2018年 高山市長選挙 開票後分析

2018年8月26日(日)投開票、岐阜県 高山市長選挙は、国島芳明 候補(無所属 現職)と 益田大輔 候補(無所属 新人 / 医師)の一騎討ちを、国島芳明 候補が制した。

2018年 高山市長選挙

当 国島芳明 25,866 無現 現職市長
落 益田大輔 19,361 無新 医師(須田病院 精神科 医長) / 金子俊平氏と今井雅人氏が為書

有権者数: 73,605
投票者数: 45,592
無効投票: 365
投票率: 61.94%

■ 選挙速報、選挙公報等(高山市役所)


 益田大輔 候補は、「子どもたちに夢のある未来をつくろう!」を掲げ、国島芳明 候補は、「希望ある輝くまち高山」を掲げた。

 益田大輔 候補の子どもに関する公約、政策は、東松山市長選挙の安冨歩 候補を彷彿とさせる。

 立候補者の両者が、「高山市には夢も希望も無い」ということを白状してしまっているといって良い。

 一体、なぜ、高山市には夢も希望も無いのか?


 高山市は、2016年のデータで、地域平均年間所得(税引後)が270万6,300円に対し、公務員年間所得(税引後)が451万6,445円であり、官民格差が1.67倍と、岐阜県の中で最も官民格差が大きい。

 さらに、2015年9月に高山市役所が発表した「高山市人口ビジョン(素案)」の43頁の中に、下記のような記述がある。

2.目指すべき将来の方向
(1)方向性1: 人口減少に歯止めをかける

①しごとの創出
 市民が安定して本市で暮らしていくためには、地域に根付いた産業があり、一定規模の地域経済を維持していく必要がある。そのため、本市におけるまち・ひと・しごと創生を進めていくうえで、産業振興は欠かせない視点といえる。

● 本市出身者の雇用の受け皿となる地域に資金をもたらす高付加価値産業の創出
 10歳代後半から20歳代前半にかけて、若年層が市外に流出したままの状態となっており、これら若者が返ってきたくなるような雇用の受け皿が求められている。
 大学等卒業後の若者が本市に就職できるよう、高付加価値産業の育成が必要である。

■ 高山市人口ビジョン(素案)(高山市役所 / 2015年9月)


 つまり、高山市は、公務員を目指している人以外の若者にとっては、経済的には魅力が無く、市外に若者が流出しているため、人口減少、少子高齢化、過疎化で夢も希望も無い、絶望の地域になりつつあるのだ。

 だから、益田大輔 候補は、「子どもたちに夢のある未来をつくろう!」、「子どもの未来は高山の未来」と主張し、子供に優しい政策を掲げたのだろう。


 今回の高山市長選挙では、当選者と落選者の票数差は、6,505票と数字上は僅差だったが、その僅差は高山市ではとても遠いものだった。

 なぜなら、高山市は、保守本流の牙城であり、かつ、投票率が高い地域だからである。


 高山市長選挙は、前回は無投票当選で、前々回の結果は下記の通りである。

2010年 高山市長選挙

当 国島芳明 26,134 無新 前高山市副市長
落 荒井信一 17,891 無新 前高山市副市長
落 中田清介  8,388 無新 前高山市議会議員(自民党系)

投票率: 70.35%


 高山市の直近の選挙の結果は下記の通りである。

2017年 衆院選 岐阜4区 高山市

当 金子 俊平 28,870 新 自民党
落 今井 雅人 16,546 前 希望の党
落 籠山恵美子  4,074 新 日本共産党

有権者数: 74,488
投票者数: 49,490
無効投票: 1,076
持ち帰り: 0
投票率: 67.88%
2017年 衆院選 比例代表 高山市

自民 20,399 (27.39 %)
公明 4,602 (6.18 %)
維新 1,683 (2.26 %)
幸福 417 (0.56 %)

希望 10,072 (13.52 %)
立憲 8,555 (11.49 %)
社民 442 (0.59 %)
共産 3,095 (4.16 %)

有権者数: 74,488
投票者数: 49,265
無効投票: 1,300
持ち帰り: 0
投票率: 67.88%


自民 + 公明 + 維新 + 幸福 = 27,101

希望 + 立憲 + 社民 + 共産 = 22,164

 比較対象として、全国平均も掲載する。

【 2017年10月22日執行 衆議院議員総選挙 (比例代表) 】
有権者数: 106,091,229
投票者数: 56,947,831
棄権者数: 49,143,398
投票率: 53.68%


自民 18,555,717 (17.49 %)
公明 6,977,712 (6.58 %)
維新 3,387,097 (3.19 %)

希望 9,677,524 (9.12 %)
立憲 11,084,890 (10.45 %)
社民 941,324 (0.89 %)
共産 4,404,081 (4.15 %)

日こ 85,552 (0.08 %)
大地 226,552 (0.21 %)
幸福 292,084 (0.28 %)
支持 125,019 (0.12 %)


■ 有権者数に占める得票数の割合 ( % )

自 + 公 + 維 = 27.26%

希望 + 立憲 + 共産 + 社民 = 24.61%

「自 + 公 + 維」と「希望 + 立憲 + 共産 + 社民」の差は, 2.65%.

