見出し画像

【観劇レポ】新作歌舞伎 FINAL FANTASY X(ストーリー完全網羅&考察)

2023年3月4日〜4月12日まで開演「新作歌舞伎 FINAL FANTASY X」に、3月6日に行ってきました。ファイナルファンタジーシリーズは、幼稚園〜小学生の頃に10からはじめました。


淡い記憶ですが、当時は、ティーダとユウナの恋模様に心を打たれ、憧れを持っていた世界です。現在、22歳の私は、一年前にFFXを再びプレイしました。大人になってからプレイしてみると、ジェクトやアーロンの気持ちがわかるようになり、世代を越えて楽しめる作品になっているんだと気付かされました。小学生の時よりも、もっとFFX のことを知ることができたし、もっと好きになりました。これからも、自分の原点として、この作品の行く末を見守っていきたいです。


当日・会場周辺について

東海圏に住む私は、日帰り新幹線で東京・豊洲へ。
当日、雨予報だったのにも関わらず、しっかり晴れてくれました。これもエボンの賜物だね。
最寄駅のゆりかもめ 市場前駅に到着後、徒歩数分で会場「IHIステージアラウンド東京」にたどり着くことができます。駅から会場まであちこちにメインヴィジュアルがあって興奮が抑えられません…!


会場に着くと、大きいポスターや看板、のれんがお出迎えしてくれます。のれんの奥に進むと素敵な景色を楽しめる休憩スポットが…!

FFXは水がテーマの作品でもあるので、うっとりしながら休憩時間を楽しみました。開場前に到着したので、日替わりキッチンカーでラーメンを啜っていました。

緊張してあまり食欲湧かないまま、食べてました…。(食欲なくてもラーメンは食べられる)
キッチンカーは、飲み物を頼むと限定コースターがゲットできるみたいです。私は、ラーメンだけ購入したのでゲットならず…。

会場について

いよいよ11:30から開場。私はまっすぐにグッズ購入をしようと並びましたが、公演時間と天秤にかけて、離脱…。もっと早めに並んでおけばよかったです。前後間の休憩で、購入できましたが、公演オリジナルメニューが完売していたので、最初はそっちをゲットするべきでした。前後間の休憩で再び販売がありましたが、数量限定で、ギリギリだったので、ヒヤヒヤさせられました。これから公演に行く方は、計画的に並んだ方が良いかと思います。

いよいよ会場に向かうと、野村さん限定イラストがお出迎え。いよいよ物語が始まってしまうワクワク感で大興奮でした。また菊之助さんが提案してくださった全席シートクッションは、完全にプロテスです。お尻にプロテスがかかっているので、8時間の公演も乗り切れました!

休憩中について

(15:35〜17:00)
90分休憩はグッズの購入と、特典引き換えと、QG DISHの受け取りをしました。
グッズは、プログラム、クリアファイル、クリアヴィジュアルカード、モーグリを購入。九谷焼の小皿も欲しかったのですが、売り切れでした。残念。
公演後、数日経ってSNSを拝見していると、いろんな方がグッズを買っていて、私ももっと買っておけばなぁと後悔しています。これから見にいく人は買い忘れにご注意ください。

また、このタイミングで、公演オリジナルメニューが再販していました。よかった…!
ちなみに、私は「SUN」をゲットしました!


見た目もおしゃれだし、ゼリーや果肉が入っていて美味しかったです。ステッカーもゲットできるので、公演に行く方はぜひご賞味ください。


QG DISHは、「地雷也」をゲット!天むす、美味しかったです。

演出について

ここからは、ストーリーのネタバレなし感想です。YouTubeの公式アカウントからでも得られるような情報ですが、YouTube見るのも控えてるよ!って方は読むのをおすすめしません。また、私はFFシリーズはプレイしていますが、歌舞伎に関しては全くの初心者ですのでご容赦ください。

歌舞伎

歌舞伎初心者の私は、とりあえず何も知らないよりは良いと思い、YouTubeチャンネルの方で制作過程を更新されるたびに見ていました。菊之助さんもおっしゃっていた通り、歌舞伎初心者に優しいセリフの言い回しだったり、表現だったので、安心して観劇することができました。
また、前編の最初にオオアカ屋(中村萬太郎さん)が歌舞伎を見る予備知識を教えてくれます。なので、歌舞伎初心者には大変やさしい入口になっていると思います。

