マガジンのカバー画像

2023年の詩(nori)

44
2023年に作成したものです。
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

【詩】小丈夫

改札口で手間取っていたら
「ちょっと」って怒られて
私がどいたら 次の人も
そのまた次の人も
足早に通って行った

「大丈夫だよ」
私の傍に来たおばあさんが
「あの人達も、あなたも、大丈夫だよ」
って言った
私が顔にハテナを浮かべていると
「大丈夫じゃなくても、きっと小丈夫だよ」

私は何だかホッとして
帰り道で呟いた
「私は小丈夫」

©nori

2023/10/30

【詩】獣の末路

ぶどうの一粒一粒を
つまんで取っては皿に置く
残った歪な枝は
肺胞みたいで苦笑する

私は寿命を縮めてきました
自由だけを求め過ぎました
案の定 下された診断に
私は治療なんてあきらめました

年金を頂く前に
黄泉へと向かうチケットを
受け取ればもう払い戻しなど
無理ならいっそ…
なんて事 考えるくらいはいいでしょう
それが私という人間だから

ぶどうを口に含んだ後
吐き出した種の一粒に
何となく

もっとみる

【詩】Okage

一つになろうとするからこそ起こる争い
ただのケンカじゃなくて高め合う為の言い争い
本音同士でぶつかって
「あなたの事が分からない」
を乗り越えたい

普通だったらとっくに離れて当然なのに
傍にいて今日も言い争ってる意味があるはず
工夫した皮肉で褒め合って
「あなたはスゴい人だよ」
って分かってる

気に入らない事が積み重なってく日常に
私の色を垂らして 君の色に塗り替えされて
いっそ全部剥がしたい

もっとみる

【詩】もう少しここにいよう

暗い未来を予想して

不安でいるくらいなら

楽しかった過去を思い出して

前に進まずにいればいい

あの頃と同じ思いがしたくて

やってみたら何か違って

面白くない つまらない

そしたら違う何かをすればいい

選ぶのは自分だ

誰かじゃない

未来に希望が持てなくても

明日の楽しみなら一つくらい

探せばきっと見つかるはず

明日もここにいていいんだよ

できそうな将来を目指すより

でき

もっとみる

【詩】その力を

なぜか一つだけ残っている

ゴミ箱の側面に貼られたシール

特に好きだった覚えのない

美少女戦士の木星さん

格闘技に長けた長身で

雷を自在に起こせたような

そんな超人離れしていても

分け隔てなく優しい人

いや逆なんだ

力を持っているがゆえの優しさ

何の為に使うんだ その力を

あなたは

私は

何の為に使うんだ

©nori

2023/11/17

【詩】タイムポスト

2023年11月8日

この日の事を忘れないでいて欲しい

10年後の自分も

20年後の自分も

あの日呟いた感謝の言葉を

ありがとうって言葉が

どうにも好きになれなくて

口に出す時はたいてい

どうもかサンキュー

有り難いって漢字で書いて

なるほどなって思ったんだ

もっと有って欲しい事だから

ありがとうって言えなかった

いくら丁寧に言ったところで

感謝の最上級は表せない

もっとみる

【詩】勇気奏上

あなたがたった一人でその舞台に上がる時

思い出して欲しいのは涙を流した初舞台

あの時あなたは誓ったはずだ

もう二度とみんなの大事な時間を奪ったりしないと

それでも誓いは約束とは違う

果たせない事だってあるだろう

あなたに意識して欲しいのはただ一つ

あなたの想いとは関係なく応援したい人がいる

あなたの事を本気で支えたいと誓った人がいる

あなたから見えないとしても私達はそこにいる

もっとみる

【詩】A few shine

私達は少数派

それが当たり前で

テレビで特集される出来事には

興味を持てなかったんだ

でもね そんな私達が

遠い未来で多数派に変わったら

未来を先取りしていた

誇れる過去に変わるんだ

私達は少数派

多数決では勝てなくても

ゆっくり 静かに

浸透するよ

だからそんな私達が

暗い未来を照らす光になるよ

あの日嬉しくて泣いた

感情を取り戻すんだ

©nori

2023/1

もっとみる

【詩】照らして

たった一人だけでいいから

私の事を見て

誰よりも必要として

そのペンライトを掲げて

証明して

私のどこが好きなのって聞いたら

迷わずに「全部」って答えるんじゃなくて

ちょっと考え込んでから

「分からない」って微笑んでほしい

たった一人だけでいいから

好きだった人から私に乗り換えて

今私だけを見て

好きになって

たった一人だけでいいから

なんて実は大嘘だって分かっても

もっとみる