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【ファウチ研】エイズとコロナ、人災による禍としての類似性

HIV治療薬の問題を取り上げた記事の概要

前回、HIVの感染経路をめぐるファウチ発言の問題点についてシェアさせていただきました。その時に紹介したThe hillの動画の後半部分に、AZTというHIV治療薬についての問題点について、SPIN誌で1989年に報じられた記事、「Sins of Omission(怠惰の罪)」について取り上げられていました。

毒性の強い薬が史上最速で承認される過程や、本来、「死か薬か」の2択にある患者を対象として承認された薬が症状のない健康な感染者にまで拡大されていったという、かなりショッキングな記事です。その中にファウチ博士ももちろん登場します。

動画の中で、ジャーナリストのキム・イヴァーセンは、不要な煽りからのデータ不足の状態での薬の承認が現在のコロナ禍と似ているのではないかという指摘をしています。

[この記事は「SPIN」1989年11月号に掲載されたものです。SPINの30周年を記念して、現在進行中の "30 Years, 30 Stories "シリーズの一環として再掲載されました] 

治療薬AZTとは何か?

イギリスの製薬会社ウエルカム社の子会社であるバローズ・ウエルカム社が開発したHIV治療薬。もともと四半世紀前にがんの化学療法薬として開発されていたが、毒性が強く、製造コストが非常に高く、がんには全く効果がないため、棚上げされて忘れ去られていた。とても強力である上、細胞を選択的に破壊することができない点も問題だった。

エイズの治療法が急がれる中、この忘れられた新薬にスポットライトが当たり、HIV治療薬として、FDAの審査を受けることになった。

データ不足にも関わらず承認を要求する強い圧力

1987年1月、FDAは11人のエイズ専門医に対し、エイズ患者の生存率を劇的に向上させる効果があると申請された治療薬AZTについて早急に検討するよう求めた。同新薬は情報が十分ではない猛毒であったが、“薬よりもプラセボの方がはるかに早く死ぬ”という研究結果があった。医師たちは、この研究には欠陥があると考えていて、長期的な影響はまったく不明であるため、躊躇していた

検討会で指摘された懸念点
FDA長官のエレン・クーパー:この薬を承認することは、"通常の毒物学的要件から大きく逸脱し、危険を伴う可能性がある "。
カルバン・クニン医師(委員会メンバー):“このような人々の死亡率を低下させる薬剤を拒否することは不適切であるが、その一方で、有効性が証明されていない分野に、毒性のある薬剤を使ってこの薬を広く使用することは、悲惨な結果を招く懸念がある”。                                                                                                                  イツァーク・ブルック博士(パネル委員長):“統計がよく取れていないため、1年後に何が起こるかはわからない。この薬は実際には有害である可能性もある”。   他のパネリスト:“不明な点が多すぎる。一度承認された薬は、どのように悪用されるかわからない”。

懸念に対するバロース・ウェルカム社の対応2年間の詳細な追跡調査データを提供し、この薬を重篤な患者の応急処置という本来の目的から外れることはない

FDAの政治的圧力(?):同医薬品・生物製剤センターの責任者が異例の発言の許可を求めてきた。「もし、この薬を承認してくれたら、バローズ・ウェルカムと協力して、この薬が適切な人たちに与えられるようにすることを約束します」。

“この研究には欠陥がある”とは?(治験の問題点)

AZTの治験は二重盲検プラセボ対照試験(患者も医師も、患者が薬を飲んでいるのかプラセボを飲んでいるのかわからない状態で効果を確認する治験)で行われた。ところが、実際には医師も患者も、自分に割り当てられた薬がAZT(本物)かプラセボ(偽物)かわかっていた

