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”高額授業料”で特権を獲得・維持する、リベラル・エリート:アメリカはなぜ騙されたか?❹

入学しやすく、卒業しにくいアメリカの大学の問題点

一見すると正論でも、総合的に見ると・・・?

アメリカの大学は、日本に比べて入学がしやすい一方で、卒業に必要な単位を取得するのが難しいと言われています。

大学でしっかり勉強しなくては卒業できないのだから、良いシステムでは?

といえば、そうなのですが・・・。現在のアメリカが抱える問題全てに共通することなのですが・・・

1点にフォーカスすれば、正論に見えることも、総合的に見ていくと、矛盾だらけ

ということが多々あります。”卒業しにくい”ということは、大学を卒業した人はきちんと学を修めた人であるという証明になるという点では良いと思うのですが、問題は、アメリカの大学の授業料がケタ違いに高額ということです。多くの学生が学生ローンを組んで入学しますが、これはあくまで大学を卒業することで期待できる高めの収入を当て込んでのこと。卒業できずに退学してしまった場合、若者には大きすぎるローンの債務を、予定よりも少ない給料の中から返済していかなくてはならなくなります。しかも、これは・・・

すでにアメリカで大きな問題となっていること。

知人で授業料の問題を一気に解決したいと、傭兵として戦地に赴くという”高額バイト”に手を出したという人もいました。無事に卒業できたという人でも、大学や学部によっては、期待していた高額な収入が得られずに、長期にわたる返済義務に悩まされているということもあるようです。卒業できなかった場合には、さらに負担の大きな負債だけが残ることになります。

昨年の中間選挙前に、バイデン政権が学生ローンの一部に対する徳政令みたいな政策を打ち上げ、若者票を集めようとしました。これはバイデン政権あるあるですが、予算が関係することは、議会を通さず、バイデン政権だけでは決められないことであることを分かった上で、権限外の権力を振りかざしてみただけ・・・ということのようですが(ワクチンの義務化に関しても、本来、公衆衛生面での権限が与えられていないバイデン政権が法律の穴を探しまくって、虫食い状態になった義務化政策を導入したということがありました)。

とはいえ、”学生ローンに苦しむ若者を救う”という政策も、一見すれば、良い政策のように見えます。しかし、学生ローンの問題は、そもそも諸外国に比べ、異常に高額な大学の授業料にあります。

学生に対して、より良い授業を提供していくために、
費用が嵩んでしまうのは、仕方がない

と、リベラル・エリートは主張します。これも一見すると正論です。しかし、決められた予算の中で、ベストな事業を行うというのは、民間企業に求められる当たり前の話で、さらに言えば、高い投資をすれば必ず高い品質のものが提供できるというわけでもありません。それに・・・

諸外国の大学の中には、
もっと低予算で同等の成果を上げているところもあるけど?

ここにも経済大国アメリカ特有の弱点があります。

アメリカにしか関心のないアメリカ人の多くは、
アメリカの大学の授業料の高さは異常だということを知らない・・・

例えば、アメリカのとある私立大学の説明会で、同大学は留学を積極的に勧めているという話を聞きました。「留学中の海外での学費は、授業料の中に含まれていますので、心配ありませんよ」と言われ、思わず・・・

留学中の海外の学費はこちらで負担しますので、
その期間の授業料はナシにしてくれた方がありがたい!

と、心の中で呟きました。世界中、どこの国の大学に行っても、アメリカの大学以上の学費を支払うような事態には絶対にならないからです。そんな風に自信を持って言えるほど、アメリカの大学の授業料はマジで高いっ!

