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です・ます調は距離が近過ぎるのかもしれない

noteを含めどこかに何かしらを書くに当たって考えることのひとつが、「です・ます調」がいいのか、「だ・である調」がいいのか、というものです。

私は今のところ大方「です・ます調」で書いているのですが、世のnoteを読んでいて、スッと染み込んでくるのは「だ・である調」の方だ、ということを今更ながら実感しました。それは何故なのでしょう。

「です・ます調」がなんとなくオブラートで包んだようなものであるのに対して、「だ・である調」はストレートにぶつけてくる強さがあるからだ、と一瞬は思ったのですが(過去に誰かがそう言ったのを思い出したのですが)、どこか納得しきれないところがあり、私は少し立ち止まりました。
私が親近感を感じるのはどちらなのか、と考えてみると、むしろ「です・ます調」で書かれた文章の方なのです。親近感というか、「話者の距離が近い感じ」がします。世界のどこかにいる遠い人ではなく、自分が聴きに行った講演会の演壇に立っている人、くらいの距離。意思を持つ存在としての生々しさを感じるのは「だ・である調」である一方で、生身の人間であると意識するのは「です・ます調」です

それは、自分の足でしっかと立っている力強さと、人と繋がりながら生きている社会性とが、それぞれ別種の「生」の力を示しているからかもしれません。心の存在感と、顔の存在感、と言えばいいでしょうか。
例えば、Twitterでは力強い表現が多く見られますが、メイクやスキンケアについて「〜しろ!」「〜するんだ!」といった形で語っているのを見ると、それは文字通り「顔」の話なのですが、どちらかというとそういうふうにサバサバと割り切って生きる心のありようの方に惹かれてしまいます。ところが、畏まったところのない砕けた表現でありながら、身近な感じがするかというとそれは然程ではありません。「(自分と近くはない)どこかの誰か」という距離感です。その発信者が会社の同僚の中の誰かかもしれないなどとは、たぶん思わないでしょう。
一方で、「です・ます調」は"丁寧な言葉遣い"と言われるように、読み手に気を遣い、時には寄り添うような雰囲気を伴います。気を遣っている対象は不特定多数ですが、読み手はそれぞれ書き手が自分に近づいてきてくれていると感じるように思います。反面、その書き手の本心や信念がストレートに届くことは、「だ・である調」と比べればずっと少ないでしょう(無いわけではありません)。話者の人格に左右されないような、事実の伝達に向いている語り方とも言えます。

そもそもの話、「です・ます調」は「だ・である調」を柔らかくしたものではなく、話し言葉と書き言葉という枠組みの差異があります(学問的に考えるとツッコミどころがあるかもしれませんが、とりあえず体感で言えばそうだろうと思います)。
敬体の「です・ます調」に対して「だ・である調」は常体ですが、実際にそのように誰かに話すことはほとんどありません。書く以外で用いるのは演説のときだけです。先に講演会を比喩として出しましたが、演説と講演は違いますよね。社会とはこうである、こうあるべきなのである、などと論じるのと、あなたにこんなことを知ってもらいたいのですと語りかけるのとではコミュニケーションの形として大きく異なっています。

そこで考えてみるのです。

私は誰かに"語りかけたい"のだろうか?
いや、私はこう思ったと"言いたい"のだ。

自分の言いたいことにパワーを持たせたいというふうにはそれほど思わないので、なんとなく柔らかくしようとして「です・ます調」を選択しがちでしたが、「です・ます調」はただ語調を和らげてくれるに留まらず、"語りかける"という属性を文章にもたらしてしまうのです
それによって、「誰に言っているんだろう」という疑問を引き起こすことになります。読者がそう感じることもあるかもしれませんし、何より書いている自分自身がうっすらそのような違和感を覚えることになるのです。意味もなく読者に近寄ろうとしてしまっている、という感覚です。ただ"言いたい"のにしては、人との距離が近過ぎるのです。

「だ・である調」ならば絶対に柔らかくならないのか、というと、そんなことはありません。敬体に頼らずとも温かみのある文章をお書きになっている方は世の中にたくさんいます。言葉に柔らかさを持たせたいのなら、語の選択を工夫することによってそれを実現する努力をせねばなるまい、と思った次第です。

そして何より、自分が読んでいて「ああ、いいなあ」と思うのは、常体で、且つ慎重に書かれた、信念や人生の滲み出る文章なので、自分もそのような形を目指したいという気持ちになりました。

ということで、この「誰に言ってるんだ」感の溢れる文章はこれで終わりにしたいと思います。
「です・ます調」のご利用は計画的に。

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