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映画でヨーロッパを旅しよう!-EUフィルムデーズ-

 毎年2月に開催される北欧映画の祭典、トーキョーノーザンライツフェスティバルと同じくらい、いつも楽しみにしている映画祭がある。東京・京橋にある国立映画アーカイブで行われるEUフィルムデーズだ。<映画で旅するヨーロッパ>をテーマに、その名のとおりEUに加盟しているヨーロッパ各国の映画を、毎年5月下旬から6月にかけて1カ月弱のプログラムで上映している。同時期に京都府京都文化博物館でも上映されており、また、期間は短いものの、一昨年からは広島(広島市映像文化ライブラリー)、昨年からは福岡(福岡市総合図書館)でも開催されている。

 料金は会場によって異なるが、一般で1作品500円前後。国立映画アーカイブなら、高校生・大学生・シニアは310円、しかもキャンパスメンバーズ(大学・短期大学・高等専門学校等を対象とした会員制度に加盟している学校の学生や教職員)であれば無料!というお得さ。(いつからこの制度があるのか、そしていつから加盟しているのか知らないけど、私の母校もメンバーだった。学生の頃に知りたかった…!!)いつも会場を見渡す限りでは、観客は圧倒的にシニア層が多いので、ぜひ若い人たちにもEUフィルムデーズを知ってほしい。

 さて、前置きが長くなったが、通常であれば、今年もEUフィルムデーズが開幕している頃合いである。

 2月の終わり頃から休館する美術館や博物館が増え、国立映画アーカイブも同様に臨時休館となることが分かった。今年のEUフィルムデーズはどうなるのだろうか、6月には収束するのだろうかとそわそわしていたが、4月上旬に緊急事態宣言が出され、EUフィルムデーズも中止のお知らせが掲載された。しかし、それには「代替の上映については近日中にご案内」というようなことが書いてあり、きっと何らかの形で上映が行われるであろうことがうかがわれた。

 そして、待ちに待った5月下旬、「EUフィルムデーズ2020オンライン」と題したオンライン映画祭が告知された。6月12日(金)から25日(木)の約2週間、日本未公開作品7作品を含めた全21プログラムが青山シアター(動画配信プラットフォーム)にて配信されるとのことだ。

【EUフィルムデーズ公式サイト】 https://eufilmdays.jp/
【青山シアター】 https://aoyama-theater.jp/gaga (*会員登録は無料)

 詳細な情報は、まだ公式サイトにも青山シアターのウェブサイトにも出ていないようだが、配信される作品等については以下のサイトで確認できる。料金は単品だと1作品300円、テーマごとに組まれたプログラムパックは3~4作品で500円というお値打ち価格となっている。(購入後、一定の視聴期限が設けられるのかどうかについては、公式の発表を待つ必要がありそうだ。)

【EU加盟各国の話題作を一挙に紹介する映画祭「EUフィルムデーズ」-今年はオンラインで青山シアターにて特別開催決定!『EUフィルムデーズ2020 オンライン』】 https://cinefil.tokyo/_ct/17365002

 北欧諸国からは、『頑固じいさんとしあわせな時間』(フィンランド)と『ANIARA アニアーラ』(スウェーデン)が配信される。

 『頑固じいさんとしあわせな時間』は、スウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』を彷彿とさせるコメディドラマだ。昨年のフィンランド映画祭でも上映された作品で、以前のnoteでレビューのようなものを書いている。

 EUフィルムデーズでも同じ字幕が使われるのか分からないので、「爆買い」のシーンがどうなっているかを楽しみに再鑑賞してみたい。


 『ANIARA アニアーラ』は、ディストピア感漂う近未来SF作品。巨大宇宙船アニアーラ号は地球から火星に向かう途中、事故で燃料を失い、8000人の乗客を乗せたまま宇宙をさまよい続けることになる。

 今年のゴールデン・ビートル賞(「スウェーデン・アカデミー賞」とも言われている)では、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、視覚効果賞を受賞した。

 1956年に出版された、ハリー・マーティンソンによる長編叙事詩が原作で、邦訳は「ノーベル賞文学全集〈26〉」(主婦の友社、1976年)に収められているほか、2014年に単独で新訳が出版されている。Amazonには中古本しかないが、出版社のホームページからであれば購入できるようだ。

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 個人的には、毎年バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の作品がプログラムに組み込まれているのもうれしく思っている。今回配信される日本未公開作品の1つ、ラトビアの『ビッレ』にも注目したい。ノーベル文学賞候補となった作家ベルシェヴィツァの自伝的小説が原作で、少女の目線から1930年代末のラトビアが描かれている。

 ここ数年は、第2次大戦中や大戦後のドイツやソ連に翻弄された時代を描いた作品が続けて取り上げられており(良作を選んだら偶然そうなったのかもしれないが)、2018年には『エミリヤ、自由への闘い』(リトアニア)、2019年には『小さな同志』(エストニア)が上映された。


 映画を通じて、見たことのない景色を眺め、耳慣れない言語を聞き、異国の文化や歴史に触れる。EUフィルムデーズは、なかなか一般公開されないような国の映画(バルト三国もそうだし、キプロスやルクセンブルクなど)を観ることができる貴重な機会だ。

 今年のEUフィルムデーズがオンラインで実現したことは本当にすばらしいし、実現に至るまでの関係者の苦労はいかほどだったか計り知れない。本当に感謝したい。来年はいつもどおりスクリーンで鑑賞できればうれしいが、オンラインであれば普段来場できない人も楽しめる。どんな形であれ、EUフィルムデーズがずっと続くことを願っている。

(文責:藤野玲充

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