ただ、このようなセールストークが通用しているってことは、おそらくその事実に気がついていない人が多いのだろうなっと思います。アメリカの大学の授業料の異常さを知れば、おそらく解決すべき問題は、学生ローンではなく、その原因となっている授業料だとわかると思うのですが、そこを指摘する人は少数派です。ここからは、私の仮説です。アメリカ人がアメリカの大学の授業料の異常な高さに気がついていない人が多いのには・・・

大学の授業料は高額であった方が都合が良い人がいるから。

なんていうと、途端に陰謀論臭がしてしまうのですが、今のアメリカは、”稼げるが正義!”です。そんなアメリカに追従しようとしている今の日本も、”やばい噂はお金で揉み消すことができる”一方で、”お金があるところのやばい噂を表沙汰にしようとする人は色々な権力を使って徹底的にやられる”と国なんだな〜ということがあったかと思います。”稼げるが正義!”という歪んだ資本主義社会で暮らしていることは、残念ながら、陰謀論ではなく、事実です。この件については、後ほど深掘りしていきたいと思います。

入学時点での問題点

”アメリカの大学は入学しやすい”ーーこれもやる気のある人を広く受け入れているような印象で、一見、良いことのように思えます。とは言え、繰り返しになりますが、一旦入学してしまうと、卒業できないことには、学生ローンの問題がより重症化してしまう危険があります。

ここにアメリカが抱える別の教育問題も大きく関係してきます。アメリカ全土で、高校卒業時の学力レベルが著しく低下しているのが別の大きな問題です。カリフォルニア州でこの問題に取り組んでいる方の話によると、大学に入学したものの、読み書きのレベルが、大学での学問を理解するために必要なレベルに明らかに到達していない学生も出てきているそうで・・・。

この話を聞いて思い当たるのが大学卒、大学院卒の同僚がSNSレベルの読み書きは得意であっても、ある程度以上のボリュームがある文章については、外国人で英語を得意としない私よりも理解していないことが度々あることです。読む気がないのか、読めないのかわかりませんが、コロナに関する一般公開された情報についても、目を通している人の少なさに驚きました。専門外なんて言っていられない、命に関わる重要な情報であるにも関わらず、です。ただ・・・この話を聞いて、思い出したのが、スペルチェック機能がついているWordで文章を作っているにも関わらず、スペルミスがいくつも残されたままの文章を送ってくる同僚のことです。しかも、1人や2人ではなく・・・。Wordが指摘するスペルミスをそっと直して作成者に送り返した後、再び、彼女が正しいと信じる誤ったスペルに修正された文章をクライアントに送ってしまうような人もいました。

なぜ、このようなことが起こるか?といえば、州によっては、ライティングテストで、スペルの正確さを採点しないこともあるからだと言います。これは推測になりますが、スペルを重視しないのは、中学、高校の数学で電卓を使うことが認められていることと同様、解き方や読み方という学習に必要なメソッドを理解してさえいれば、計算やスペル等の小さな間違いは問題なしと考えているのではないかと。
しかし、実際には、暗算能力が恐ろしく欠けていると、数字を使って考えるという能力が育たないし、スペルの正確性は読解力、文章作成力の両方に影響してくると言われています。ちなみに、どの言語でも起こることですが、会話ができる能力と文章を読み書きできる能力は別物です。音で理解できる単語でも、スペルに自信がなければ、読もうと思える文章に限りが出てきますし、スペルに自信がある単語のみで文章を作成しようとすると、表現力にも限界が出てしまいます

もう1つ、子どもの学力低下に直接関わってくる問題は、これまた全米全土で起きている”教師不足”の問題が大きいかと思います。教師資格が全て揃っていない状態で教壇に立っている教師は、多数ではありませんが、結構います。他の教師が教えている動画を見るように、子どもたちに推薦してくる教師もいました。ちなみに、アメリカの公立学校は、住んでいる場所で学校が決まります。全てのレベルの生徒がどうやって1つの高校で勉強するのか?といえば、大学の授業に違いシステムになっています。各科目が1〜3くらいのレベルに分かれていて、大学の専攻を考える上で役立ちそうな専門科目も充実しています。上級クラスは履修できる成績要件があるものの、授業の選択は日本よりもかなり自由度が高くなっています。一部の上級クラスは、高校での単位がそのまま大学の単位として認められることもあり、制度としては、日本よりもかなり優れたものだと思います。が、ここでも問題は教師不足。そもそも高校レベルの教科を教えられる教師が不足している状態にも関わらず、大学レベルの科目を高校で教えようとする教師はもっと不足することに。そして、このような公立高校での教育が嫌であれば、私立に行くか、ホームスクールにするということになります。