二重盲検プラセボ対照試験の失敗:                     医師サイド:AZTはエイズにはない重篤な副作用を引き起こすため、誰が何を投与されているかは医師には明らかだった。さらに、CMVと呼ばれる定期的な血球計数は、誰が薬を飲んでいて、誰が飲んでいないかを明確に示すものですが、報告書では削除されていなかった。これらの事実は、FDAと研究を行ったバローズ・ウェルカム社の双方が認め、確認している。                                                                  治験参加者(患者)サイド:患者の多くはカプセルを分析していた。また、錠剤は味で区別できてしまった。プラセボが割り当てられた場合、地下市場で薬を購入し服用するケースもあった。患者同士が連帯感を持って薬をプールしていたという報告もあった。

さらに深刻な問題:試験開始から17週間後、プラセボ群でより多くの患者が死亡した。この時点で、倫理的な理由から5カ月も早く試験が中止されたため、研究は完了していない。また、プラセボ患者でも、AZTを服用している。

使用範囲の拡大を推進したファウチ博士

委員会が懸念していたのは、AZTはその猛烈な毒性のため、重篤なAIDS患者に最後の手段としてしか使用してはならないということだった。ところが、米国国立衛生研究所(NIH)のアンソニー・ファウチ博士は、処方の拡大を推進していた。

FDA承認を検討する会議に参加していたブルック博士は、この薬は化学療法の一種であるため、化学療法剤の使用経験のある医師のみが処方すべきであると指摘した。AZTの最も深刻な副作用である骨髄の細胞減少のために、患者は頻繁に輸血を必要とする。実際、AZTは発売されるや否や、想定されていたパラメーターをはるかに超えて、大量に処方された。最悪のシナリオが現実のものとなったのである。後日、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に応じた医師たちは、HIVの抗体検査で陽性となった健康な人たちに、すでにAZTを投与していたことを明らかにした。

さらに最悪なことに、同薬は60カ国に広まり、2万人が服用していると推定されていた。委員会の当初の懸念を払拭するような新しい証拠がないだけでなく、ブルック博士が懸念し反対票と投じた通り、追跡調査のデータもフォローアップも十分ではなかった

不十分な研究と、それを元にした政府による薬の推進

1989年、政府は、140万人の健康なHIV抗体陽性のアメリカ人が、病気の症状を示していなくても、AZTを服用することで「恩恵」を受ける可能性があると発表した。NIHの責任者であるファウチ博士は、2年前から行われている試験で、早期介入がエイズを抑えることができることを「明確に示した」と誇らしげに発表した。140万人のアメリカ人がHIV抗体陽性と想定されており、最終的にはその全員が病気にならないようにAZTを服用する必要があるかもしれない、とファウチ氏は主張した。

事実確認せず、”おかみ”の情報を垂れ流すだけのメディア

使用拡大を後押しする元となった研究に関する発表は、「HIV陽性者はAZTを飲まないとエイズになる確率が2倍になる 」ということをわずか2枚にまとめたプレスリリースが配布されただけで、研究の既存のコピーが添付されることはなかった。しかし、大手新聞社は、NIHからのプレスリリースに疑問点を持つことはなかったようだ。

SPINがNIHに電話して研究のコピーを求めたところ、「まだ執筆中です」との回答だった。プレスリリースによると、3,200人の初期ARCおよび無症状の患者をAZT群とプラセボ群に分け、2年間追跡調査を行ったということだったが、実際に2年間に登録された患者の数を尋ねたところ、NIHの回答は「わからない」というもので、平均的な参加期間は2年ではなく1年だった

1つの新薬に期待をかけすぎた代償

エイズ患者や医療関係者の多くは、この薬をエイズに対する最初のブレークスルーとしていた。良くも悪くも、AZTはFDA史上最も早く承認された薬であり、活動家たちはこれを勝利とみなした。しかし、その代償として、それ以降の政府の治験はほとんどがAZTに集中し、他の100種類以上の有望な薬は調査されないままになってしまった

