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耳をすませば、鍵がジャラジャラ悲鳴を上げてた

自分が欲しいものを作る。

モノづくりをしている人たちが今、よく口にする言葉です。自分自身、メーカー業をやってますので日常的に言いますし、肝にも銘じてます。それがモノづくりの本質だと思うからです。

逆に「自分が欲しくないもの」を作ってた時代って、いったい何だったんだろうと思います。「きっと誰かが買うから」という態度でも、それなりに「誰か」がいたから商売が成り立っていたんでしょうけれど、今となってはどうでしょう。

モノがあふれ、目も肥えて、誰もが作り手になれてしまう時代。小ロットで、受注生産で、オンラインで、リスクなくモノが売れる最高の環境が整ってしまった今、「きっと誰かが買うであろう商品」はもはや通用しなくなりました。

だから「自分が欲しいもの」を本気の本気で探さないと、もう誰の心にも響きません。というか要らないものはもう作らなくてよくて、欲しいと(心の底から)思ったものだけ作ればいい。ある意味、健全な社会になってきたのかもしれません。

ただ、「自分が欲しいもの」を見つけるのって結構むずかしいものです。

すでに世にあるもので満足できると言えばできるし、自分が何も不満に感じていないなら「欲しいもの」はもうないのかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか。

自分の日々の暮らしを、もうひとりの目で見てみてください。能の世界に「離見の見(りけんのけん)」という言葉がありますが、幽体離脱するかのように、客観的に俯瞰して自分を見てみる。

すると「小さな不満」が結構、見つかるはずなんです。自分自身も気づいてなかった、本当に些細な不満が。

たとえば、S字フックの断面が丸いからくるくる回転しちゃって煩わしいだとか。

たとえば、靴紐を慌ててほどこうとすると絡まっちゃって、かえって時間がかかって電車に乗り遅れただとか。

その瞬間は確かに「イラっ」としたのに、次の瞬間にはもう忘れてしまうような、小さな小さな不満がそこかしこに転がってます。

そして、ひとつひとつは些細なことだとしても、それらがだんだん集まって、大きな玉に膨れ上がって、やがてストレスと呼ばれるようになるんですよね。

だから日々の生活をじっくり見つめて、Tipsで解決できるならそうして、それでも無理なら必要な道具を作り出す。

そうしてストレスの種を丁寧につぶしていくことが「より良い生活」を送ることにつながるのだと思います。



というわけで、僕も自分の生活を「もうひとつの目」で見つめてみることにしました。ただ、世阿弥の境地にたどり着くのは困難なので、仲間の目を借りることにしました。

気心の知れた3人で日々の暮らしを互いに見つめ合い、些細な不満をあぶり出し、それを解決してくれる便利な道具を見つけ出し、なければ自分たちで作ってみる。

そんな実験的なチーム「QuestFM」を1年前に結成し、毎週ディスカッションをくり返してきました。

そこでふと耳をすませてみたときに、聞こえてきたのが「鍵の悲鳴」でした。

家の鍵、車の鍵、実家の鍵、ガレージの鍵。いくつも鍵を持ち歩いていると、鍵同士がこすれ合って「ジャラジャラ」と不快な音を立てます。

それは鍵たちの悲鳴でもあるんです。


鍵は互いに傷つけ合い、むき出しの先端がポケットの内側を突き破ったりもして。なんだかテクノロジーが異常なまでに発達した21世紀であるにも関わらず、鍵まわりのスマートさが取り残されている。

意識しなければ「そういうもんか」と流してしまうような些細な事象のひとつですが、本当にこのままでいいんだろうかと僕たちは考えたわけです。

鍵は生活に欠かせないものです。だからお金のように大事に扱いたい。キーケースという存在に、まだできることを求めたい。

そうしてたどり着いたのが、革の波間に生まれる「個室」にひとつひとつの鍵を収める波型キーケースというアイデアでした。



これなら鍵同士がこすれ合わないし、不快な金属音も聞こえないし、ジャラジャラさせてたときに「どの鍵だっけ」とまごついてたのも解消されるし。厚みのある車の電子キーだって、この構造なら他の鍵といっしょにくるんで持ち歩ける。

試作の段階から使い続けてますが、本当に便利です。



さて、自分(たち)が欲しいものを作ることはできました。

これが、みんなにとっても欲しいものであるかどうかは未知数です。なのでクラウドファンディングを始めて、世に問うてみることにしました。

おかげさまでページを公開してから30分で Success してくれたので、自分たちが耳をそばだて、ひろいあげた不満に対する「ひとつの解」になったのではと、まずはほっとしてます。

よかったら、もっと写真がたくさん載ってるこちらのページをご覧ください。そしてプロジェクトに共感してくれたなら、応援購入していただけると嬉しいです。


【松岡厚志 PROFILE】

ハイモジモジ代表。書類収納の決定版「WORKERS'BOX」ほか、思わず膝を打つアイデア・プロダクトを発信している。フリーライター、ネーム・デザイナー(ネーミングの専門家)、モノづくりするラジオ局「Quest FM」のDJ Atsushi、御茶の水美術専門学校非常勤講師(-2020)などの顔を持つ。

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