全米共通の大きな課題:子どもの学力低下

子どもたちの学力低下については、何もよそ者のおばちゃん(=私)が「今時の若者は!」と老害的なぼやきをしているわけではなく、アメリカ国内の中でも大きな問題となっていることです。学校教育に関して、今回、シェアさてていただいた以上の、さまざまな問題が指摘されているものの、アメリカ全体で向かっている方向としては、低下した学力の方を基準にして、学校卒業に必要とされる学習能力の要件の方を下げるという措置。このような誤った措置により、十分な学力が身についていない子どもでも、高校を卒業し、大学に入学することが可能になってしまっていると言います。

ここで先に指摘した、”卒業しにくいアメリカの問題点”のことを思い出してください。多くの学生がローンを使って超高額な授業料を支払い大学に行くのです。”入学しやすく、卒業が難しい”というアメリカの特徴に、アメリカの学生の現状を付け足すと・・

十分な学力がないにも関わらず、入学しやすく
超高額の学生ローンを組んだにも関わらず、卒業が難しい

ずっと甘々で育てられてきた子どもたちが、成人するかしないかくらいの年齢でいきなり厳しすぎる現実の中に放り込まれてしまうのです。

自分の実力は自分がよくわかっているだろうから、
無理して大学に行かなければ良いのでは?

と思う方もいらっしゃるかもしれません。ここで前回のコラムでシェアさせていただいた”アメリカンドリーム48”を思い出してください。アメリカには、”高学歴を手に入れれば、成功が手に入れられる”という”アメリカンドリーム48”があります。しかし、これは昔あった”アメリカンドリーム”とは違うもので、”少ない努力でより稼げることが正義”という考えがベースです。入学資格を得た学生は、高額なローンを組んででも、大学に行くことが奨励されます。

もちろん、日本でもビリギャル(全然勉強をしていなかった子が慶應義塾大学に合格)のようなケースもありますが、あの子は勉強をしていなかっただけで、最低限の基礎学力はあったのだと思います。ホリエモンをはじめ地頭が賢いYouTuberたちの中には、学校教育を否定する人も少なくありませんが、賢い地頭を持ち合わせない一般の人間にとっては、ある程度の基礎学力を身に付けられるような訓練は必要だと思います。と、思うようになった根拠が現在のアメリカの教育の実態です。アメリカの教育は素晴らしい点もたくさんあります。能力のある子がさらに能力を伸ばすという点では、アメリカの教育はかなり優れています。トップ20%なのか5%なのかわからないのですが、トップクラスの子どもたちには、勉強面でもスポーツ面でもさまざまなチャンスが与えられています。しかし、それ以外の子は・・・

よほど本人や親が意識しなければ、
”自分で考える”ために必要な基礎学力の習得でさえも危うくなるのではないか?

基礎学力・・・、例えば、「Sで始まる国の名前をあげて」と尋ねられた時に、Sで始まる国が1つも思い出せなかったとしても、日本で「島根!」とか「清水!」とか回答する人はいないかと思います。しかし、アメリカでは国名を尋ねられているのに、「マサチューセッツ(州名)」「ベニス(都市名)」「ビーナス(惑星名)」と回答してしまう人が度々動画で晒されてしまうことも・・・。

そんなことネット上のエンタメだろうと思っていたのですが、身近なケースとしてもこの手のことは珍しくないようで・・・。お友達のお子さんが「アジア出身なの?」と尋ねられ、「アジアと言われたら、アジアだけど、出身は中国だよ」と答えたら、「え?アジアって国名じゃないの?」とびっくりされたことがあると話してくれましたから・・・。この手の話は、極端な例ではあっても、ネタではないようで・・・。

仮に、アメリカの高校生がシンガポールやブルネイの位置をきちんと理解していなくても、問題ないかと思いますが、自分の国の州の名前や惑星の名前を”国名”として挙げるのは、単純に暗記が苦手とかいう問題ではなく、”国”という概念を理解しているのか?心配になります。最近、リベラルエリートたちが唱える”正義”の1つには、「国境を廃止してグローバルに・・・ウンタラカンタラ」というものがありますが、”国”が何かわかっていない人に国境を廃止することがどういうことなのか、きちんと理解できているとは思いません。