テクノロジー

演出は、金谷かほりさんが担当されています。YouTubeで制作プロセスを拝見したのですが、「どの席でも楽しめるようにしたい」という言葉の通り、前から後ろの席、左から右の席に至るまで計算された演出になっていました。
ゲームと歌舞伎の融合が世界初らしく、FF×歌舞伎ならではの新しい演出に胸を打たれました。特に、「IHIステージアラウンド東京」は世界に二つしかない特殊な会場らしく、私は最初で最後となりましたが、本当に行けてよかったです。「IHIステージアラウンド東京」では、四つの舞台と大きいスクリーン、回る客席が特徴的です。手前と奥、さらに360°の場面展開が繰り広げられるので、多面的で、深い没入感を、スピード感あふれる演出で楽しむことができます。(なんて贅沢な…)
演出の中でも水に映像を投影するミストスクリーンに目を奪われました。この会場で、この企画だったからこそ、こんなにも素敵な演出になったんだと思います。心から感動しました。

音楽

音楽は、新内多賀太夫さんが担当されています。こちらもYouTubeで制作プロセスを拝見しました。新内多賀太夫さんも菊之助さん同様、FFXに影響を受けていたとのことで、熱い思いを感じとりました。和楽器を活用した数々のアレンジは、演者さんの演技をより強調させ、世界観をより近い距離に感じさせる表現でした。音楽に関して詳しくないので、感覚での読み取りではありますが、選び抜かれた音でアレンジされているんだと感じました。SNSでさまざまな方が発信しているように、FFX歌舞伎オリジナルサウンドトラックを是非、販売して欲しいです。買います!お願いします!

衣装

衣装は、松本勇さんが担当されています。こちらもYouTubeで制作プロセスを拝見しました。原作の装飾やデザインが取り入れられているのに、しっかりと歌舞伎の表現に…。これぞまさにFFと歌舞伎の融合だと感じました。ティーダとジェクトの装飾がお揃いになっていたり、歌舞伎の服をうまく掛け合わせて世界観に合致させていたり、本当にすごいです。シーモアの衣装は、とても豪華でかっこよく、シーモア戦の舞で美しく靡いていました。衣装と動きの相性がとても良いのだと思います。また、原作から歌舞伎に落とし込む際に修正された色合いがあったり、よりキャラが立つ表現になっていて、感銘を受けました。
また、それぞれの演出に合わせて衣装が少し変わったりしているのも、観劇中に確認できるので面白いです。例えば、ビサイドオーラカの試合のシーンでは動きやすい衣装になっていたりしました!
実際の演技では、それぞれが身につけている衣装がキラキラしていてとても綺麗に映えていました。これは光源の演出もあるのだと思いますが、その関係性がうまくマッチしていて、見どころの一つになっています。

ストーリーについて(⚠︎ネタバレあり)

いよいよ、ここからはネタバレありの感想に入ります。これから公演を見に行く方は読まないことを、おすすめします。前編•後編通しで見たので、当日にメモをとっていましたが、若干の記憶違いや順番前後していることがあるかもしれません。オタクの戯言として、読んでください。それではどうぞ!

【前編】
第一幕〈55分〉12:00〜12:55

オープニング〜キーリカの異界送りまで

オープニングから、曲と巨大スクリーンに圧倒され、目がうるうるしていました。
原作のラジオの表現は、演者が騒いでいる表現に変更されていました。ザナルカンドのブリッツを楽しむ人々が踊りながら、後方から登場。ザナルカンドが騒がしく、夜も眠らない街であることが伝わってきました。そしてティーダ(尾上菊之助さん)の登場!思わず声が出そうになって口を押さえました。原作の内容が、忠実に再現されていて、本当にザナルカンドってあるんだ…と圧倒されていました。そして、祈り子(丑之助さん)の演技がすごい…。これについてはまた後半にも書き記します。

