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アジア系差別の本当の狙いは・・・?:ハーバード大VSアジア系受験生❸

白人受験者 VS アジア系受験者

アジア系受験者は、白人受験者よりも不利な扱いを受けている!?

ハーバード大学 VS アジア系受験者(FSSA)の裁判では、アジア系学生と黒人、ヒスパニック学生を対立させる形で報じられているものが多いと思いますが、実は、アジア系受験生は、白人学生よりも不利に扱われていることもわかっています。

デューク大学のピーター・アルシディアコノ(同訴訟の原告側の鑑定人)、ジョージア大学のジョシュ・キンズラー、オクラホマ大学のタイラー・ランサムらにより、2014年から2019年のハーバード大学の入学試験データの統計分析が行われました。そこからわかったことは・・・

ハーバードは白人受験者を優遇し、
より優秀なアジア系受験者を差し置いて入学させてきた!?

この研究で注目されたのは、アファーマティブ・アクションではなく、人種配慮が行われていないはずの”アジア系受験者と白人受験者との待遇の比較”です。ここでもアジア系受験者は不利に扱われていたというのです。

2014年から2019年にかけた調査:アジア系の同大学への受験者は、白人受験者よりも著しく学力が高い

  • アジア系受験者よりも白人受験者の方が42.5%多かった。

  • 成績とテストの点数に基づく上位10%の受験者では、アジア系が白人よりも45.6%多かった(7,225人対4,963人)

  • 白人とアジア系受験者の選抜基準を学力のみとしていた場合、アジア系の入学者数は40パーセントも増えていたと考えられる。

同じ学力グループに所属する学生同士の比較でも・・・:

  • 上位7位までの平均では、白人の方がアジア系よりも合格する確率が20%高かった。

  • 同じ基準で評価されるはずのアジア系受験者よりも、学力的にはすべて同じでも、白人受験者の方が合格する確率がかなり高いということがわかった。

以上は、学業成績のみの比較です。そうすると、学業以外の要素、例えば、課外活動や人物評価の成績について、白人受験生がアジア系受験者よりも優れていたという可能性が浮上します。しかし、この可能性について、調査に携わったアルシディアコノは、「学業以外のほとんどの要素において、アジア系アメリカ人の志願者は白人の志願者と同等か、かなり強いということだ」と言及しています。

  • アジア系受験者は、課外活動や同大卒業生との面接からの評価でも白人受験生の評価を上回っていた

  • 教師やカウンセラーの評価では同程度のスコア

これはアジア系受験者と黒人受験者・ヒスパニック受験者を比較した時と同じことが起きているといえます。

ハーバードは没個性のアジア系がお嫌い?

では、なぜハーバード大学では、アジア系受験者よりも、白人受験者を優先的に入学させるのでしょうか?

では、なぜハーバード大学では、アジア系アメリカ人の強い(よりスコアの高い、評価の高い)志願者を不合格にし、弱い(よりスコアの低い、より評価の低い)白人の志願者を入学させるのだろうか?ハーバード大学によれば、彼らの個性はあまりにも淡泊なのだという。

陸上競技を除けば、人物評価がアジア系アメリカ人の成績が白人より著しく悪い唯一の基準であり、それ以外のアジア系アメリカ人の強い志願者が、弱い白人の志願者より不合格になる中心的な理由である。ハーバード大学の人物評価は、この訴訟の以前の判決によると、「小論文、推薦状、卒業生インタビューレポート、個人的・家族的困難、その他出願書類の関連情報を含む出願書類のあらゆる側面に基づき、出願者の個人的資質を要約したもの」とされている。入試担当者は、出願者の "ユーモア、感受性、気概、リーダーシップ、誠実さ、助け合い、勇気、優しさ、その他多くの資質 "についての評価に基づいて、個人的評価を付与する。