バローズ・ウェルカム社の株価

この発表を受けて、バローズ・ウェルカム社の株価は急上昇した。AZTは、患者1人当たり年間8,000ドル(血液検査や輸血は含まず)と、これまで販売された薬の中で最も高価な薬である(記事発表当時)。バロース・ウェルカム社の来年の粗利益は2億3000万ドルと見積もられている。株式市場のアナリストは、バローズ・ウエルカム社が90年代半ばまでに、レトロビルという商品名で毎年20億ドルものAZTを販売しているかもしれないと予測しており、これはバローズ・ウエルカム社の昨年の全製品の総売上高に匹敵する。

コロナ・パンデミック時と共通するもの

ファイザー社をはじめとするワクチン開発企業による治験情報によると、コロナワクチンの治験は、2023年の夏に終了する予定とされています。今回のワクチンの開発、そしてEUA許可は代替治療のないパンデミックという事態を考慮し、異例の速さで行われました。ワクチンを推進する政府、科学者は、治験参加者のトータル人数は、通常の治験と同規模の大きさで行っているから安全は確認されたとしていますが、反対派が指摘しているのは、治験期間の短さ安全性を示すデータが不十分であるため、コロナの重症化リスクが低い層に対しては、ワクチンの効果がリスクを上回るとは言い切れないというのです。特に健康な人に投与するというワクチンの性質上、安全性の確保は重要だとされています。これはAZTがその毒性の強さにも関わらず承認されたのが“治療薬のない死を待つのみの患者が対象だったから”というのと、ベースにある考え方は同じです。

ワクチンそのものを反対している科学者もいますが、政府案に反対する多くの科学者、医師は、「自分の健康状況に合わせて個々人が判断すべき(義務化に反対)」または「特にリスクの低い、若者や子どもへの接種は見合わせるべき」と使用対象の拡大に反対しています。

ファイザー社のワクチンは先日承認されましたが、即日、2人のFDA幹部が引退を表明する等、AZTの承認時と同様、その会議が穏やかではなかったことが想像できます。そもそもEUAで使用許可が下りているのですから、わざわざこの時期に承認を取ったのは、ワクチン義務化という政策を後押しするためだけが目的だったとしか考えられません。

承認を行うためには、資料を読むだけでも莫大な時間がかかるとされています。新型コロナを巡っては、イベルメクチン等、承認外使用を求める既存薬や、次々と発表される新薬等、EUAとして許可が期待される薬がたくさんあります。そのような中で、ワクチンだけが解決策であるかのようなリソースの一点集中投資は、他の治療法によって救えたかもしれない患者を救わなかったことにはならないでしょうか。