ブリッツの試合は、行われる前にシンが来てしまい、そのまま、アーロンさん(中村獅童さん)が登場。全然、覚悟できていない私は、ひーひーと瀕死状態でその様子を見ていました。フラタニティは、ジェクトの土産になっていました…。原作もそれでよかったのかも?戦いのシーンは、ティーダが戦い慣れていない演技が上手くて、ティーダだ!と感動しました。シンのコケラも装飾がバッチリでした。本当に存在しているみたい。
序盤のアーロンさんの出番は、体感で一瞬すぎて、え?夢?ってなっていました。
回想シーンでは、ジェクトシュート3号を披露するジェクトが、子供ティーダにハイタッチをするふりをして煽ります。ジェクトのからかいが何だか愛らしく、でも切なく感じてしまうシーンでした。

その後、シンに飲み込まれたティーダは、ビサイド島に流されました(リュックの登場は後回しに)
ルッツ(中村萬太郎さん)とガッタがティーダを起こしてくれて、ワッカ(中村橋之助)の登場と、ティーダのブリッツの技を披露。ブリッツの技は、背景のスクリーンがあるからこそできる演出で、ワッカ同様「すげえええ…」ってなっていました。
原作との変更点は、歌舞伎ならではのキャラクターの登場シーンを、強調させるための表現に感じました。
その後、ティーダは寺院に入り、ルールー(中村梅枝さん)に出逢います。黒魔法で印象的に登場しました。その次は、ユウナ(中村米吉さん)が試練の間から登場です。とっても美しい…。こちらも、歩き方から仕草、声に至るまで忠実に再現されていました。

その後、ビサイドから船に乗るシーンの道中でキマリ(坂東彦三郎さん)が荒々しく登場。キマリかっこいい!そして、原作で二重に表現されていたシーンがしっかり削ぎ落とされ、脚色されていていました。

ビサイドからキーリカに向かう船では、主従関係の演出が良かったです。主にスポットライトが当たっているところがメインの演出ですが、脇の演者さんたちも会話や演技があって、見どころが多すぎました。シンくらい目が欲しかったです。また、演出で感じた距離の対比が、演出の深さを作っていました。距離が近いと特に細部の表情が見えてきて、遠いと俯瞰してキャラクターそれぞれの動きがわかる対比になっていました。

キーリカではユウナの異界送りが最大の見どころでした。ユウナのブーツは脱いだ形に、衣装変更されていました。光源とミストスクリーン、ユウナがだんだん高く上っていく演出が美しかったです。私も異界に飛ばされるところでした。危なかった…。

第二幕/第三幕〈75分〉13:15〜14:30

ルカ〜グアドサラムまで



ブリッツボールの試合、ミヘン•セッション、アルベドとの戦い、リュック参戦などなど、これまた見どころがたくさん。

まずルカでは、ビサイドオーラカVSルカゴワーズの試合が見られます。試合前の対面でのチームのやりとりでは、歌舞伎特有の言い回しで面白かったです。試合では、階段上のステージを泳いだり、段差を利用した水の深さの演出も凝っていました。その後、ワッカ率いるビサイドオーラカは、無事勝利をおさめましたが、サハギンなどのモンスターが現れて戦いが繰り広げられました。アーロンさんも再び登場。原作通りの(ここでは控えます)
(ユウナがアルベドに誘拐されるのはここではカット)シーモア(尾上松也さん)が登場して、ユウナを強く見つめます。ここで気になったのが、ユウナとシーモアの関係性の深堀りです。原作でもお互いがハーフであることから、種族間の交友を図ろうとしていたのは、知っていましたが、お互いの両目が違うこと、そしてシーモアがユウナに自らを重ね合わせていたことが、新しく発覚しました。これは、歌舞伎で脚色されたオリジナルエピソードで、個人的に考えさせられたので、後に詳しく思いを書き記したいと思います。

ミヘン街道では、ユウナとティーダの笑顔の練習シーン。ユウナの「笑って旅したいんだ」って台詞がなんだかうるってきてしまいました。また、ティーダの笑い方がおかしくってみんながドン引きするシーンは、原作では、荒い表情からこれ笑っていいのかな…と感じていましたが、現実で見てみると、ここ笑っていいシーンなんだと明るい印象に変わっていました。ゲームをプレイしていた時の印象から、歌舞伎で印象が変わるというのも、観劇のポイントなのかもしれません。
また、アーロンさんの追加シーンがありました。ブラスカ(中村錦之助さん)やジェクト(坂東彌十郎さん)への想いを語っていました。

