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うちの北欧関係の本を掘り出してきました 

家にある北欧関係の本を出してみたら、積読も含めてたくさんありました。翻訳書が多いですが、これはすごいことです。北欧語から直接翻訳できる翻訳者の方たちが出てきたのはここ20年ほどのことではないでしょうか。それまでは英語からの重訳が多く、二重の訳によるずれもあり、またミステリーは英訳されるときにかなり削られる傾向にありました。原語から直接訳されたものを読めるようになったことはとても嬉しいことです。北欧語書籍翻訳者の会と関係ある本を中心にながめてみます。

フィンランド

北欧は国民の幸福度が高いと言われますがフィンランドでの生活については、翻訳者・通訳者のセルボ貴子さんと、靴家さちこさん共著の『住んでみてわかった本当のフィンランド』がおすすめです。『世界からコーヒーがなくなる前に』は、フィンランド人の著者がブラジルの持続可能なコーヒー園について書いた本でセルボ貴子さんの訳です。『雪の女』は古市真由美さん訳のミステリーです。『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』はセルボ貴子さんと五十嵐淳先生(私のフィンランド語の先生なので「さん」づけできない)共訳です。

ノルウェー

『あるノルウェーの大工の日記』は中村冬美さん、リセ・スコウさんの共訳。北欧語翻訳者の方々と知り合わなければ、この面白い本を読むことはなかったでしょう。『北欧式お金と経済がわかる本』とミステリー『ホテル1222』は枇谷玲子さんの訳、『きのこのなぐさめ』は枇谷玲子さん、中村冬美さん共訳です。青木順子さんの『わたしのノルウェー留学』はノルウェーで文学をものすごく勉強する話で、留学記としては私の一番好きな本です。

デンマーク

『よるくまシュッカ』は訳者の中村冬美さんのやさしい声の朗読で大好きになりました。
『樹脂』は枇谷玲子さん訳のミステリーです。
『北欧建築紀行』と『アルネ・ヤコブセン』はデンマーク留学の経験もある、建築の研究者和田菜穂子さんの著書です。

アイスランド

『さむがりやのスティーナ』は朱位昌併さんによるアイスランド語からの訳です。朱位さんは『花の子ども』にも解説を書いています。
アイスランド発のミステリーは結構ありますが、その中でも人気のあるエーレンデュル警部シリーズ(『湿地』が1冊目)は柳沢由実子先生(私のスウェーデン語の先生)によるスウェーデン語を介しての翻訳です。

サーミ(ラップランド)

久山葉子さん訳の『影のない四十日間』、『白夜に沈む死』はサーミの地を舞台にしたミステリーでトナカイ警察の2人組が活躍します。『サーミ人についての話』は20世紀初頭にトナカイ飼育をするサーミ人自身が自らの生活を文字と絵で記した貴重な資料です。

スウェーデン

スウェーデン語をずっと習っていたことから、スウェーデン関係の本はたくさんあります。
『世界にバカは4人いる』はオーグレン英里子さん訳、『スマホ脳』で始まるアンデシュ・ハンセンの3冊は久山葉子さんの訳で日本でもベストセラーになりました。久山葉子さん著の『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』は、幸せとは何かを考えるうえで男性を含めすべての人に読んでもらいたい本です。

数学の面白いトピックを集めた『北欧式眠くならない数学の本』は枇谷玲子さんの訳ですが、各トピックについて数学者ならあともう一言書きたいだろうなというところでぐっととどまったのが見事です。その「ちょっと」のおかげで読者が混乱せず「面白い」と思ったままで次のトピックに進めます。『北欧式インテリア・スタイリングの法則』は久山葉子さん、机宏典さん共訳です。

スウェーデンのミステリー小説

最後に、スウェーデンのミステリー小説で締めます。スウェーデンのミステリーははいくらでもあるので、思いきりこらえてそのごく一部だけ。『1793』、『三秒間の死角』はヘレンハルメ美穂さん訳、『ミレニアム4』はヘレンハルメ美穂さん、羽根由さん共訳、『殺人者の顔』から始まる刑事ヴァランダーシリーズは柳沢由実子先生、『悪意』、『海岸の女たち』、『冬の生贄』は久山葉子さん訳です。私が特に価値があると思うのは訳者
あとがきです。たとえば『冬の生贄』には、移民二世の警察署長カリムが登場して「移民がピッツェリアやクリーニング屋を営むのを禁止すればいいのに」と漏らしますが、その意味は、スウェーデンに多くいる移民の現状とともに久山さんが解説してくれます。

言語だけでなく、北欧の文化、生活、社会問題についても確かな知識のある北欧語翻訳者の方たちによる翻訳書は、日本の出版文化を確実に豊かにしてくれていると期待しています。

トップ画像はストックホルム市立図書館。

(文責:服部久美子)


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