人物評価は曖昧で非常に主観的であるため、悪用される可能性がある。ハーバードの入試担当者は、応募者に1から6までの点数をつけるよう指示され、1が最高点である。各数値について:(1) 卓越している、(2) 非常に強い、(3) 全般的に肯定的、(4) 淡白またはやや否定的または未熟、 (5) 個人の資質に疑問がある、(6) 個人の資質が心配であるというコメントがついている。ハーバード大学では、志願者の”傑出した”あるいは”平凡な”性格について非常に主観的な判断を下す際の指針を、入学試験担当者にほとんど与えていなかった。

アジア系アメリカ人は、人物評価で日常的に低い点数を付けられており、全人種の中で最下位にランクされているほどだった。どうやらアジア系アメリカ人は、面白くない、勇気がない、根性がない、卑屈である、リードするのではなく、ついていくタイプであるらしい。

どうやらアジア系アメリカ人は、面白くない、勇気がない、根性がない、卑屈である、リードするのではなく、ついていくタイプであるらしい。」については、私も前々回のコラムで言及した内容ですが、多岐に渡った個人の資質を見るという人物評価で、特定の人種のみが最低点を取るというのは、あり得ないことだと思います。

アルシディアコノらの調査でも、

  • 白人受験者で人物評価で1、2(最高得点)を獲得した割合:21.27%

  • 同アジア系受験者:17.64%

  • ハーバード大学がアジア系受験者を黒人受験者と同等に扱った場合、1、2を獲得する確率は、約40%上昇するだろうと推定

と、統計数字でも、アジア系受験者の人物評価の低さが表れています。

白人学生の43%は、コネ入学!?

人種配慮議論の中でも、問題視された”ALDS入学”とは?

多くのメディアでは、ハーバード大学VSアジア系受験生(SFFA)裁判での注目点は、同大学が入試プロセスの中で行っているアファーマティブ・アクション(積極的な差別により、過去の差別に生まれた格差をなくそうとするもの)や、特定人種を優遇することで大学のダイバーシティを保つことだと報じています。しかし、実は、この公聴会の中では、ハーバード大学をはじめとするいわゆる”エリート大学”で行われている、もう1つの特徴的な入学方法、”ALDS”についても問題視する声が上がっています。

ALDSとはざっくり一言でまとめるなら、いろいろな形でのコネ入試制度と言えるかと思います。

ALDSとは?:

  • A:アスリート:大学側から勧誘されたアスリート

  • L:レガシー:卒業生の子ども

  • D:ディーン’s リスト:学長リスト(寄付者等)

  • C:チャイルド:職員の子ども

ALDSとは頭文字に当てはまる学生の入学が優遇される制度のことです。この制度で入学することがどれくらい有利になるのか?ということについて、次の章で見ていきたいと思います。

白人ALDC枠入学者の75%は、同枠がなければ不合格に!?

デューク大学のピーター・アルシディアコノ(原告側の鑑定人)らの調査:2014年から2019年のハーバード大学の入学試験データの統計分析では、アジア系受験者が不利な状況にある、もう1つの理由として、彼らが十分に恵まれた家庭の出身でないことを挙げています。

という疑問は一旦おいておいて・・・。

ハーバード大学では、社会経済的に恵まれている志願者を「ALDC」と呼んでいるといいます。実際、2019年のクラスでは、レガシー入学者の40.7%は、両親の収入が50万ドル(1ドル100円計算で5千万円、1ドル140円計算で7千万円)以上あるそうです。アメリカは超学歴社会ですから、レガシー入学者(ハーバード卒業した保護者)であれば、特に驚くことのないデータと言えます。そして、記事によれば、その大半は白人ということですが、これも特に驚きはありません。過去に白人が有利な社会があったことを考えれば、”レガシー”の制度があればその特典を引き継ぐことができるわけです。とはいえ、この制度を使って、白人ALDC枠受験者がどれくらい有利になるのか、数字で見ると、かなりびっくりします。