キノコ岩街道では、ミヘン•セッションが繰り広げられました。シーモアのいやーな感じがとても表現されていて良かったです。(ここではキノック老師はいないことになっていました)キノック老師の台詞が、シーモアに変更されたことで、よりシーモアの存在感が際立っていました。主に、「あなたはザナルカンドを見たのですか?」といった台詞など。そして、ルッツの告白シーンも現代に合わせた脚色に。原作では、感情的に殴っていたけど、暴力じゃ解決しないよねってことだったり、演出上の都合もあるのかもしれませんが(?)、ワッカが少し優しい印象になっていました。ルッツはワッカから弟の形見を受け取ったけど結局…。生き残るかも、とも思ったのですが、シンの恐ろしさを表現するには必要な過酷さではあるなと、非情さも感じました。

その後、シーモアからユウナに大切な話があると、グアドサラムに誘います。

目的地に向かう道中、幻光河でアルベドに遭遇しました。(主にアルベドと戦うのは、マカラーニャ森と寺院を繋ぐ道であったのですが、ここも脚色されていました)
原作世界でのアルベドの特殊なイメージを、うまく歌舞伎に落とし込んでいて、面白い!と感じました。そこにリュック(上村吉太朗さん)が登場。原作同様、ムードメーカーで明るい空間を生み出していました。アニキとリュックのアルベド会話は、めちゃ流暢で、すげえ!ってなりました。
原作ではユウナ、リュック、ルールーが女子だけの話し合いをするシーンがありますが、その中身の会話はわからないままだったので、新しく台詞が追加されて、わかりやすくなっていました。ユウナとリュックはこの時点で初対面。(原作はあまりにもスムーズだったので、てっきり、幼少期くらいの時に会ったことあるのかと思っていました。ユウナママとシドが縁切ってたから、確かに会ったことないのかも)

その後、新エピソード、シーモアの回想シーン。演技が本当に凄くて魅入ってしまいました。ここで流れる「シーモアの野望」のアレンジがまた良い!母親と二人っきりで閉じ込められて、優しかったであろうシーモアが段々歪んでいくのが、原作をより深く表現していて圧倒されました。

グアドサラムに到着。お屋敷では、実写シーモアと族長ジスカルの姿が額におさまっていました。きちんと融合していてびっくり。そして、食べ物に浮かれるリュックたちがかわいい。
個人的にきちんと夢のザナルカンドのスフィアが再現されていて良かったです。このシーンは見たいシーンの一つでした…!
ユウナレスカの恋模様と並行して、シーモアのプロポーズ。原作では声が聞こえない演出でしたが、今回はしっかりとプロポーズの言葉を伝えられていました。
あと、ティーダがアーロンさんにクンクンするシーンありました!

第四幕〈45分〉14:50〜15:35

異界〜一回目シーモア戦(マカラーニャ寺院)まで



グアドサラムの異界へ。原作通り、リュックとアーロンは待機。異界は、死んだ人の像をミストスクリーンで表現していて、これもすごい!原作の感じをどう表現するんだろうと心配が多くありましたが、しっかり現実に落とし込まれている感じです。
マカラーニャの森では、ジェクトのスフィアを発見。アーロンからティーダの元へ。ジェクトの不器用な愛情が凄くリアルに伝わってきてここでも、うるうる。

