儲かりません、他で副業どうぞ)につながるから、認めるわけにはいかない。

  • あなたも、周りに言いづらいんじゃなかろうか?(オレ、副業で儲かってるよ⇐お前、ちゃんと仕事しろよのブーイングの嵐)

会社はやっぱり、成長して稼ぐことを目指すべきなのだ。
あなたも当然、周りに堂々としていたい。
それじゃあ、どういう副業なら認めてもらえる?胸を張って言える?

(2)認めてほしい、認めたい。やりがいや成長意欲につながる副業

会社に認めてほしい、会社も認めたい。そういう副業とは?
先ほどのアンケート調査で言えば...

・ライフスタイルを変えるきっかけにしたい(22.9%)
・新しい知識やスキルを得たい(22.6%)
・本業ではできないことに取り組みたい(21.2%)
・自らの知識やスキルを活かしたい(19.8%)

さっきの東北活性化研究センターのアンケートからちょこっと抜粋しました

このように、やりがいや成長意欲につながる副業目的がだいたい2割ぐらいずつある。この手の副業は、会社も(やりがいや成長意欲を削ぐのはマイナスだから)認めざるを得ない。

そして、ビジネス上も、2割は大事にすべき数値と言われている。
※世の中の8割は2割で成り立っているという、パレートの法則。
乱暴に言えば、副業・兼業は、この2割の人たちで成り立つ...と言えなくもない。

社員の副業をOKにする理論武装は、なんとなく整理できた気がするけど、じゃあ、副業を受け入れる方は、どう整理する?
特に、副業者が副業先で「新しい知識やスキルを得たい(22.6%)」なんて、会社からしたら「は?」である。なぜおまえ(副業者)の人材育成を、うちでせねばならんのじゃ、だ。

3.副業者を社内に受け入れるメリットって?

(1)最大のメリットは、社内の活性化

よく聞く、「社内にないノウハウを得られる」の文脈で、ウェブサイトの構築とか、営業代行で新規顧客開拓とか...もちろんあるんだろうけれど、パーソル総研さんはこのように分析している。

副業者と接することによる周囲の学びは「社内のコミュニケーション活性化」「チャレンジ意欲向上」

第三回副業の実態・意識に関する定量調査より抜粋

副業者と接することで何らかの効果があった(65.6%)のうち、上から…
 ・視野の拡大(17.1%)
 ・社内のコミュニケーション活性化(13.1%)
 ・モチベーション向上(11.9%)」

第三回副業の実態・意識に関する定量調査より抜粋

結局、良くも悪くも、副業者は副(サブ)でしかない。最後は社内の人材がカギになる。その社内人材の視野が広がり、コミュニケーションが活発になり、モチベーションも高まるのだ。これ以上のメリットが、あるだろうか。

4.そして副業者は、会社を辞めない

(1)継続就業意向、上昇意向にプラスの影響

同じくパーソル総研さんの調べでは、副業は...

・本業先での「継続就業意向」「上昇意向」にプラスの影響を与えていることが分かった。
・なお、他企業への「転職意向」には有意な影響を与えていなかった。

第三回副業の実態・意識に関する定量調査より抜粋

これは、私も副業者として肌感覚で分かる。
副業をしているからこそ、本業をおろそかにできない。仲間に迷惑をかけられない、そういう心理が働くのだ。

これは冒頭の大前提「本業を大事にする」とも関連する。
副業をやってみて初めて、本業があってこそ副業ができる(本業のありがたみ)という当然の事実に、改めて気づかされるのだ。

5.おさらい

(1)今回のポイント

①副業・兼業のいま
・副業したい人はたくさんいる(5割)が、会社が社員の副業を認めない(5割)、副業者を社内に受け入れない(7割超)
②社長への提案
・副収入を目的とした副業ではなく、やりがいや成長意欲につながる副業なら認めてください、受入もしましょう
③その心は...
・社員の副業を認めると、その副業者は会社を辞めません
・副業者を社内に受け入れると社内が活性化します

今回のポイント、NORICONの整理です

(2)パーソル総研アンケートは信ぴょう性がある、なぜなら

今回はすっかりパーソル総研さんのアンケートにおんぶにだっこになった。
人材会社が実施する人材のアンケートなんて、自社ビジネスへの誘導に決まってるじゃないか、そういう穿った見方もできなくもないけど、このアンケートは、信ぴょう性があると思う。

だって、ほんとは転職支援してナンボなわけだ。
中途半端な副業・兼業者を紹介しても、転職サポートほどのうまみはない。そもそも、アンケート結果が「副業者は会社を辞めない」だから、転職ビジネスから遠ざかっている(笑)。だから、これってきっと、ホントのことなんだろう。

(3)副業診断士の生きる道(下)に続く

結局、今回は副業診断士のことにたどり着けてないし中小企業白書もちょっとしか引用してないんだけど(笑)、「副業」そのものを整理する、よい機会になったと想っている。

次回の副業診断士の生きる道(下)では...
 ・イノベーション活動と外部連携(イノベーションには外部の力が有効)
 ・診断士の比較優位(他の支援機関と比べて何が強みか)
 ・伴走支援の本質(信頼関係がないとダメだし、構築には時間がかかる)

こんなことを、中小企業白書をしっかり引用して述べていきたいと想う。
最後までお読みいただきありがとうございました(後半に続く)。

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