実際、不法移民問題で、テキサス州が不法移民を彼らが希望するリベラル州に送り込むことに対して猛烈な批判をしていたニューヨーク州が、自らが受け入れ不可能
なほどの不法移民が押し寄せたことを受け、今度は彼らをカナダに送り込むような措置を行なっているという報道がありました(不法移民と、自称・人権重視のリベラル州の正体とは?:アメリカ不法移民問題)。ニューヨーク州の対応は、テキサス州のそれと意味合いが全く異なります。不法移民に再度国境を越えさせることになるのですから。ニューヨークの対応が国際問題になっていないのは、アメリカもカナダも共に左翼政権だからでしょう。

こんな政策を考え出すニューヨーク州政府も、それを支持する州民も、大変失礼ながら、”州から州への移動”と”国境を越えた移動”の違いが理解できていないのではないか?と疑わざるを得ません。動画に出てくる「アジアの首都はベトナム!」という若者の延長線に、リベラルエリートがいるのではないか・・・とも。繰り返しになりますが、私はあるアメリカ人が”ベトナム”という国の名前を知らなかったとしても、それは大きな問題ではないと思います(たまたま例に挙げたのがベトナムでしたので、アメリカ人ならばアジアの中でもベトナムについては知っておかなければならないという気持ちはありますが)。ただ、国が何か?州が何か?という理解ができないまま、”ベトナム”や”アジア”という単語を記憶した生徒が続出するような教育は問題です。基本的な概念が理解できていないからこそ、”国境を越えた交流、助け合い”の重要性を、”無法地帯を拡大すること”で実現できると勘違いしている、それが米国の現政権であり、それを支持するリベラル・エリートたちです。

入学しやすく、卒業しにくいとどうなるのか?

繰り返しになりますが、基礎学力がない状態の子どもは、「努力すれば何とかなる!」という根性論だけでは、大学受験や大学レベルの学習をクリアすることは難しいと思います。自分が家庭教師をするとして、”マーキュリーを国だと考えている子”や”3X3X3の計算ができない子”を担当する場合、どれくらい学年を遡った学習をさせたら良いのか、大学受験レベルにまで持っていくのにどれくらいの時間がかかるのか・・・全く想像がつきません。

もちろん、日本にも同様の問題はあるかと思います。しかし、問題はやはり授業料です。州立大学でも、日本の私学よりもはるかに高額。卒業資格を得られずに、ローンのみが残った時のリスクが大きすぎます。基礎学力のレベルが足りていない学生を入学させることは、かえって若者の明るい未来を奪う懸念があるのではないか?という気がしています。では、卒業しやすくすればいいのでしょうか?それも違うと思います。アメリカの大学が今のステイタスを保つためには、”卒業しにくい”を続けるべきだと思います。ただ・・・

大学の授業料をもう少し何とかしては?

大学の授業料が高額だと得をする人

アメリカの大学のマーケティング

”高額な授業料で得する人は誰か?”の問いに、考えなくても断言できるのが、このシステムで絶対的に儲かるのが大学です。アメリカの大学が世界のトップに君臨できるのは、優秀な教授陣を集めることが可能な給与と潤沢な研究費によるところが大きいかと思います。それを支えるのが高額な授業料だと言われれば、それまでですが、大学は授業料以外にも、政府からの補助金や企業や個人からの寄付金という大きな資金源も有しています。ちなみに、アジア系受験生VSハーバード大学の裁判で、アジア系受験生が入学時の不当な扱いについて、私立大学であるハーバード大学と争うことができるのは、同大学に連邦政府の資金が使われているためです。
起業した卒業生等が莫大な寄付をした学部は、教育内容の充実ぶりが途端にアップし、ランキングも上昇するという話も聞いたことがあります。

にも関わらず、高額な授業料はなぜ必要か?と言えば、そこは完全にビジネスの話です。卒業資格の価値が世界的にも認められているアメリカの大学は、”高額な授業料を支払ってでも卒業したい”という、かなり大きな留学生マーケットが存在します。