  • ハーバード大学受験者全体の入学率は約5.5%

  • 白人のALDC受験者の入学率は43.6%

合格(入学)率が桁違いに違います。さらに、アルシディアコノらの調査によると・・・。

  • 2014年〜2019年まで、ハーバードに入学した白人のうち43%はALDC枠

  • 白人のALDC枠入学者は、一般的な入学者よりも学力が低い

  • 白人のALDC枠入学者の75%は、この枠がなければ不合格になっていた可能性が高いと推定

  • アジア系受験者の97%は、ALDCのいずれにも当てはまらなかった。

  • ALDC枠を廃止すれば、白人学生の割合は6%以上下がり、アジア系学生の割合は9%以上上昇するだろうと推定される

アルシディアコノの推論:ハーバード大学に入学するための最良のルートの一つは、正しい家族の出身であること

ALDCのいずれにも当てはまらず、人種的な配慮も受けられない・・・アジア系受験者を今風に表現するなら、親ガチャ失敗している上、人種ガチャにもしくじっているということになってしまいます。そもそもこの”親ガチャ”という表現は、くだらないと思っていたのですが、そのくだらないことがハーバード大学で行われているのではないか?と考えられていること自体がとても残念です。

そもそもなぜこのような制度(ALDC)が認められているのか?それは

日本人の理解を超えた制度

ALDSとは?:

  • A:アスリート:大学側から勧誘されたアスリート

  • L:レガシー:卒業生の子ども

  • D:ディーン’s リスト:学長リスト(寄付者等)

  • C:チャイルド:職員の子ども

ALDSをシンプルに説明したものが上記の箇条書きですが、実際には、このシステムは、日本人的な視点で見ると、かなり謎に満ちています。4つの中で、理解しやすいのは、大学側から勧誘されたアスリートと職員の子どもではないでしょうか。後者は、”職員”というのがどこまでの範囲なのかわかりませんが、例えば、H様が某幼稚園に入園された際には、保護者であるK様が某大学の研究員(?)をされていたため、系列の幼稚園に優先的に入園することができたというお話があったかと思います。

前者は、日本でもスポーツ推薦等があります。しかし、アメリカの場合、人口の多さや国土の広さから、単純に素晴らしい選手であるだけではなく、さまざまなアピールをしてはじめてリクルーターの目に留まることになります。そのためには学校のチームだけでなく、クラブチームに所属することが必要です。そして、クラブチームに入るためには、トライアウトで合格し、年間数十万以上の費用と試合に行くための旅費等々も必要になってきます。トライアウトの合格を目指した合宿や、個人レッスン等、より上を目指すのであれば、その都度お金がかかってきます。
(*クラブチーム所属でなければリクルートされないというルールはありませんが、学校のチームが通年ではないため、いろいろな意味でクラブチームに所属していないと、リクルーターの目に留まることは難しいと言えると思います)。

他にも、アピールをサポートするビジネスは、色々あるようです。

その延長上の犯罪というか、この”アスリート”制度を悪用したセレブたちによる不正入学が2019年3月、事件化されました。子どもを有名大学に入学させるために、仲介者を通じて試験監督や大学のスポーツコーチに賄賂を支払うことで、でっち上げたスポーツ歴で子どもをリクルートさせたというものでした。訴追された30人以上のセレブ保護者の中には、人気ドラマ「デスパレートな妻たち」に出演したフェリシティ・ハフマンや、「フルハウス」のロリ・ロックリンら有名女優もいたといいます。また、スポーツ歴のでっち上げ方はかなり大胆で、トーナメントの結果を大げさに作るというようなレベルではなく、全くやったことのないスポーツで、一流の成績を納めたことになっていたようです。

■事件の詳細:
アメリカ大学入試スキャンダル事件勃発と現在、KK問題アップデート、ほか

上記のコラムでもシェアさせていただいていますが、アメリカの大学には3つのドアがあるとされています。

  1. フロントドア(正面口):正規ルートでの大学入学  

  2. バックドア(裏口):寄附金による入学 

  3. サイドドア(通用口):不正入学ルート

ややこしいのは、2と3の違いです。”D:ディーン’s リスト”に掲載された大口寄付者の子どもが入学することは、バックドア(裏口)として正式に認められていることです。しかし、先ほどのセレブたちのやり方は、3のサイドドアであり、不正入学となります。
サイドドアとバッグドアの何が違うの?といえば、起訴された不正入学スキームの中心にいた、ウィリアム・シンガー被告(進学カウンセリング会社経営)によると、彼のスキーム(サイドドア)の場合、バッグドアの10分の1の金額で済むそうです。受け取り先が大学と、教員個人という違いもあるかと思います。