ジスカルが残したスフィアは、鏡が多面体に構成された空間での演出。映像だけではなく、本人登場の演出でより感情が伝わってくる演出でした。

マカラーニャ寺院に着くと、シーモア戦。シーモアの衣装が変わるシーンは、とてもカッコイイです。(歌舞伎用語だと引き抜き?)
それぞれのメンバーがシーモアと1対1で、ワッカ→ルールー→キマリ→アーロン→ティーダ→ユウナの順で戦いに挑みます。キャラが変わるたびに曲も変わっていって、よりキャラが立つ演出になっていました。
ワッカはブリッツボールをうまくコントロール。ゲームの戦い方を、そのまま実現すると不安定なため、工夫がみられる演出に。ルールーは、魔法で応戦。シーモアも魔法で、赤と青で対比されていたのが、とても素敵でした。しかし、ルールーの髪飾りが引っかかって取れないトラブルがあったので、少し心配になったりしました。
キマリは、本当に実在感がすごいです。え、ほんとにキマリだって実感してしまいます。尻尾とかもぴょこぴょこしててかわいいです。アーロンさんは、夢のオーバードライブ 征伐が実現。危うく異界に行ってしまうところでした。アーロンさんとシーモアの衣装の丈が長いせいか、くるっと回ったとき、とても美しく素敵でした。個人的にハイタッチしているようにも見えて、仲良く見える…と微笑んでしまいました。(特殊な癖)アーロンさんが座り込むのもなんかいいですよね。()
その後、リュックの回復。リュックのテーマすごく元気になります。ポーションをかける時の鈴の音も綺麗で、これは回復するなぁと感じました。
ティーダとシーモアの戦いは、シーモアの回想シーンがあったからこそ、深みがましていました。ユウナが最後に決着をつけるのも、計算されていました。シーモアが落ちていったシーンは全く音がしなかったので、怪我してない…?大丈夫…?と勝手ながら心配していました。(どういう構造になっているんだろう?)
また、戦いのシーンは特に、今日の演技は今日しか見られないという、ライブ感を感じました。(こういった観劇がはじめてなもので…)

【後編】
第五幕〈55分〉17:30〜18:25

アルベド ホームから水中デート(素敵だね)まで



オオアカ屋再び!前編ストーリーの振り返りをしてくれました。
アルベド ホームでは、リュックが泣き叫びながら、ティーダがユウナの真実に辿り着きます。原作でも泣けるシーンの一つ。しっかりストーリーの節々に目を向けてみると気付けるかもしれないけど、小学生の時は、気づかなかったなあと思い出していました。また、シド(中村歌六さん)の登場シーンは、特に歌舞伎に寄っている感じでした。
その後、飛空艇に乗り込み、ホームを爆破します。飛空艇の再現度もすごく高い!見ている側も、乗っている感じだったので没入感がありました。

ユウナとシーモアの結婚式シーンでは、ユウナの白無垢が大変、お美しかったです。ベールもあって、内心きゃーと思いながら見ていました。口づけシーンは角度的にしっかりは見えませんでした。(あれってほんとにしてるの?誰か教えて…)途中から男同士ってこと忘れちゃってました。

裁判シーンでは、キノック老師が出てきてびっくりしました。(ミヘン・セッションで出てこなかったから、もう出てこないのかと)そして、心理描写では、ユウナが、この時、心底エボンに失望していることが窺えました。エボンの闇を知っても、なおスピラのために戦う覚悟が本当にかっこいいです。

ブラスカとアーロンが初めてジェクトに会うシーンは、このタイミングで来るのね!と納得しました。シーンの繋ぎ目がすごい….。アーロンが、10年間、夢のザナルカンドに行って、ジェクトの目線にリンクしているというのを感じさせる演出です。そして、ポニーテールのアーロンさんがいちいちかわいい。
ティーダとアーロンさんの牢屋シーンは、キノックが旧友という設定がきちんと存在していました…!
あっけなくシーモアに殺されちゃったけど…。ミヘン・セッションのキノックがカットされているから、原作よりいい奴になっている印象です。

マカラーニャの泉では、楽しみにしていたあのシーンが。ユウナの「行けないよ」で、この後の運命を思い、ほんとに泣きそうになりました。そして、ユウナとティーダのキスシーンは、ティーダが手で隠していました。きゃーーーそうきたかと、熱い思いを心に秘めるだけで精一杯でした。また、ここでもミストスクリーンが…!躍動感や幻想的な印象をどう表現するのか、不安もありましたが、まさにFFと歌舞伎の融合がなされていました!