高額設定でも入学したがる人は多いのだから、定価を高くしよう

みたいな感じかと思います。アジア系受験生VSハーバード大学で、”多様性を理由に、成績の良いアジア系アメリカ住民の受験生が入学しにくい評価システムをあえて導入する一方、アジア(特に中国)からの留学生は優遇する傾向にある”という矛盾について言及しましたが、この理由の1つは”$$”。

ハーバード大VSアジア系受験生
❶アジア系は学業成績は良いが人格に問題あり!?(2022年11月)
❷多様性を守るために、アジア系学生を制限!?(2022年11月)
❸アジア系差別の本当の狙いは・・・?(2022年11月)

過去のコラム

国内の学生よりも、留学生を優遇するのは、日本も同じですが、留学生相手に利益追求しているアメリカの大学に対し、日本の大学は、留学生を加えた学生数で、政府からのお金=国民の税金を当てにしていますから・・・日本は本当に何をやっているのか・・・。

では、アメリカ国民に対する授業料はどうか?というと、ここには日本にはないアメリカ特有の支払いシステムがあります。高額な医療費の支払いにも通じるものですが、定価からの割引があるのです。最も大きな割引は低所得者向けのものですが、これは奨学金とは別です。一般家庭はどうすれば良いか?と言えば、とにかく奨学金を探すことだと言われています。奨学金はスポーツと勉強、特定の人種や民族向け・・・と、いろいろあるようです。”○○戦争で戦ったベテランの子孫”のような奨学金が取れたという子もいました。子どもの学費を貯めるための投資商品もありますし、それでも足りなければ、学生ローンということになるかと思います。

とにかく、”取れるところからお金を取ること”、そうすると、”そのお金を使って、優秀な学者や学生を獲得する”ということができます。すると、”優秀な学者や学生による素晴らしい研究成果は、大学の評価をあげることに繋がり”ますが、”大学の評価が上がれば、企業や政府等からのさらなる研究費の確保が可能”です。このアメリカの大学の仕組みを真似しようとしているのが、私は中国の大学だと思います。中国の大学は、かなり高額な給料や破格の待遇を提示して、世界中の優秀な研究者の引き抜きをしています。

ここは評価が本当に難しいところなのです。というのは、このようなアメリカの大学のビジネスモデルは、アメリカの大学を世界トップクラスに君臨させ続ける不可欠な要素であるというポジティブな側面があります。その一方で、”多額の資金があれば、学問を変化させることができる”というネガティブな側面もある・・・とここでは、不穏な表現について詳しく言及しませんが、これについては、今後、別のコラムで回収していきます。

”アメリカンドリーム48”の支持者

高額な授業料が留学生マーケットのビジネスで有効とはいえ、この定価はアメリカ人にも適応されるわけですから、海外(アメリカ以外)では考えられないような高額な授業料がそれほど問題視されていないことに疑問を感じることもあります。

授業料が高額だと、大学以外で誰が得するのだろう?を考えた時に、行き着くのが・・・

”アメリカンドリーム48”
従来のアメリカンドリームとは異なる”儲かる仕組み”を取り入れたビジネスモデル
が存在するから。

このアメリカンドリーム48(■げるが正義!リベラル・エリートとは?)の流れに乗ってしまえば、ある程度豊かな生活が保障されることになります。ならば、一時的に大きな負債を抱えても、”授業料の高さに抗議する”なんて余計なことに時間を取られることなく、”良い波”に乗ってしまった方が”賢い生き方”だからです。

当然ながら、この”アメリカンドリーム48”の波に乗った人は必ずこの仕組みを支持します。そして、この仕組みがアメリカで”正解”とされるのは、この波に乗った人がアメリカを牽引する層ーーいわゆるエリート層ーーだからです。

念のため、エリート層には、そこに辿り着くまでのアプローチが異なる2つのグループが存在すると考えています。1つは自分で考えることができ、自分の考えを持ったエリート、もう1つがアメリカンドリーム48の波に乗り、”権威のいう正解”に疑問を持つことなく賢く世の中を渡り歩いてきた”リベラルエリート”です。このコラムシリーズを通して、問題視しているのは、後者のリベラルエリートです。