下記に、同記事に掲載されていた、AZTを指示しない、または同薬の承認、使用拡大を決めた政府研究に対する批判をまとめました。*<>がコロナ対策への批判の声です。


記事中で紹介された批判:
データのない研究結果を発表し、公衆衛生に大きな影響を与える提言をすることは、非常に専門性に欠け、無謀であると感じた。政府が審査前の科学的事実を報告するなんて。前代未聞のこと。<ロックダウンの科学的根拠はないとされています。>                                   ・彼らの数字の表現方法は非常に不誠実です。「試験に参加した人が60人であれば、その数字には意味がありますが、3,200人のうち何パーセントかを計算すると、2つのグループの差はほんのわずかになります。何の意味もありません。しかし、3,200人のうちの何パーセントかを計算すると、2つのグループの差はわずかになります」。<CDCが出すデータは、その時々の自らの政策を裏付けることができるものをわざわざ探してくるのか、局地的で、データのまとめ方にも疑問点が残ります。>
・まだHIV抗体の陽性反応が出ていない "リスクのない人 "にもAZTを投与することが提案されています。<ワクチンの治験データも“未接種者が接種していたら感染しなかったであろう効果”の部分が強調されていますが、同じデータから、コロナに感染する人はそもそもごく少数ということもわかっています>                                                   ・AZTの効果について不確かな点が多い中で、健康な人にまでAZTの使用を拡大することを提唱するのは犯罪的だと思う。特に、実際にARCやAIDSを発症したHIV感染者はごく一部に過ぎない。<コロナワクチンに限らず、健康な人に投与するワクチンの安全性確保は、薬を承認するよりも慎重であるべきとされています>。                                      ・バローズ・ウエルカム社は、無症状の病院関係者、妊婦、子供に液体AZTを投与する実験をすでに開始している。<死亡率、重症化が極めて少ない特に子どもたちへのワクチン投与に対し、疑問の声が上がっています>                                      ・"このように、AZTの効果はARCやAIDS患者にとって数ヶ月間に限られている "とフランスのチームは結論づけた。数ヶ月後には、AZTは全く効果がないことがわかったのです。<ブースター接種が一時的に効くことはイスラエルのデータからわかっていても、投与から2ヶ月しか経過していないため、ブースターの長期的な効果は不明>                                                                                                             ・私は恥ずかしい。誰も抗議しないのが信じられないほど、これはまがいものの科学だ。臆病者め。補助金を守るためには、口を開くなというのがゲームの本質だ。これは、明らかに金銭的、政治的な力が働いているにもかかわらず、党の方針に従っているだけで、批判的な意見を述べていないことの根拠になる。<コロナの起源説は、治療薬等の開発にも無関係とは言えず、重要なものであったにも関わらず、ファウチ博士が唱える“自然発生説”以外は、陰謀論とされ、自然発生の可能性を疑う科学者も、自然発生説を支持する声明を出すか、ダンマリを決め込んでいた。イベルメクチン等の既存薬の承認外使用の有効性についても、陰謀論とされ、積極的な議論が行われないような雰囲気を科学者自身が生み出している>

最後に−―“Shoddy Science(まがいものの科学)”と闘え!

このAZTの問題を指摘した記事を読みながら、どうしてこの問題を今まで知らなかったのだろうということを猛省しました。正直なところ、HIVは私には“無縁な病気”という意識がありました。この問題が当時、どれくらい取り上げられていたのかはわかりません。ただ、AZTの問題を指摘する意思の1人は「エイズが注目度の高い病気で良かった」というコメントをしています。その注目度ゆえに“Shoddy Science(まがいものの科学)”から抜け出すことができた」と言います。このコメントはショックが大きいものでした。記事の内容は、人を救う尊い仕事というイメージがある医療業界で起こったこととしては信じがたいものがありますが、AZTの事例はあくまでも氷山の一角であり、希少疾患等では同様のことが人知れず起こっている可能性もあるという指摘ととれたからです。

30年前のAZTと今回のコロナと、政府対応の問題点は何も変わっていないように思えます。その責任はどこにあるのか?上記で非難されている人たちにも問題はあります。ただ、そのような“まがいものの科学”を許してしまったのは、私たち一般市民の無関心だったのではないかとも思います。

理系能力が優れている人が必ずしも正しいデータを出してくるわけではありません。優れているからこそ、“まがいものの科学データ”もそれっぽく作れてしまう懸念もあります。疑惑追及を行う上院議員に対する、ファウチ博士の発言からは、「あなたよりも優れている、科学の権威である私が正しいに決まっている」と言うおごりがあちらこちらで感じ取れます。それを伝えるメディアも、「“耳鼻科でもある”ランドポール上院議員が〜」のような形で、肩書きからファウチ博士の言い分が正しいような印象操作を行っています。

文系の人間にとっては、科学の議論は難しいと言う先入観があります。ただ、その先入観に負けず、きちんと読んで(耳を傾けて)みると、高度な科学の知識がなくても、特には算数のレベルでわかる程度の、“怪しい点”がゴロゴロしています。「“まがいものの科学”ではないかどうか、私たちはきちんと見張っていますよ」という姿勢を見せない限り、私たち自身や私たちの大切な人たちの健康、そして命は危険に晒されてしまうかもしれないのです。

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