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スウェーデン発🇸🇪 リーガルテック企業、 IPScreener社 インタビュー

新しいアイデアや技術は世界中で生み出されています。特に、気候危機やパンデミックなどの問題に直面している今、革新的なアイデアや技術はこれまで以上に大切です。しかし、あなたが一生懸命考えた発明が、すでに特許登録された技術であったとしたら?もしくは、既に期限切れの特許で、自由に使えるものだったとしたら?IPScreener(アイピースクリーン)社の創設者兼CEO、Linus Wretblad(ライナス・レトブラッド)氏は、このようなことを繰り返し目の当たりにしてきました。そしてこれは「特許システムのエラー」であり、解決策を提供することができると考え、起業。その解決策を探るため、この度Wretblad氏にオンラインで話を伺いました(2021年12月3日実施)。

「私は、スウェーデン知的財産庁で特許審査官としてキャリアをスタートしました。そこで、同じアイデアや技術の再発明が何度も繰り返されるのを目の当たりにしたのです。特許を申請する段階になるまで、自分の発明が既に発明されたものであり特許が存在する、または、期限切れの特許として存在し自由に使用できる技術になっていることに気づかないケースが非常に多かったのです。そこで、同僚と一緒にUppdragshusetという会社を設立しました。これは、さまざまな特許調査サービスや分析、特定の技術分野の動向のマッピングを行う調査会社です。しかし、それでも私は、新しいアイデアやイノベーションの開発に携わる人たちが、より効率的に仕事をするために、特許に直接アクセスでき、役に立つようにしたいと思いました。そこで2015年に、IPScreenerの前身となるAIベースの特許検索ツール「AutoMatch」という最初のプロトタイプを発表しました。2017年には商品化し、独立した法人となりました。IPScreenerでの私の使命は、”特許に隠された金鉱を誰もが探索し、理解できるようにし、不必要な再発明を回避すること”です」

競合他者と、IPScreenerの独自性

「2つの優れた競合他社を認識しています。1つはフィンランドの会社、もう1つは日本の会社です。3社とも、AIを使った特許調査ソリューションを提供しています。しかし、IPScreenerは、特許の専門家ではない人々、特に中小企業や大企業の研究開発チームも対象としている点で、異なるアプローチを持っています。そのため、私たちのサービスは、単に特許を検索するツールではなく、対象アイデアの周辺で起こっているイノベーション状況を理解するためのサポートを提供します。また、特許を読み慣れていない方でも、どこから読め始めればいいのかを示したり、対象アイディアとの関連性を示すことで、簡単に読めるようにする機能などを備えています。その他にも、調査結果の共有やレポート作成など、便利な機能が満載です。ユーザーが情報を見つけるだけでなく、理解し、フォローアップや活用ができるようにしています。」

「我々が特に大企業をターゲットにしている最大の理由は、大企業が既に発明されているものを発明するために不必要なリソースを費やしているからです。UCLA Andersonとの共同研究によると、大企業が新しい発明を開発し、特許を申請するまでの全プロセスにかかる費用は、平均して616,000米ドル。このうち、知財部での審査に費やされるのは、わずか1万2,000ドル。つまり、その技術が登録されるかどうかを評価する時点で、すでにコストの99%近くが費やされてしまっているのです。発明というのは既存の技術と重複することが多いため、これでは効率的とは言えません。このような事態を避けるために、企業が研究開発中から既存特許に簡単にアクセスし、調査する手段が必要と考え、IPScreenerを提供しているのです」

持続可能なイノベーションで、SDGsにも貢献

Wretblad氏は、IPScreenerのソリューションはSDGsの目標9にも貢献していると考えています。「SDGsの目標9は、持続可能性を実現するための技術や革新的なアイデアの推進についてしか語っていません。しかし私が思うに、技術そのものがいかに持続可能な未来に貢献するものであっても、その技術を発明するプロセスで、お金や時間、労力の無駄が発生しているようでは、真の意味で持続可能な技術とは言えません。IPScreenerは発明のプロセスをより持続可能にするソリューションでもあるのです」

スタートアップの技術開発の加速にも

「AIによる探索と読み込みで、スタートアップや中小企業のイノベーションも加速することができます。実に特許技術の9割が、有効期限が切れていて自由に使える状態です。スタートアップはゼロから何かを作るよりも、特許を検索して使える技術を知ることから始めればいいのです。ただ、スタートアップの問題点は、一度事業開発を始めてしまうと、ネガティブなニュース(素晴らしい独自アイデアだと思っていたものが、すでに存在していたこと)に目を背けてしまうことです。しかし、やみくもに走り出すのは決して良いことではありません。前もって情報を入手し、それに迅速に対処して行くことで、良い結果が生まれるものです」

TINCへの参加

2017年、IPScreenerはノルディックイノベーションハウス シリコンバレーが運営するアクセラレータープログラム、TINCに参加しました。そこで得たものは何だったのでしょうか。

「スカンジナビアでは、製品やサービスが完全に出来上がってから市場にリリースすることが期待されますが、アメリカでは、開発のごく初期段階で製品を市場にリリースすることができます。IPScreenerもそれに倣い、非常に早い段階で製品をリリースし、クライアントや市場を巻き込みながら、学び、開発することができました。このことが、シリコンバレーでの刺激的な生活や多くの出会いと並び、私たちがTINCに参加して得たことです」

現在日本で注力していること、直面しているハードル

「日本には上陸したばかりです。日本の大企業2社とパイロットを行い、顧客層の絞り込みやローカライズの方法などを時間をかけて検討しています。顧客層をより深く理解するために、パイロットをもう1社追加する必要があるかもしれません。いずれにしても、ノルディックイノベーションハウス東京と在日スウェーデン商工会議所は、私たちにとって良いパートナーとなるはずです」

最大のハードルは、コミュニケーションの取り方、ビジネスの流れの理解など、文化的なことだと感じています。スウェーデンと日本は、自然を大切にする思いやマインドフルネスを尊重するという共通のコアバリューを持ってはいますが、その他の文化的・社会的側面は違いも多く、適応することが重要だと感じてます」

最後に、日本市場への参入を考えている北欧のスタートアップに向けたメッセージを伺いました。

「ネットワークを構築すること。ローカルなネットワークを持つことは、どの市場でも重要ですが、日本では特に重要です。私たちの場合、TINCでシリコンバレーに滞在した際に出会った日本人弁理士が、今も私たちを支えてくれています。また、信頼は長期的な関係で築かれるものです。例えば、現在パイロットを行なっている2社とは、数年来のお付き合いです。信頼できるネットワークを持つことが、市場での道しるべになります」

Wretbladさん、インタビューのためにお時間をいただきありがとうございました!今後の日本市場での展開を楽しみにしています。

IPScreener社の活動やサービスの詳細については、ぜひ同社HPをご覧ください↓

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