第六幕/第七幕/第八幕〈125分〉18:50〜20:55

ナギ平原〜エンディングまで



ナギ平原では、オオアカ屋とルールーの短い説明が入っていました。ルールーとワッカはズーク先生のガードを務めた際に、ここで旅をやめたため、複雑な心境だったことがわかります。

ガガゼトでは、ユウナがロンゾの老師に、覚悟を示すシーンでしたが、個人的に、歌舞伎で見て新しい発見でした。ああ、これが本当の意味の覚悟なんだなと、ユウナの芯の通った強さを感じてならなかったです。
キマリは、やっぱり通れない。ビランとエンケもリアリティがあって良かったです。キマリの見せ場がしっかり際立っていました。その後、シーモアが再び。ユウナやキマリを守るために、ロンゾたちが犠牲に…。キマリつらい…。ユウナのお父さん、ブラスカのスフィアは、ユウナへのまっすぐな愛が向けられていて、切なく感じました。ブラスカに似て、強い娘に育ったんだなあ…。

ティーダの告白シーンも。まさかシンがジェクトだなんて…。みんな受け入れられないよね。
ガガゼト山の頂上、ティーダとバハムートの祈り子、夢のザナルカンドのシーン。このシーンのすごいところは、バハムートの祈り子(尾上丑之助さん)の演技力…。本当に祈り子がいる!という実体感を感じました。神秘的で、語りかける声もうっとりしてしまう夢を具現化したような演出でした。スピラの希望そのものです。

ザナルカンド付近では、ユウナの遺言のスフィアを見ました。ユウナの気持ちが細部まで描かれるシーンでもあってまた泣けてきました。遺跡では、記憶をとどめておくスフィアの機能がありますが、シーモアの深掘りが、ここでもされています。ジスカルの命令とそれを喜んで聞き入れる母親。母親のことを愛していただろうシーモアは、失望して仕方がなく、その怒りや失望が、歪みをもたらし、闇に染まっていったのだと、理解することができました。ジスカルを殺めるシーンは、お前を愛していたと、なぜもっと早く言えなかったのか、不器用な親子関係を思わせます。

また、ジェクト、アーロン、ブラスカの究極召喚をめぐる論争では、アーロンさんが「俺が祈り子になります!」って率先していました。ブラスカとジェクトが年上であるということから、アーロンと比べて冷静な表情で、対比されていました。原作から要素が追加されているので、細かいセリフの節々に注目してしまいます。

奥に進むと、ユウナレスカ(中村芝のぶさん)が登場。メンバーみんなが挑もうとすると、「ここは俺が…」とアーロンさんが1人で挑むことに。(ここの脚色も大変、際立ってて良すぎました)アーロンさんにとって因縁の相手であるユウナレスカ。旅二周目のアーロンさんが1人で倒してこそ、ジェクトとブラスカに顔向けできるって訳ですね。ユウナレスカは、声が似ててすごい(いやユウナレスカ以外の方々も、みんな似ててすごい)また、蛇の演出も良かったです。歌舞伎ならではの演出になっているのだ思います。

ユウナレスカ戦後、究極召喚はもうないので、新しくシンを倒す方法を探します。飛空艇内でワッカとリュックが仲良くなっていて、思いついたアイデアを言おうとしたら、ルールーに全て言われてしまうシーンも、しっかりあって微笑ましかったです。(なんでも解説してくれるからルールー?)ここらへんでワッカが完全にアルベドへの嫌悪感がなくなり、本当の意味で心を通わせたのも良いシーンでした。

ベベルにつくと、シェリンダが。(この子ももう出てこないかと思ってました)
アルベドが嘘をついたと仕立て上げられ、原作では、なぁなぁになっていたところが、種族間の差別問題に斬りかかるワッカが、メッセージ性を強めていました。ワッカが、原作よりも成長していて、少し驚きました。(自分に非があったと自覚し、きちんと言葉で伝えられるのって、すごいことです)脚色で補完されることによって、より理解が深まりやすい仕掛けになっていました。一人一人のキャラクターの着地をどうするかが、丁寧に描かれていました。

ベベルの祈り子の間では、シーモアの最終決戦が繰り広げられました。シーモアの衣装が原作の最終異体で表現されていたのは、驚きました。浮かび上がったシーモアを見ると、確かにこの表現が的確だと実感しました。また衣装に相まって、ライトアップが鮮やかで、とても映える演出でした。魔法の属性を意識した演出だったのだと解釈しました。

その後、ジェクト戦では、ティーダとジェクトの1対1で行われました。そこで、ジェクト視点で描かれていた脚色が本当に泣けます。子供のティーダが、止めに入り、ジェクトの中ではその姿が身近で、何度も何度も戦いをやめたい、息子を傷つけたくないという思いが伝わってきました。原作では、アーロンやティーダのアクションでジェクトを呼びかけるシーンがあるので、それを汲み取っている演出なのかもしれません。芸がいちいち細かいです。

