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一文字違いの凄さ

 昔『家なき子』というドラマがあった。

その中で、安達祐実扮する主人公の "相沢すず" が放つセリフ「同情するなら金をくれ!」が大きな話題を呼び、流行語大賞になるほどの言葉となった。

そんなある日、新聞のコラム記事を読んでいると、記事中で『家なき子』が取り上げられこのセリフが引用されていたのだが、執筆者がそう思い込んでいるのか、「同情するなら金おくれ!」となっていた。

…あれ?これが公式のセリフだったっけ? 

なんというか、児童文学調ではあるが、ドラマ自体がグルーヴィーで都会的な設定だけに、すごい垢抜けない。逆境に対する反骨的なプライドを表すはずのセリフが、これだとかえって媚びた物乞い感を助長してしまっている。

「を」が「お」に変わっているだけで、こんなにも印象が違うのかと思うと同時に、確かに意味としてはどちらも通用するので、ここまで堂々と書かれると公式・非公式の区別がつかなくなり、軽い混乱に陥った記憶がある。

一文字違いの凄さを垣間見た瞬間だった。

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 このドラマが放送された1994年当時、インターネットというものも世間には浸透しておらずだったので、正解を確認する選択肢も限られており、何となく TV などの媒体や「ザ・テレビジョン」などの雑誌に番組が取り上げられている時に目を通すなどして、ソースを見極めるしかなかった。

それだけに、いち地方新聞のコラムの執筆者は、ソースを確認せず、本気で「金おくれ!」と思いながら書いたのかも知れないな、と思いながら読むと、単に一笑できない問題と発見があった。

この人の「思い込み」が、図らずも自分に想像と視点の幅を与えてくれた。

うまくこの発見を応用できれば、日常の中で文章に関わる表現を行う時に大きな教材となり得るかもしれない。たった一文字程度で、こうも印象を変えることができるのだ。文章だけではなく、きっとあらゆる表現に対しても応用できる技だろう。


 中学生当時から未だに忘れられない記憶として、この誤字のエピソードが頭に残り続けている。

今日はこんなところで。

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