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「英語は目標達成のツール」

ユニークだった専任講師

「英語を流暢に話せることを目標にするのではなく、英語を通して何が出来るかを考えなさい。英語が出来るというのは、あくまでもツールですよ。」学生時代の専任講師だった男性の言葉を、今もはっきり覚えている。

約30年前の言葉をなぜ覚えているのかと聞かれたら、専任講師がとてもユニークな人物だったからだ。中肉中背で日本的な顔立ちながら目力が強く、少し早口で色んな話題が飛び出してくる。一番特徴的だったのは、「英語で落語公演をしている」ということだった。

日本人が英語で落語?

彼曰く「落語は日本が誇れる文化のひとつだから、海外の人にその素晴らしさを伝えたい。」10代後半若しくは20代前半のわたしたちは、彼の言葉がよく理解出来ずにポカンとしてしまった。

かなりインパクトがあった彼の英語は流暢だったし、日本人独特の訛りを感じなかった。英語学習でつまづきがちな点を、分かり易く説明してくれた。そして話の端々から、「英語で落語という日本文化を広めたい」という気持ちを強く感じた。

「日本文化を理解してほしい」という気持ちと行動力

落語に興味を持つ前から海外にはあちこち行っていたらしく、日本文化の話をしても、日本文化を正しく理解している外国人はごく僅かということにモヤモヤを感じていたらしい。それから「日本人は真面目でユーモアセンスに欠ける」という先入観にもモヤモヤすることが多く、「どうしたら日本人や日本文化にもユーモアがあることをわかってもらえるか?」と考えていた。そんなある日、落語の面白さに気づき「英語でやるのはどうだろう?」と思いたったらしい。「英語で落語をやりたいから所作を教えてほしい」と落語家に片っ端から電話してみたけど返事は芳しくなく、「そのアイデアは面白い」と言ってくれた落語家がたった1人だけ。以来地道に修行し、高座に上がるようになったと聞き、その行動力には驚いた。今から30年前の話だから、行動力と熱意で自分だけの目標を達成している姿は、今考えても凄いとしか言えない。

「英語は目的達成のツール」という観点

「華道でも茶道でも、素晴らしいと思う日本文化がひとつでもあったら、調べてみなさい。''道''がつくものには、素晴らしい歴史と精神性がある。日本では当たり前のものも、海外では新たに価値を見出すものもある。それらの文化を海外に知られるきっかけを作るのは、英語で説明することなんですよ。英語を勉強してるあなた方は、そのきっかけを掴んでいるかもしれませんよ。」彼の言葉に、友人たちと顔を見合わせた。

「英語はそのツールなんですよ。目標を英語がペラペラになりたいというありきたりのものじゃなくて、英語を通して何が出来るか考えなさい。英語を目的達成のツールとして考えたら、勉強の仕方も違ってきますよ。英語が出来るというのは、あくまでもツールですよ。」彼の言葉で、わたしに自分にとっての英語を学ぶ意味を考えさせた。

30年後に振り返ってみて

30年前の彼の言葉を改めて振り返り、「自分は目的達成のために、英語をツールとして使いこなせているか?」と問いただしてみると、「いいえ」という答えるだろう。外国人の友人たちと連絡を取ったり、仕事である程度英語を使っているけど、目標は達成出来ていない。

このタイミングで彼の言葉を思い出したのは、もしかしたら自分の目標設定を見つめ直す時期がやってきたのかもしれない。全て起こるべくして起こっている(Everything happens for a reason)のだから。




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