1点、上記のコラムのアップデート情報としては、サイドドア事件に関わった教員は、もらった賄賂を個人で使ったわけではなく、部費に充てたようで、むしろ同情の声が集まっている・・・という話もあります。一方の不正を行ったセレブ保護者に対しては、「刑罰が甘すぎる」という声も聞きます。

ただ、この時にも「そもそもバッグドアによる入学もおかしくないか?」という議論があがってはいました。これに対し、バッグドアを支持者は、「多額の寄付をする学生の保護者のお陰で、経済的困難を抱える優秀な学生が学費免除(割引)等の特典を受けることができている」と主張しています。日本ではH様が某高校に入学されるにあたり、同校に多額の寄付が行われたのではないか?という疑惑があがっていますが、アメリカのエリート大学流の考え方だと、”アリ”ということになります。とはいえ、H様がいるのは日本ですから・・・。多額の寄付をしたら入学できるということは、日本では理解されにくいかと思います。

本当に守りたい(優遇したい)層は誰か?

ALDC入学枠に対する批判

もちろん、全てのアメリカ人ALDCは”アリ”と考えているわけではありません。先ほどの記事に戻りますと、「ここで重要なことがある。アジア系アメリカ人に対する差別として、ALDCの入学試験や人物評価に対して法的な挑戦をすることは、アファーマティブ・アクションやグラッターとは関係ない」と言及されています。

グラッターとは、学生の多様性を実現するために、人種的マイノリティに対し、公然と入試を有利にする大学の入試ポリシーの合憲性について扱ったものーー入学試験において人種をプラス要因として使用しても、それが学生の多様性というやむを得ない利益を促進するために狭く調整されている限り、憲法の平等保護条項に違反することはないーーです。

アルシディアコノが収集した統計的証拠は、アジア系受験者の人格評価における明確な人種的パターンを実証しているという主張が可能だといいます。それは統計から、下記のような事実が発見されたからです。

1)通常密接に関係している個人的な評価と学業的な評価で、アジア系受験生のみに起こる現象

  • 第10階層(成績優秀者)での、人物評価が最高(1、2)のスコアは、アジア系受験者の22.20%で、白人受験者の29.62%(白人が最高評価を獲得する確率はアジア系より33%高い)

  • 学力指数が高いほど、2以上の評価を受ける確率が高くなる

  • アジア系アメリカ人の場合、学業成績と個人成績の関連性はほとんどない

  • 第10階層(成績優秀者)のアジア系受験者よりも、6階層の白人受験者の方が、人物評価で最高評価(1、2)を取る確率が高い

2)人物評価に関連する観察項目で起きている不審なこと

  • 課外活動の評価など、人物評価の判断材料となるはずの観察可能な要素において、アジア系受験者は白人受験者と同等かそれ以上のスコアを出している

  • 活動そのものが個人評価での高得点の根拠となるケース(積極的な慈善活動等)でも、アジア系受験者の場合、課外活動評価での高得点は、人物評価での高得点に結びつかない。

チーム・ハーバード大学の反論と、それに対する反論

ハーバード大学側は、人物評価や入試プロセスのいかなる部分においても、人種的偏向を強く否定している。カリフォルニア大学バークレー校の経済学者であるデビッド・カードは、大学が委託した2017年の研究で、アルシディアコノの分析は、社会経済的背景、出願者の高校の質、個人エッセイなどの要素を無視していると主張した。数値化が難しいこれらの要素は、ハーバード大学の非学業的資質の評価に含まれるため、アルシディアコノのデータに基づくアプローチには当てはまらない、とカードは主張する。

https://washingtonmonthly.com/2022/10/30/harvard-affirmative-action-asian-americans-supreme-court/

