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またひとつ時代の終焉をみた。

福岡市の中心、天神地区。

そこに乱立するファッションビルの中のひとつ、イムズが8月末日をもって閉店した。

渡辺通りをはさんで東側に位置するその一帯は再開発地区であり、天神コアもビブレもジュンク堂も次々と閉店してきた。(ジュンク堂は移転。元フォーエバー21の建物に入ったのでシャンデリアが下がっている。)

そして今回イムズも。

わたしは福岡に縁もゆかりもない、ぽっと出の移住者なのでそれほどの思い入れはないのだが、やはりなくなるのは寂しい。

平成元年にオープンして32年の幕を下ろす。

まさに平成という時代を生きた館。

わたしが熊本に住んでいた時に、福岡に来る理由はコンサートか、このイムズにある三菱地所アルティアムで開催されている展示を見るためだった。

現代を生きる気鋭のアーティストの作品を見られる九州では数少ないギャラリーなのだ。

今回は最後ということで、何人かの作家の共同展示という形になっていた。

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イムズはわたしの知る限り、来店客が少ない閑散とした館だったのだが、終わりを惜しんでか人が多かった。

まず目的を果すためギャラリーのある8階にエレベーターで向かう。

最初にきたエレベーターはわたしが乗ると密になるので見送ったが、次に来たものに乗ったらどんどん人が乗り込んできてギュウギュウで一本目を見送った意味がなかった。

エレベーターで密になるようなことも何回か来た中で初めてのことだ。

ギャラリーはいくつかの展示を壁で仕切られているせいか、前に来た時よりとても狭く感じられ、作品数も少なかったが一番奥の空間にラスボスのように塩田千春の展示があって、これはドキッとする。という表現も違う、ゾワッとするような、心をグッと吸収されるような存在の強さがあった。

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最果タヒの詩はひとつだけ壁に記してあった。タイトル 絶滅。

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この世界になってから殊更、頭をよぎる言葉だ。

終わりと思って観るとひとつひとつがさよならを意味するような、でも存在していたという事実がいつまでもどこかで浮遊するような、そんな人生の記憶みたいな作品に思われた。


それから一階ごと順に回りながら下りていった。


オープンしたての頃のことは全然知らないが、平成前期、まだバブル崩壊前の賑わいや、弾けた後もDCブランドやセレクトショップのショッパーズバッグがステータスだったわたしたちの青春時代にはきっと若者が犇めき合っていたことだろう。と思いを巡らす。

栄枯盛衰。

万物には必ず起こり得ることだ。

わたしたちの世代も前線で走る時期はそろそろ終わり、次世代の台頭を感じる。

古くなった館はその役割を終え、壊されるなり、リニューアルされるが

わたしたちは古い体を抱えて生き続けなければならない。