見出し画像

良品計画の23年8月期中間決算を分析

無印良品を展開する良品計画は4月13日、23年8月期の中間決算を発表しました。どんな結果だったか分析していきます。


早くも業績を下方修正、今期経常20%減益へ

上期実績

営業収益を除いて会社計画を下振れして着地しました。上期累計の営業収益は15.9%増収の2833億円、営業利益は46%減益の101.7億円、経常利益は48.5%減益の105.9億円、最終利益は50.2%減益の73.5億円でした。

また12-2月期は経常利益41.7%減益の51.3億円、売上営業利益率は6.3%→3.5%に低下しました。

出典:株探

今期予想

同時に通期業績の下方修正を発表しています。修正幅は営業利益11.8%、経常利益8.9%、最終利益12.7%、営業収益は据え置きです。これにより今期経常は12.4%減益→20.2%減益に拡大することになります。

修正の理由は、急激な円安と原材料高による仕入れ価格の上昇で、営業総利益が想定以上に下がったとのことです。1Qの低進捗率から下方修正はある程度予想できましたが、早くも計画達成を諦めるとは。なお年間配当40円は据え置いています。

出典:株探

前回決算から変わっていない

新規出店で売上は計画通りも利益は回復せず

良品計画の損益計算書を見ると、売上にあたる営業収益は伸びています。決算説明資料によると営業収益は計画通りとのことで、出店攻勢をかけて72店舗増やしたことが増収に結びついたようです。

一方で急激な円安と仕入れ原価の上昇によるコスト増を価格転嫁しきれずに、粗利に当たる営業総利益や営業利益は計画未達に。営業総利益率(粗利率)は47.9%→44.5%に低下しています。売上は伸びても利益は回復せず、前回決算から変わっていません・・。

良品計画は製品開発と販売を手がけるファブレス型の小売業で、海外で作った製品を日本に輸入しているので円安は逆風です。とはいえ同じように家具を海外から輸入しているニトリは、良品計画よりもずっと小さい減益幅に留めています。なぜ良品計画はこれほど苦戦しているのでしょうか?

出典:決算説明資料

国内事業が足を引っ張る

セグメント別に見ると国内事業の不振が目立ちます。半年間で国内に44店舗も出店した割に、売上が11.5%しか伸びていないのが気になります。営業利益は前期比で6割ほど、営業利益率も14.4%→8%と大きく低下しています。円安と原材料高で厳しい事業環境とはいえ、他の小売業では増益決算も目立つのに、良品計画の不振ぶりが目立つ格好です。

逆に海外事業は大幅な増収増益で、会社計画を超過しています。営業利益率も2.4%改善の16.9%と国内の2倍強であり、しっかり稼げていることが分かります。特にこれまで赤字が続いていた欧米が黒字に転換したのはプラス材料と言えるでしょう。

出典:決算説明資料

とはいえ売上の6割を占めるのは国内事業です。海外が好調でも不振の国内事業が業績の足を引っ張っていることになります。業績回復には国内事業の立て直しが不可欠です。

国内の既存店売上高は低調に推移

好調な海外事業は問題がなさそうなので、国内事業に絞って見ていきます。小売の好不調は月次を見れば分かります。良品計画の国内既存店売上高は2月まで100%割れが続きました。店舗数が大きく増えているので全店は100%超えが続いていますが、既存店売上高のマイナスが続くのは客離れが起こっている恐れがありマイナス材料です。

決算短信には「生活雑貨の販売不振が響いた」とあり、消費者のニーズをつかみきれなかったことが売上の不振に繋がったように感じられます。なお食品の売上が1Qに落ちているのは、低単価商品の構成比が高まったことによるもので2Qでは回復しているので問題はなさそうです。

また3月の既存店売上高は前年並に回復しています。今後も100%超えが続くか観察していきたいところ、客数と客単価も3月になって戻っているのは安心材料です。

出典:決算説明資料

過剰在庫が利益を押し下げている

良品計画のようなファブレス型の小売業は、商社から商品を仕入れるよりもコストを安く抑えることができますが、在庫を抱えるリスクもあります。そこでチェックしたいのが棚卸資産の推移です。

決算説明資料によると棚卸資産である在庫は前期比+230億円、うち為替要因が42億円、過剰在庫は105億円。1Qでは過剰在庫が145億円あったので2/3程度まで改善していますが、それでもまだ適正在庫より多い状態にあります。

そもそも売れないから過剰在庫になっているわけで、消費者が欲しくないものを作ってしまったことに問題があります。過剰な在庫は値引き販売して減らすほかなく、利益の押し下げ要因になります。

なお国内の過剰在庫は主に定番衣料で、生活雑貨は発注の抑制で在庫の適正化が進んだとのこと。ただし中国では冬物在庫を売り切れず、一部が翌シーズンに持ち越しに、1年遅れの冬物衣料は相当値引きしないと売れないでしょう・・。

出典:決算説明資料

今後も急回復は期待できない

今回もとても悪い決算を発表した良品計画は、1年の半分で早くも計画達成を諦めて業績の下方修正に追い込まれました。海外事業は好調を維持しているものの、国内事業の不振は深刻で既存店売上高は2月まで100%割れが続きました。さらに過剰在庫の処分もまだ途中であり、今後も業績の急回復は期待できそうにありません。

一方で売上は伸びている、海外事業は好調、営業利益の減益幅も1Qから20%程度改善し、下期は増益に転じる見込みと希望もあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?