召喚獣バトルでは、歌舞伎よりのアレンジに。それまで召喚獣があまり紹介されていないのもあって、ここが見せ場になっているのか!っと納得しました。衣装も細かくて、大体見ただけで、これはこの召喚獣って分かるのがすごいと思いました。個人的に、バハムートの天使の輪みたいな図柄が推しです。召喚獣の中に、ヨウジンボウもいて、好きな言葉は心づけで、ふふってなりました。原作プレイヤーならではの面白ポイントです。

その後はエンディング。異界送りでアーロンさんも、もうお前たちの時代だと言って去っていきました。原作通りのかっこよさ。

ティーダとのお別れシーンは、展開がわかっているのにうるうる。ジェクトとのハイタッチはスローモーションで表現されていて、うわああっと鳥肌が立ちました。

ユウナは、ルカで演説を。「いなくなってしまった人たちのこと、時々でいいから……思い出してください」
最後まで素敵な演出をありがとうございました…!


気になったエピソードを考察

気になったエピソードに触れながら、さまざまな観点から、個人的な考察をしていきます。

現代だからこそのメッセージ性

尾上菊之助さんがインタビューで答えていたように、コロナ禍や社会問題に悩まされている現代人に向けた、強いメッセージがこもっていました。大きな社会問題はまさに、強大な敵「シン」のよう。人々は悲しみを抱えながら日々を過ごしています。でもきっと夜明けはやってくる、そんな希望の光を感じるメッセージ性がありました。

原作からさらに洗練された脚色

原作が発売されたのは、2001年。私はまだ一歳だったので記憶がありませんが、当時のグラフィックからしたら最先端だったはずです。モーションキャプチャーが取り入れられているので、よりリアルな演技で、かつフルボイスなため、より感情が鮮明に、これまでのナンバリングより精度が上がっているのも、プレイして感じていました。それから22年の時が経ち、実際に人が演じることで生じる違和感や、伝わりづらかっただろうポイントが、うまく補完されていました。また、限られた時間の中で、重複している演出を整理し、より繋がりがわかりやすい表現になっていました。キャラクター一人一人の見せ場であったり、伏線の繋ぎだったり、メッセージ性の強調だったり、意味のある脚色になっていて感動しました。

種族間の差別問題

現代では、多様性が求められる時代になりました。しかし、まだ差別の問題は完全に無くなった訳ではありません。アルベドのことが嫌いで、その種族を理解しようともしなかったワッカのように、嫌うことで距離を離し、思い込みで会話をしてしまうことが、日常でもある気がします。決して分かり合えなくても、お互いに傷つきながら、相互理解を常にし続ける努力が、必要なんだと思います。己の非を改め、反省したワッカのように、自らを常に見つめ直して成長していきたいと心から感じました。

交差して描かれる親子の関係

親子関係で印象的なのは、「ジェクトとティーダ」「ブラスカとユウナ」「ジスカルとシーモア」の3組の関係です。今回は「ジスカルとシーモア」の関係が深堀りされたことによって、この3組の親子関係がより深い印象づけになっていました。ジスカルは、族長の肩書きに恥じぬよう、そして、シーモアが召喚士なることで、世間に認められるように願っていました。しかし、その愛の方向は間違いでした。シーモアに必要だったのは普遍的な愛です。肩書きや名誉を重視していたジスカルは、そのことに死ぬ寸前まで気づかなかったのが、悲しいところです。そして、ジスカルからの命令に母親が、文句なく、むしろ喜んで受けてしまったのも、シーモアにとって、絶望でした。自分や母親のために何もしてくれなかったスピラを恨み、闇に堕ちていくのでした。