リベラルエリートは”アメリカンドリーム48”の仕組みに疑問を持つことは、通常の状態ではまずあり得ません。アメリカンドリーム48を否定することは、今ある自分自身を否定することになるからです。彼らにとって、大学をはじめとする権威がいうことは、正解でしかあり得ないのは、ここが否定されてしまうと、彼らのこれまでが全て否定されてしまうことになります。コロナ騒動時に、リベラルエリートたちは「CDCやファウチ博士のいうことはコロコロ変わって、よくわからない」と言いつつも、”新型科学”(ファウチ博士を始めとする科学の権威を自称する人たちが風潮した偽物科学)を唯一の正解とし、それ以外の科学の選択肢を全否定し、陰謀論としました。このような態度の根底にあるのは、権威が否定されると、自分達がエリートである証となっている”アメリカンドリーム48”の存在自体が危ぶまれる懸念があったからではないかと考えています。この点が自分の考えを持ったエリートとの大きな違いです。

そして、そのようなリベラル・エリートたちに、”アメリカンドリーム48”に対するいかなる疑問も否定するような、依存性をもたらす要因となっているのが”高額な学費”ではないかと思います。自分が投資したものーー資金、時間、努力ーーが大きければ大きいほど、投資物に対する執着が高まるからです。

大勢の人が真似できない大きな投資をしたものだけが、学ぶことが許された大学。
そこで学んだ”権威のいう正解”は、唯一絶対的な正解であり、
”権威のいう正解”を手にした自分は特別な人間である。

・・・という感じでしょうか。

お金の問題が解決できた彼らにとっては、”大学の授業料が高額であること”は、同じレベルの学力を持ちつつも、お金の問題を解決できなかった競合者を排除できるため、彼らにとっては有利な状況となります。・・・アメリカで大学の授業料の高さが思いのほか問題になっていない(私は大多数の連邦議会議員が問題視しても良い問題だと思う私からすると・・・)のは、大卒のアメリカ人にとって、子どもが高額な授業料を支払って大学に行くことは、それは”家計の問題として、解決しなければならない問題”であっても、”アメリカの教育問題”として捉えていない人が多いからではないでしょうか。

この大学の授業料が高額だと得をする人については、次の章の最後にも、もう一度触れさせていただきたいと思います。

”特権”を子ども達に引き継ぐ方法としての大学

大学入学が有利になる特権

自分が苦労して獲得したものは、できるだけ多く子どもたちに継承したいというのは、親であれば大なり小なり考えることではないでしょうか。それは何も資産や同族経営の会社だけではありません。

  • 海外で出産することで、子どもに複数の国籍を持たせようとする親

  • 「ビジネスの権利は子に引継げる!」と会員獲得に必死のネットワークビジネスの人

  • チームのコーチになり、子が有利になるようなポジションにつける元スポーツ選手

念のため、悪口ではありません。そういう方法で、子どもに”資産”を残す方法もあるのだなっと思ったことがあるものを挙げてみただけです。とはいえ、最後の2つは色々揉めそうですから、資産だけではなく、揉め事含めての継承になるかと思いますが。特に最後に挙げた事例は、子の実力が伴えば問題ないのですが、結構、色々聞きます・・・というか、アメリカは”フェアネス”に厳しいという割には、結構大段にやっちゃう親が少なくないのね〜と思うほど。やっちゃっている人の意見としては・・・

「”親がコーチである特権”を生かして何が悪い!」
(これは実際にコーチが子ども達に放った言葉)

友人からこの話を聞いた時、個人的な考えとしてもちろん私も「そんなコーチを野放しにしているチームは離れた方がいいんじゃない?」と言いました。しかし、これをアメリカ事情として考える場合、例えば、ハーバード大学の入学プロセスでは、”卒業生の子ども””職員の子ども”、そして、特に”大口寄付者の子ども”は、優遇されることが周知の事実となっていますから、ここではそのような特権に腹を立てる人がいても、社会としては受身的に許容されていることなんだと思います。

■ハーバード大学VSアジア系受験生❸アジア系差別の本当の狙いは・・・?(2022年11月)

