オンラインレッスン:思考停止しない、させない

思考停止とは

私が恐れている言葉に「思考停止」という言葉があります。勉強にしろ、仕事にしろ、運動にしろ、「思考停止」してしまうと、貴重な時間を無駄にして(時々お金も無駄にして)、無意味なことを続けることになります。

日本語を教え始めてから「思考停止」についてよく考えるようになりました。思考停止というのは私自身、学習者の両方に言えることです。慣れによって私が思考停止でレッスンをしてしまうこと、そして学習者へのモチベーションづけを間違って学習者を思考停止に導いてしまうことです。

講師側の思考停止

レッスンを始めて半年弱は私の頭はフル回転していました。

どうしたら分かりやすく説明できるか
どうやって学習者のやる気を引き出すか
どのくらいの宿題の量が適切か
生徒からの無意味(に聞こえる)質問にいちいち真面目に答えるべきか
どの教科書がいいか
レッスン外の日本語学習についてどうアドバイスをすればいいか

レッスン中に焦ったり、どもったり大変でしたが、精一杯考えて、試すのは非常に満足度が高い経験でした。ただ、残念なことに「慣れ」と「惰性」が徐々に始まりました。

というのも、いろいろなバックグラウンドの学習者がいるとはいえ、ウケがいいレッスンには、やはり傾向があります。また、私にとって納得のいく教え方、語学を趣味で学習してきた立場から見て、効率的な学習方法があります。その結果、教え方に偏りが出てきました。原因は慣れによる「思考停止」だと思います。

私の場合は、文法の教科書の多用でした。文法の教科書は向き不向きがあります。詳しくはこちら

教えやすい、私の個人的な考え方に合っているという理由で、一時期は初級の生徒全員に「みん日」をはじめとする文法中心の教科書お勧めして、粛々淡々と教科書に従ってレッスンを進めました。私の感覚では8割以上の学習者が文法中心のレッスンに満足していました。

その後、同じレッスンをしているのに習熟があまりに遅い学習者が出てきたので、一度落ち着きを取り戻して反省して、生徒によっては、教科書一辺倒にならないように意識しています。

極端にひねりを利かせるのもどうかと思いますが、学習者にはいろいろなタイプがあるし、教授法、モチベーション付けの方法は「わたしはこのタイプの教え方だから生徒全員これで統一」というのは思考停止だと思います。相手の反応などをよく見て、臨機応変に対応する必要があります。

生徒側の思考停止

生徒を思考停止させないのも教える側の役目だと思います。私のレッスンを受けている学習者の中には、下調べばっちりで、「文法を強化したいので、みんなの日本語でのレッスンをお願いします。漢字はWanikaniで勉強しています。」「テラスハウスでこういう表現が出てきたんだけど、どういう意味?」「読解力を強化したいんだけど、日本人の子供用の本でお勧めはありますか?」とリクエストや質問をしてきます。

文法説明も読み込んでいて、「ここの文法のルールはこう理解しているけれど正しいですか?」と質問してくれる人もいます。こういう人は頭をフル回転して、教科書、講師の説明の全てを消化しようとして、全てに突っ込みを入れ、意識を張り巡らせているので、成長は早いです。きっと、ドラマを見るときも漫然と見ているわけではなく、「この文法表現はまだ習っていないけれど、こういう意味かな」と意識しながら見ていることでしょう。

こういう人に対しては、私は粛々淡々とレッスンをします。たまによさそうな読み物やビデオがあればお勧めとして紹介しますが、どちらかというと、そういう生徒から最近何を見ているか聞いて、ほかの生徒にお勧めすることの方が多いです。

残念ながら多くの学習者はここまで意識を張り巡らせていません。ただ、意識を変えれば学習の効率は飛躍的にアップします。学習者の意識をガラッと変えることは難しいですが、きっかけをポンポン落としてあげられるように、教える側が常に意識をするべきだと思います。

一番最悪なパターン

一番ダメなレッスンは、教える側が自己満でひたすら説明しまくって、生徒は思考停止でぼーっと聞いているだけ、というものです。

二番目に最悪なパターン

次にダメなのは、パターン化してしまったレッスンです。生徒に教科書を読ませて、教える側の説明は最低限にとどめて、練習をさせるのはある程度は正解ですが、パターン化すると生徒が慣れて思考停止で読んでしまう危険大です。生徒はロボットのように教科書を読み、その課の文法パターンを何も考えずに練習問題に当てはめて答えているかもしれません。これではすぐ忘れてしまします。

右や左、後ろや横から時々ジャブを加えて、「学習者に考えさせる、意識させる」必要があります。レッスンの最初や最後に今までの文法を取り入れた質問をすること、文型を読んだ後で、「今回の文法のポイントは何ですか?」と抜き打ちで聞いたり、たまに総復習のワークシートをさせて「ここ忘れちゃってるな」と意識させること、レッスン外でYoutubeなどを見る重要性について伝えることなど、ちょっとしたことです。

いくら働きかけても響かないこともありますが、聞く気がないわけではなくて、原因はタイミングであることも多いです。ある日、突然目覚める学習者もいます。そのタイミングまでモチベーションを高めるアクションを小出しにしておくことが重要だと思います。


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