ノーベル賞受賞経済学者に対して、そんなことをいうのはおこがましいと、ハーバード大から叱られそうですが、いろいろ・・・どこからツッコんだら良いのか・・・。

まず、個人エッセイ等、数値化が難しい要素は、データに基づくアプローチが向いていないということはわかります。しかし、その数量化が難しい個人エッセイ等から、”入試担当者が出願者の "ユーモア、感受性、気概、リーダーシップ、誠実さ、助け合い、勇気、優しさ、その他多くの資質 "についての数値化する”というのがハーバード大学の人物評価です。だからこそ、先ほどの記事でも、「人物評価は曖昧で非常に主観的であるため、悪用される可能性がある」と指摘していたとのだと思います。

例えば、人物評が大きく分かれる人物にトランプ大統領がいますが、彼は強いリーダーなのか、傲慢な独裁者か、ということは、個人の政治的思想や立場の影響を受けた”主観”で評価が分かれるものであると思います。トランプ大統領のリーダーシップについて点数を付けろと言われても、「(1) 卓越している、(2) 非常に強い、(3) 全般的に肯定的、(4) 淡白またはやや否定的または未熟、 (5) 個人の資質に疑問がある、(6) 個人の資質が心配である」のどれを選ぶかは、点数を付ける個人によって(1) も(6) もあり得る話。つまり、対象者の性格を数値化する際には、必ず評価者のバイアスがかかってくるわけです。さらに、ハーバード大学は、例えば”(1) 卓越している”と、”(2) 非常に強い”との違い等を明確に示していなかったといいますから、同じエッセイや課外活動の成果を見ても、優れた度合いの評価が試験官Aと試験官Bで異なる可能性も十分にあります。

アルシディアコノのデータに基づくアプローチがおかしいというのであれば、ハーバード大学の人物評価システム自体もおかしいわけです。

もちろん、大学入試にあたって、人物評価が全く意味をなさないものとは思いません。ただ、入試担当者の主観が入る部分であることは必ず考慮するべきで、人物評価のスコアは、校風を破壊しかねないような、あまりにもひどい学生のみ足切りで使うとか、合格点ギリギリにいる学生の合否判定、もしくは人物評価をメインとした合格枠を設けるといった、限定的な使われ方が望ましいのではないでしょうか。

しかし、今回の人種的格差が問題であると思うのは、人物評価が入試の重要な要素になっている点です。調査を行ったアルシディアコノによると、個人評価は入学と強い相関関係があるといいます。

  • 白人の入学者の84%が人物評価で2点以上(最高得点が1)を獲得

  • 白人の不合格者の18%は人物評価が2点未満

この2つのデータは、白人学生について限定的に言及したデータですので、まだ少しぼんやりするかと思います。そこで一度、人種を絞り込む前の、ハーバード大受験者全体のデータを見ておきたいと思います。

人物評価で1または2を受けた志願者は全体の20%未満だが、入学者全体の80%近くを占めている。

人物評価で1、2という最高得点を取れたのは、受験者全体のわずか20%に過ぎないのですが、合格者の8割は人物評価の最高得点者ということを考えれば、人物評価で最高得点が取れれば、合格がかなり近いと考えられます。

ただ、これだけで人物評価が重視されていると決めつけるのは、早計です。一般的に”学業成績や課外活動の成績優秀者は人物評価も高い”と言われていますから、それを示しているだけかもしれません。しかし、これに対しては、前々回、シェアさせていただいた、「アジア系受験者のみがなぜかこの一般論(”学業成績や課外活動の成績優秀者は人物評価も高い”)に当てはまらない」という疑惑が出ています。

加えて、先ほどの白人受験者のデータです。受験生全体の2割にしか与えられない人物評価の最高スコアですが、分母を白人受験生に変えると、8割超が最高スコアを獲得することができるというのです。

白人受験者に対する、ハーバード大学の人物評価の高さが一目でわかります。つまり、ハーバード大学弁護士が言うところの、同大にとってのオーボエ奏者は、白人を中心としたALDC枠に当てはまるような富裕層の親を持つ学生なのではないでしょうか。

