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乗越たかおダンスマガジン評論集 【お試し版】 7

本書は2013年11月号から、2023年3月号までダンスマガジン誌(株式会社新書館発行 https://www.shinshokan.co.jp)に掲載された乗越たかおの舞踊評論をまとめた「集成版」のお試し版です。

1パックに評論が4本入って各300円とお値打ち価格で、気になる演目だけ読むのも可。第一弾は全21+1パックのラインナップで約10年間の流れがわかります。

※無断複写・転載を禁じます。この資料は、許可なく公開、書き換え、または再配布することはできません。

他の「お試し版」一覧はこちらから。

86本全てと特典評論4本収録のお得な「集成版」はこちら。

勅使川原三郎『魔笛』

 (初出 ダンスマガジン 2016年12月号 約1200字)

 文化予算におけるオペラの占める割合が大きな国では新しい表現に門戸を開くため、コンテンポラリー・ダンスの若手がオペラの演出を手がけるチャンスがある。そこでしくじると後々響くわけだが、日本ではそもそもそういう機会自体が稀である。

 昨年はシャンゼリゼ劇場の新作オペラ『ソラリス』の演出も手がけ、海外で幅広く活躍する勅使川原三郎ですら、日本でのオペラ演出は今回が1999年の『トゥーランドット』以来である。実現したのは、あいちトリエンナーレ。美術展示のみならず愛知芸術劇場を中心とした舞台芸術のプログラムに定評がある。『魔笛』はモーツァルト最後のオペラにして、最も気に入っていたといわれる作品である。

 とかくオペラはスケールが大きくゴージャスさを競いがちだ。勅使川原は舞台美術でも評価が高いが、今回は舞台上に巨大な金属製の大小のリングが宙に浮かんだ。上下左右に動き、また傾くことによって、奥へと導く通路のようだったり、月または太陽のようであったり様々な表情を見せる。

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4,172字

¥ 300

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