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中小企業白書が、私たちに一番伝えたいこと-副業診断士の生きる道(下)

(今回の内容は約3,000字、所要時間は6~7分です)

結びになりますが。
世の中のオジサンの挨拶では、「貴社のますますのご発展と、皆様のご健康・ご多幸、云々...」がお決まりパターンだが、書籍となるとそうじゃない。

「推理小説を後ろから読む」の言葉にあるとおり、肝心なことは結びに書かれてあるものなのだ。

それじゃあ、2024年版中小企業白書の結びには、なんて書いてあった?
今日はそんなお話をしながら、副業診断士の生きる道を探ってみたいの、最終回。


1.最後に確認された「伴走支援の実施状況」

私たちは、よく考える必要がある。
日頃から、「マーケットイン」だの「まずは、誰に?が大事なんです」とか、お客様に、さももっともらしく言うわけだ。

じゃあところで、本文だけで500ページ以上、付属資料を含めて700ページある「中小企業白書」のお客様(=読んで欲しい人)って、誰なの?

もちろん、企業経営者に読んでもらえたら嬉しいけれど、それってきっと、中小企業診断士のことなんだろうと想う。

君らが読んで、腹落ちして、噛み砕いて、大事なところを中小企業に伝えて欲しい。そういうメッセージ集の締め括りに書いてあること、それが...

最後に伴走支援の実施状況について確認していく。

白書P538より抜粋

(1)まず伴走支援とは

ここでの「伴走支援」とは、経営者等との「対話と傾聴」を通じて、本質的な経営課題に対する気付きを与え、自己変革・行動変容を促す、「課題設定」を重視した支援手法により行う支援のことを指す。

白書P538より抜粋

かなり上から目線なのが気になって仕方ないのだが、こういうことを指すんだそうです。確かに、オブラートに包んだって意味ないからな。ビシッと言ってくれてありがとう、白書さん。

伴走支援の何たるかは、昨年発行された「経営力再構築伴走支援ガイドライン」を読んで欲しい。

(2)伴走支援の実施状況(驚くほどできてない)

その伴走支援、どれくらいできているかと言うと、白書さんは、せっかく読んでくれた私たちをがっかりさせたり、落ち込ませたくないから...

支援機関全体では、伴走支援を「十分にできている」又は「ある程度できている」と回答した割合の合計が7割を超えている。

白書538ページより抜粋

こういう風に褒めてくれているのだが、実際はこうだ。

白書P538より抜粋

正直、「ある程度できている」って、どういうことなんだろう?と思ってしまう。
・十分できている ⇒ 胸を張ってできていると言える
だとしたら...
・ある程度できている ⇒ そこそこできてると思う
なわけで、もしそうだとしたら、そこそこの「伴走支援」じゃない支援って、果たして何なんだ?と。

(3)伴走支援(課題設定型)ではない支援とは?

伴走支援=課題設定型だとしたら、これまでやってきたものは何なんだろう?と考えると...
①問題解決型...困りごとを解決してあげるパターン
とか、もしかすると、
②問題指摘型...あれダメ、こうした方がいいよと言うだけパターン
というのもあるのかもしれない。

他にもあるのかもしれないけれど、大雑把に言えばこんなところだろう。
問題解決してあげちゃうと、去った後に当社に何も残らないのと、指摘されただけだと「えっと、さて、どうしよう?」と路頭に迷う。
そうならないための切り札が課題設定型の「伴走支援」というわけだ。

2.伴走支援するのに大切なこと

伴走支援するにあたって大切なこと。白書にはこうある。

課題設定に力点を置いた支援のベースとなるのが「対話と傾聴」であり、経営者との信頼関係構築である。

白書P540より抜粋

一文に大切なことが詰まっている。
「対話と傾聴」と「信頼関係構築」。
これはイコールではないのだと思う。少し分解したい。

(1)対話と傾聴

対話と傾聴について、詳しくは、ガイドラインを読んで欲しいのだけれど、私は「黙って待つ勇気を持つこと」だと想っている。ここに書いておいたので、もし良かったら、読んでみて欲しい。

端的に言えば、沈黙を大切にする。そういうことだと想っている。

(2)信頼関係の構築(信用されたら信頼される)

「信頼関係」と言われて、さらに分解したいのが「信用」と「信頼」。
検索すれば、違いがわんさか出てくるが、私なりの整理を述べたい。
例えば、信用保証協会という、企業が銀行からお金を借りる際、保証してくれるところがあるが、信頼保証協会とは言わない。何だか違和感がある。つまり、信用と信頼は明確に異なるのだ。

銀行は、企業の過去と現在を見てお金を貸してくれるわけだけど、その際、大事なのが信用(=実績)。信用(=実績)があるから、信じて頼り、未来を託せる。それが信頼。

NORICONの考える「信用と信頼」

物事には順番があって。
信用あっての信頼なわけだ。
一口に「信頼関係の構築」と言っても、信用されて(実績があって)から、ようやく信頼関係が構築できる。

ガイドラインにも、こうあるのだ。

①伴走支援に向け社長と対話した際、自社の課題は売上拡大が一番、ネット
販売ができるようにしてほしいとの要望がありました。
②本質的な課題が何かを意識してアプローチしようとしましたが、社長は目の前の課題解決しかなく、全然耳を傾けてくれませんでした。
③このため、まずはネット販売の課題解決を行いました。これで社長は喜んでくれ、自分を見る目も変わりました。
④ここから経営力再構築伴走支援が始まりました。

経営力再構築伴走支援ガイドライン P37 「支援者の声」を抜粋

3.副業診断士が、信頼される診断士になるために

自分で言うのもなんだが、副業診断士(企業内診断士)は、独立診断士の皆さんには敵わない。当然、独立した方々はそういう矜持をもってプロの仕事をしているわけだから。中途半端な副業診断士と比べられちゃあ、そもそも困る。

(1)向き合う時間を武器にする

それじゃあ、副業診断士は、何を武器に戦おう?となったら、向き合う時間を武器にするしかない。そう想う。

1人で何社も抱えた売れっ子コンサルが、ただ1社のことをひたすら想う時間は、(あるのかもしれないけれど)それほど多くないはずだ。

ちなみに、私が副業を始める時、職場の幹部に伝えたことは...

業務時間中に作業をすることはしません。ただ、頭の中で考えるかもしれません(笑)

NORICONが副業開始時に幹部に言ったこと

(2)夢に出てくるくらいじゃないと、いい仕事はできない

また、私が大事にしている言葉は、昔、上司っぽい人に言われたこれである。今考えると、ちょっとブラックではあるけれど(笑)

夢に出てくるくらいじゃないと、いい仕事はできない

NORICONが昔、上司っぽい人に真顔で言われたこと

(3)それくらいして、ようやく信用される。信頼はそれから。

ここまでやって、「いい仕事」なるもの(=実績)ができたら、ようやく社長に「信用」してもらえるわけだ。
プロ(独立)でもない、サブ(副業)の私たちが「信用」を得るには、それぐらいのことが必要だと想う。信頼(伴走支援)は、その先の話だ。

それって、2社も3社も、できることなのかな。
まずは1社、心を込めて伴走してみろよ(結果を出してみろよ)。
2024年版 中小企業白書の結びから、そんなことを想いました。

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