上記のコラムでもシェアさせていただいていますが、長いこと、黒人・ヒスパニックの受験生と、アジア系受験生との対立問題として語られてきた”アジア系受験者VSハーバード大学”ですが、実は、アジア系受験者の権利を本当に奪っているのは、むしろ”特権階級に属する白人受験者”ではないか?という問題が指摘され始めました。裁判の結果はまだ出ていないところですが、この問題に最高裁が触れただけでも、私の中のモヤモヤは少し晴れた気がします。というのも、これまでのリベラル・エリートの意見としては・・・

大口寄付者のおかげで、
授業料が満額支払えない貧しくも優秀な学生の入学も許可できるわけだから、
寄付者の子どもの入学は、優遇されて当然。

というのが主流だったからです。ここにも、”一見すると正論でも、総合的に見ると・・・”が潜んでいます。というのも、リベラル・エリートは、同時に”ノブレス・オブリージュ(上級階級の人間は相応の社会的な義務や責任があるという道徳観)”の重要性についても説いてくるからです。

社会にお金を還元するという尊い行いをしたいのであれば、自分の子どもの入学が優遇されることを遠慮するべきではないでしょうか。でなければ、”社会に還元”は成り立たず、”自分の子の入学の権利を購入した”ということになってしまうからです。実際、アメリカでは大口寄付者の子どもの特別待遇入学のことを”裏口入学(バッグドア)”と表現します。しかし、これは犯罪にはなりません。罪を問われるのは、”通用口(サイドドア)”と呼ばれる、裏口よりも少額で実現する個別の教授、職員に賄賂を贈る形。こちらは逮捕案件です。

アメリカ大学入試スキャンダル事件勃発と現在、KK問題アップデート、ほか(2021年11月)

”裏口”が良くて”サイドドア”がダメな理由も、理解できるといえば、理解できますが、真面目に受験する方にしてみれば、両方ダメじゃんと思うのですが・・・。ただ、個人がどのように感じようと、社会としては裏口はOKなのが今のアメリカです。

というわけで、一般的に”社会的に恵まれた家庭”に所属する子は、アイビーリーグ等、卒業証書が高給を約束してくれるような大学入学資格が得やすくなっています。そして、そのような世界的にもトップクラスの有名大学を卒業すれば、高給を得ることができる職を得やすくなり、その人物の子もまた”社会的に恵まれた家庭”にある特権を享受することになり・・・・。

逆転が起こりにくい社会

得する人がいれば、必ず損する人がいるのが資本主義社会。

そして、損をしている人というのが、私は貧困層だと思います。アメリカンドリームとして本来期待されているストーリーは、貧困層の子どもたちが勉強やスポーツで努力をし、抜きにでた成績を収め、ビジネス界やスポーツ界で活躍し、人生、大逆転する!みたいなものではないでしょうか。しかし、アメリカの教育の現場を見ていると、こういった大逆転が起こることは本当に奇跡でしかないんだろうなという気がしています。

繰り返しになりますが、アメリカでは教師不足が深刻です。そのような状態では、質の悪い(担当科目を教えることができない)教師、資格のない教師も教壇に立つことになります。アメリカの教師の給料は、他の職業同様、交渉で決まりますから、高い給料が支払える学校、言い換えれば、高所得者が多く潤沢な税金がある地域ほど、良い先生を確保できることになります。逆に、問題を起こし行き場を失った教師がどこに行くか?といえば、貧困エリアの学校です。教師が担当科目を教えられないという場合でも、個人のパソコンやスマホ等を持っている子どもは、ネット上から教材を探して、自分自身で学ぶことができます。しかし、持っていない子は・・・?