そして、これはそのようなデータがあるわけではないので、あくまでも邪推ですが、アジア系受験者に対するバイヤスが取り除かれることで、合格者が少なくなるのは、むしろ、ALDC枠だったりして・・・。

アメリカ人の意見

デューク大学の教授らが行った調査や、先日の最高裁の公聴会で行われた議論を中心に、ここ40年にわたって起きてきたアジア系受験者に対する不当な入試プロセスについてシェアさせていただきました。とはいえ、自分が日本人だからアジア系が有利になるような議論を展開しているのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ハーバード大学サイドの学生デモの様子はメディアで多数報じられているかと思いますので、それ以外のアメリカ人の意見を最後にシェアさせていただきたいと思います。

とある黒人法学教授の意見

まず、最高裁判事はほとんど白人です。先日の公聴会では、アジア系ではない最高裁判事らが、ハーバード大学の弁護士に対して、鋭い質問を繰り返していました。さらに今回、引用させていただいた記事の筆者は、黒人の法学教授レジナルド・C・オーです。本当にこの方の言われている通りと思いましたので、一部抜粋して抄訳したものを、シェアさせていただきたいと思います。

Affirmative Action for Lax Bros(2023年10月30日)

もし、最高裁判事がアジア系アメリカ人受験者を不当な差別から守ることを重視するならば、ハーバード大学が白人志願者に有利なアジア系アメリカ人志願者の偏った評価のパターンを行っていたとし、ハーバード大学に人物評価の廃止か修正を要求すべきだろう。他の人種グループが、アジア系受験者よりも人物評価で高く評価されることによって不当に利益を得ている限り、人物評価を修正することによってその害もなくなるだろう。人種は、個人の人格を評価する上で、何の役割も果たすべきではない。
また、判事たちは、ALDCの入試制度が不当な差別であると宣言し、ハーバード大学にその廃止を要求すべきだ。そして、もし司法長官が、高等教育において十分に代表されていない人種を確実に取り込むことにも関心があるのであれば、グラッターを支持すべだ。アジア系受験者を人種的偏見から守ることと、代表的でない人種集団の参加を促進すること、その両方が可能なのである。

Affirmative Action for Lax Bros

大学入試プロセスに対する意見調査

テレビ報道等では、「大学のダイバーシティを守れ!」というようなデモをしているシーンがより多く目に見るかもしれません。しかし、ピューリサーチセンターが2022年3月7日から13日にかけて実施した、大学入試プロセスに対する調査によると、多くのアメリカ人は、成績と標準テストのスコアを大学入試で考慮されるべき一番の要因と回答しています。そして、この傾向は、2019年から変化していないとのことです。
ちなみに、ピューリサーチセンターは、ファクトチェッカーがよくファクトチェックの根拠として利用するものですので、建前上”中立”ということになっていますが、左派です。ハーバード大学VS FSSA(アジア系受験者)の裁判では、アファーマティブ・アクションやダイバーシティ推しであるのが左派ですので、左派の調査ですら、下記のような結果が出ているという点を頭の隅に置いていただいて、見ていっていただければと思います。

入試の決定において考慮されるべき3大要因:

  1. 93%:高校の成績(主要因:61%、マイナー要因:32%)

  2. 85%:標準化テストのスコア(主要因39%、マイナー要因46%)

  3. 67%:コミュニティサービスへの参加(主要因19%、マイナー要因48%)

その他:

  • 46%:家族で初めて大学に進学(主要因18%、マイナーな要因28%)

  • 45%:運動能力(主要因9%、マイナー要因36%)

  • 75%:レガシー入学を入学決定要因にするべきではない(2019年の68%から上昇傾向)

  • 成績と標準化テストが主要因であるべきだとする割合は2019年よりも減少

  • 高校の成績を主要因とすべき:67%(2019年)→61%(2022年)

  • 標準化テストの点数を主要因とすべき:47%(2019年)→39%(2022年)

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