ユウナは、シーモアと違い、まっすぐな愛を受けて育ちました。その分、スピラのことが大好きで、召喚士の素質があるのなら命の限り、みんなを守りたいと、覚悟を決めることができたのだと思います。また、ブラスカが命をとして創ったナギ節で育っているため、ユウナを慕う民は多くいたと考えられます。しかし、多くの人や、キマリが見守ってくれていたにしても、しっかり甘えることができなかったのだと思います。それが、シーモアの結婚の件を1人で背負ってしまうような、仲間に頼れない性格につながっている気がしました。シーモアは、ユウナも多種族のハーフであることから、自らを重ね合わせ、勘違いしてしまったのだと思います。最終的に、ユウナは、ブラスカが成し遂げることができなかった夢を自らが叶えます。ブラスカの真っ直ぐな愛が、常にユウナの支えになっていたことが、ユウナレスカと対峙した時の
「父さんのこと、大好きだった…!だから父さんにできなかったこと、私の手で叶えたい!悲しくても生きます。生きて、戦って、いつか!今は変えられない運命でも、いつか、必ず変える!まやかしの希望なんか、いらない」というセリフから感じ取れます。まさしく、世代の継承が、死の螺旋を壊すことにつながったのです。

ティーダは、不器用な父親の愛を受け入れようとしませんでした。同じブリッツの選手として比べられるのも嫌だっただろうし、からかってきたり、否定的な言葉をかけられたり、母親を取られるような気がしたり、そのような複合的な気持ちから、ジェクトを遠ざけていました。しかし、大人になって父親と同じ旅路を歩き、ジェクトの本当の気持ちを大人になって理解していくことができました。本当に最後の最後で、お互いの気持ちが通じ合うというのが切ないです。夢のザナルカンドにいる時から、ジェクトの命日に泣いているので、本当は、嫌いと思い込みたかっただけなのかもしれません。素直になれない性格は、ジェクトに似たんですね。ユウナと同様、父親の思いを継承し、自分の物語に決着をつけることができました。不遇な主人公ですが、夢のザナルカンドというぬるま湯から、苦しくても実在するリアルの成長を、ジェクトが願ったように、ティーダは自らを受け入れ、シンを完全に消し去り、仲間たちの未来を繋げることができました。

不変と変化

「エボン=ジュ」の目的は、夢のザナルカンドを永遠に召喚し続けることでした。ここで読み取れることは、時代の変化とどう向き合っていくかということ。変化が著しい世の中では、こびり付いた思想が抜けることが難しく、世代間の摩擦を生みます。例えば、〇〇はこうあるべきだとか、今までこうしてきたから〇〇するのが当然だといったような思想です。古来の考え方を残していくことも大切ですが、これまでの認識に縛られたままだと、視野が狭まり、いつまでも究極召喚でシンを倒す方法が繰り返されるだけです。思想に縛られるのではなく、あらゆる想定や柔軟な発想で、摩擦を緩和できるのではと思います。

異界でのリュック「思い出は優しいから甘えちゃダメなの!」というセリフが好きです。
このセリフは、過去は過去、未来は未来として、常に新しく新鮮な風を受け入れて、生きていきたいと思わせてくれます。

カーテンコール撮影


ストーリーが終わると、オオアカ屋がやってきました。え!なんだって!?カーテンコール撮影!?(スマホの充電が瀕死だった私は冷や汗をかきまくっていました)


近くでファンサしてくれるアーロンさん。やばい。本当にやばいよ。死んでしまう。



個人的に嬉しかったこと

実は、公演後、隣に座っていた方と同じ年齢で、仲良くなりました!20代のFFファンは貴重なので、本当にありがたい…!帰りの新幹線、終電だったので、慌てて東京駅へ向かったのですが、わざわざ送ってくれました。なんてお優しいの…!最初から最後まで素敵な思い出いっぱいです!

最後に


改めて、尾上菊之助さんがFFXを愛し、ファンと同じ目線で強い思いを実現してくれたのだと、感謝を伝えたいです。ありがとうございます。
デザインやプロジェクトもそうで、先導する人は、特に強い感情を継続させ続けなくてはいけない、とっても大切な役目。それでいて、それについていく仲間たちも前を走る人に遅れないように必死で走る必要があります。長い道を走り続けている方々、本当に素晴らしいです!

本当にたくさんの人のご協力があって、このような素敵な演出が実現しているんだと思います。
FFXを生み出してくれた、スクエア・エニックス。そして、そこから影響を受けて新しい展開を生み出して下さった、「新作歌舞伎 FINAL FANTASY X」の関係者の皆様、本当にありがとうございます!

円盤化、オリジナルサウンドトラック作ってくれると嬉しいです…!気長に待ってます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?