もちろん貧困層からの大逆転は絶対無理とは言いません。どういう状況下であっても、自分の人生を決めるのは、最終的には本人の努力次第。とは言え・・・限界はあるだろうと思うようになったのは、日本以外の国に住むようになってからです。日本の教育では天才は育ちにくいかもしれませんが、最低限の学力や運動能力を身につけられるよう”引き上げる”という点では、落ちこぼれを作りにくくなっているように思います。

貧困エリアの学生との接点は、スポーツの試合観戦の時しかありませんので、学業ではなくスポーツの話になりますが、そのスポーツをするにあたって、一般的に”恵まれた体格”であるにもかかわらず、その体を全く使いこなせていない子は多く見かけます。そのエリアでの家庭環境を考えれば、学校のスポーツに参加できるだけ恵まれている状況だとも・・・。ちなみに、高校が要求する最低限の学力がなければ、特定のスポーツがどれだけできても、学校のスポーツチームに所属することはできません。

学生アスリートは、学業ありきだから。

これは本当にごもっともな話です。しかし、スポーツ選手になるにも、年に数十万払ってクラブチームに所属するか、学校のチームに所属するかしなければ、大学のスポーツチームに所属したり、プロになる道がほぼほぼ閉ざされてしまうことになります。この状態から、どうやって”人生大逆転”を起こせば良いのでしょうか?アメリカの特定層では、昔ながらの”アメリカンドリーム”を、夢みることさえ難しいということもあるのではないかと思います。

このような状況下の子どもたちと、前章の”大学入学が有利になる特権”に出てくるような状況の子どもたちと、比較してみてください。「人生はあなたの努力次第」ーーその言葉に間違いはないものの、それをすべての子どもに求めるには、越えるべき壁の高さがあまりにも高い子もいると思うのです。

そして、”高い壁”にぶち当たるのは、貧困層の子どもたちだけではありません。一般家庭の子どもたちにとっても、”高すぎる大学の授業料”は、”高い壁”。大学の意図せざることであっても、”高すぎる授業料”により、大学がある意味排他的になっている部分はあるかと思います。そして、そのことにより守られているのは、”高すぎる授業料を高いとは感じない層”。

繰り返しになりますが、大逆転の実現は、不可能ではありません。そういったサクセスストーリーがないわけでもありません。しかし、その可能性ということになれば、アメリカはむしろ”昔ながらのアメリカンドリーム”の実現が難しい状況になっているのではないかと思います。

そのような中で、大逆転を起こすために、推奨されているのがこのコラムシリーズでシェアさせていただいた、昔ながらのアメリカンドリームとは少し違った”アメリカンドリーム48”ーー自分で考え、試行錯誤するのではなく、権威がいう正解を闇雲に信じて進む生き方ーーです。

自分が”高額な授業料”という高い壁を越え、
大学卒業資格(またはそれ以上の資格)を得ることができれば
”アメリカンドリーム48”の特権を子どもたちにも引き継ぐことができる

リベラル・エリートが権威がいう正解を闇雲に信じるのには、自らが特権を手に入れたまでのルートがまさに”権威のいう正解”だったからです。特権を手に入れた人にとっては、特権を手に入れるまでの過程は、困難であればあるほど、自身の競争力を保つことにつながります。高額すぎる大学の授業料を、アメリカの教育問題として捉えないリベラル・エリートが多い理由はここにあるのではないかと思います。

余談:リベラル・エリートはなぜ自分で考えないのか?

コロナ騒動の中で、ファウチ博士をはじめとする”新型科学(コロナ騒動による利権集団)”の権威の発言について、「おかしい」と感じながらも、それを否定する考えについてすべて陰謀論として片付けていたのがリベラル・エリートたちです。”賢い”彼らがなぜ明らかな嘘に騙されたのか?その疑問に、自分自身で答えていく・・・というのがこのコラムシリーズなのですが、今回のコラムを書きながら、リベラル・エリートが”自分で考える”ことを重視するようなことは不可能に近いだろうなという気がしています。それは”自分で考える”ということが、ともすれば、自分の生きてきた奇跡や、人生設計を全否定することにもつながるからです。

米国共産党に乗っ取られた現在のアメリカをおかしいと気がついたアメリカ人は、たくさんいます。そして、2020年以降、陰謀論のレッテルを貼られてきた多くの”説”は、事実だったということが明らかになってきています。正直なところ、最初からおかしいと感じていた人たちにとっては、「今頃?」というようなテンポ感です。このテンポ感を遅らせている原因が、リベラル・エリートだと思っています。「なぜ、自分で考えてみようとしない?」とイライラすることもあるのですが、彼らにとっては、信仰している宗教を改宗するくらい大きなことなのかもしれません。

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