 高山市は、2017年 衆院選において、投票率が全国平均よりも14.2%も高く、有権者数に占める自民党の得票率が27.39%と全国平均よりも9.9%も高く、立憲民主党よりも希望の党の方が得票数が多かった。

 また、高山市は、岐阜4区選出の衆議院議員だった、金子一義 氏(自民党 宏池会 / 元国土交通大臣)の地盤であり、自民党 岐阜県第四選挙区支部の事務所の所在地である。

 金子一義 氏は、大逆風だった2009年 衆院選でも、2位の今井雅人 候補に21,154票差で勝利した。

 つまり、高山市は保守本流の牙城であり、市民も保守的な傾向が強い地域であるといえる。


 今回の高山市長選挙では、国島芳明 候補には、自民党、公明党の組織票が流れ、特定の政党や団体の支援を受けなかった益田大輔 候補には、国民民主党、立憲民主党、社会民主党、日本共産党の支持者と、無党派の票が流れたとみられる。

 注目すべきは、岐阜4区から立候補した現職の衆議院議員である、金子俊平 氏(自民党 宏池会)と今井雅人 氏(国民民主党)が両者共、益田大輔 候補に為書を贈った点だ。

 金子俊平 氏は、藤井浩人 前美濃加茂市長が受託収賄罪等の有罪判決が確定した後、藤井氏を東京事務所の秘書として迎え入れるなど、興味深い行動をしているが、今回の行動もまた、興味深い。


 高山市は、「小京都」と呼ばれるように、古い町並みが残る観光都市であり、飛騨牛、飛騨けんとんのような高級な特産品、一位一刀彫、飛騨春慶、渋草焼のような伝統工芸品も生産している。

 それらは、非常に価値が高く、守るべきものだろう。

 しかし、それだけでは若者達を経済的にも、心理的にも満たすことはできない。

 2019年4月下旬に行われる、高山市議会議員選挙で、若者達を経済的にも、心理的にも満たすための政策を実行する政治家を誕生させることができるかどうか、注目である。


 高山市の自然公園地域(長野県 松本市との境付近)には、150℃以上、地熱賦存量 最大密度 1万~2万kW/平方kmの岐阜県内で最も豊富な地熱資源が眠っている。

 高山市の地熱資源を、岐阜県内の地方自治体が共同で開発し、地熱発電、地域暖房、温室農業に活用し、地熱発電の副産物である温泉水を利用して温泉業界を振興する等、高山市民の生活水準を地熱利用によって引き上げるのも1つの策である。

■ 地熱(150°C以上)ゾーニング基礎情報図(環境省)

■ 岐阜県 地熱資源開発に関する資料(濃飛新報)


 益田大輔 候補の陣営は、webサイト、ブログ、Facebook、Twitter、YouTubeを駆使して、現代的な選挙運動を行っていた。

 欲を言えば、twitcasting、Periscope、YouTube Live、Facebook Live等で、選挙運動を生放送すれば、もっと良かった。

 選挙期間外での情報発信が少なかったため、Twitterのフォロワー数が少な過ぎた点も課題である。

 益田大輔 候補の陣営は、今回の高山市長選挙で得た知名度を活かし、高山市、飛騨地方の重要な市民メディアとして、2019年4月下旬に行われる高山市議会議員選挙まで、情報を高頻度で発信し続けて頂きたい。

 今回の高山市長選挙は、高山市民にとっては、終わりではなく、始まりなのだから。


■ 益田大輔 候補 総決起大会での演説


■ 益田大輔と未来をつくる会(ブログ)

■ 益田大輔と未来をつくる会(facebook)

■ 益田大輔と未来をつくる会(twitter)

■ 益田大輔 PR動画(YouTube)

■ 益田大輔援会


■ 国島芳明 後援会公式 Blog


■ 岐阜県【全国市町村/官民格差/②公務員と民間の所得格差順ランキング】2016年版(乱濫嵐_ran @ranranran_ran


お読み下さいまして、ありがとうございます。