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【短編小説】赤ちゃん戦争

今日も今日とて始まった赤ちゃん戦争


誰もが本気で戦うのだ

お日様が昇ってきて次第に目を覚ます赤ちゃんたち

1人が泣き目を覚ますと釣られるように、他の赤ちゃんたちも目を覚まし泣き声を上げていく

それが今日の赤ちゃん戦争始まりの合図である



初めて声を上げたほほ笑み赤ちゃんが1番乗りで母親にミルクをあたえられている


周りから聞こえる批判の声


その声を聞いたほほ笑み赤ちゃん

どこかニヤリと下卑な笑みを浮かべている


先手が打たれたところで


誰もが負けまいとさらに鳴き声をボリュームは大きくなっていく…


一人ひとりの赤ちゃんがミルクを与えられてゆき
今度は四方八方からゲップの音がたくさん聞こえ出す


飲むリズムが合わなくて、不機嫌になっている意地っ張り赤ちゃんが口からぶーっと唾をたっぷりくんだ息を吐いた!



その攻撃がおしゃれ大好き赤ちゃんのリボンへ振りかかる


おしゃれ大好き赤ちゃんの爆発的な泣き声に周りの赤ちゃんたちは反抗を示し、


一斉におもちゃのガラガラを鳴らしては
辺は大合奏のようになった


耳を塞ぎたくなる赤ちゃんたち



ここで注目を浴びたのは

太っちょ赤ちゃん!


ベビーカーに誰よりも優遇して
早く乗らせてもらっていたのだ


上から降り注ぐその太っちょ赤ちゃんの偉そうな視線


その態度に見たものは全員萎縮した


まるですべての権威を握ったかのような太っちょ赤ちゃんの剣幕押され、

赤ちゃんたちは身を縮めた


戦場は壮絶である


次々に、
ベビーカーに乗せられていく赤ちゃんたち



戦いも本番に入ってくる合図だ


ベビーカー争奪戦と言うものも、
また盛大に行われるものである


赤ちゃんの人数に対して、
ベビーカーの数は足りないのだ


つまり、ベビーカーに乗れたもの


そのほうが圧倒的に有利となる…


誰もが乗せてほしいと願いすがり、
ベビーカーから距離が遠いものは、諦めさえしているものもいた


諦めた赤ちゃんたちは、
自分の手に唾をべったりとつけて、
敵へ塗りたくったり



手を叩き威勢を示すもの


ぬいぐるみの敵のぬいぐるみやボールの横奪…

と物資を集め出す赤ちゃんもいる



ここでキーンとみんなの耳を
つんざくような声を上げた赤ちゃんがいた。



食いしんぼう赤ちゃんである!



握っていた乳ボーロを落としてしまったのだ


ベビーカーに乗っていたため落ちてしまった乳ボーロはコロコロと転がっていく…


それを追いかける赤ちゃんたち


ひとりの優しい赤ちゃんが回収し
奪いさられたボーロはベビーカー下の赤ちゃんの元へと配られた


思いがけぬ報酬に赤ちゃんたちは、
歓喜の声を上げた


地上では、そのような争いが行われており


ベビーカーの上ではと言うと、
おもちゃのガラガラをいかに大きく振れるかや、誰が1番ふかふかの毛布をかけられるか…


そんな競い合いが行われている


今日の戦いも長くなりそうだ…


もう空席のないベビーカー


ベビーカー上で争うもの。

お布団の上で、
鳴き声合戦を行うおしゃべり赤ちゃん達

一人ひとりが本気で戦っている最中



聞こえてきた母親の感嘆の声

「あら!すごいじゃない!」

その声の先に赤ちゃんたちの
目は釘付けになった


1人の赤ちゃんが立ち上がったのだ!



早生まれ赤ちゃんである

早生まれの分成長が早かったのか…



褒めた耐えられている早生まれ赤ちゃんの顔は得意気で、

一気に勝利へと近い存在となった


誰もが自分も立てないかと必死にソファーへしがみつく!


ベビーカーからわざわざ降りて、立ち上がろうとする強者まで現れ始めた 


1人の赤ちゃんが立ち上がることによって
さらに賑わいが増した。

この空間



おもちゃの音や鳴き声。手を叩く音…
凄まじいものであったが



「きゃはは!きゃはは!」



今度聞こえてきた1人の赤ちゃんの声は
幸せそうなきゃははと言う太陽のようなもの



一人一人が立ち上がろうと自分のことに必死になっており、
周りなど目に入っていなかった



だがそのあまりにも幸せそうな笑い声に
皆が天を仰ぎ声の主を見る



母親に抱き抱えられ乳を飲み
ぎゅっと抱きしめられているのである



その幸せそうな笑顔に、
皆の心は嫉妬心さえ抱かないほど癒された


立ち上がる事や怒り、競争心を落ち着けた赤ちゃんたちの空間にはしばし静寂が訪れた


その赤ちゃんの幸せ笑顔は、今回の赤ちゃん戦争の終止符を打つこととなったのだ。



誰も気がつかなかった



1番の勝者は末っ子赤ちゃんなのであった




あとがき
ベビーカー争奪戦というワードが思い浮かんで赤ちゃんたちの争いを書きたくなってできたお話です


結局は母親に抱きしめられ幸せな笑顔浮かべたものが勝利すると言う微笑ましい戦争なのです


母親の愛が1番だと私は思います

最後まで読んでくださりありがとうございました

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