Books from Denmark(後半 ノンフィクション、児童書)
Books from Denmark後半
前回に引き続き、デンマーク芸術基金によるデンマークの書籍選書、翻訳推進プロジェクト、Books from Denmarkの内容を要約いたします。前回はフィクションをご紹介いたしました。後半で取り上げるのは、ノンフィクションと児童書です。
ノンフィクション
前回同様、文学評論家のNanna Mogensenさんが、今年の秋の要注目ノンフィクションタイトル7作に見られる傾向について動画で説明しています。
●どうしたらより幸せな人生を送れるか
どうしたらより幸せな人生を送れるかというのが、今秋のデンマークのノンフィクションで人気のトピックの1つだったそうです。
Aydin Soeiの『父達』は、マイノリティのバックグラウンドを持つ5人のデンマークの父親のお話です。彼達の父親との関係性が、親になってからの自分達の生き方にどんな影響を及ぼしたのかについて書かれています。非常に正直な語りが印象的で、内容も示唆に富んでいます。読者は5人の父親の心の深層へと誘われます。
Lone Frank(ローネ・フランク)の『何よりも大きなもの――愛の特性について』は、愛する人を亡くすという個人的な体験に基づくナラティブ・ノンフィクションです。サイエンス・ジャーナリストであるLone Frankは、愛とは何かを探るというミッションを心理学や人類学、神経科学の助けを借りることで、遂行します。情感溢れる文体が印象的ですが、様々な観点から愛とは何か分析する作者の聡明さを感じさせられる本でもあります。
Lone Frankは、サイエンス・ジャーナリストとしての活動が評価され、今年デンマーク芸術基金から名誉賞を授与されました。文藝春秋から発表された、『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』も話題です。邦訳された作品は硬質な文体が特徴的ですが、今回の作品は文芸よりの全く異なる文体で書かれていて、同じ著者かと大変驚かされます。
『何よりも大きなもの――愛の特性について』はデンマークの文芸批評家、研究者、編集者、図書館司書、作家、ジャーナリストなどにより運営されている大規模な文学情報サイト、Litteratursidenの2020年最優良ノンフィクション推薦図書にも選ばれています。
●周囲の世界とどう関わるか
Nanna Mogensenは今秋は、人間中心に世界が回っているわけじゃない、ということを書いた本に、良書が出てきていると言います。
『つながり――人新世についての未完成の百科事典』には、私達人間と自然が互いに影響を及ぼし、依存し合っているということが書かれています。コロナが蔓延する今の時代に最も合ったトピックについて、多角的な視点から語られているそうです。
ノンフィクションのリストには他にも4作が選ばれています。
児童書
児童書の推薦リストはこちらです。ぜひご覧ください。
ちなみに次回2021年のデンマークの翻訳助成金の申し込み締切は3月1日だそうです。
翻訳者選定にぜひ本会のサイトをお役立てください。
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