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35歳のおじさんがプロダンサーになるまで3rd season⑤〜リスタート〜

2015年2月。

ダンスバトルの地球No.1を決定するといっても過言ではないモンスターイベント。

POP LOCK BOX (PLB)

師匠でもある『Majestic5』のMalさんが、日本代表チームでこのバトルに出場するため応援に来ていた。

そして、ここにきた理由が、もうひとつ。

なんなのかは分からないが、私はこれを観る運命になっている。
直感といえばいいのか、不思議な感覚が私にずっと付きまとっていた。


当日は各国や各地方の代表戦以外に、一般枠のソロバトルもあった。

しかしそれにはエントリーしなかった。
とにかくすべてをこの目に焼き付けると決めていた。

バトルが始まった。

細かくは書かないが、伝説と呼ばれるようなハイレベルなバトルが一日中続いた。

いろいろな国、いろいろな地方を背負った代表者のダンス。
会場が広くて遠目にしか見れなかったが、それでもその凄さが伝わった。

この日この会場に、地球上のダンス超人が全員集まってると言われても、普通に信じただろう。

しかし、直感の正体はいまだに掴めなかった。
このバトルを観て自分に何が起きるんだ。
(相変わらず根拠はないが、何か運命的な確信は消えなかった。)

そして激闘の決勝戦が終わった。
『PLB』の全工程を見終わった直後、


「それ」は起きた。


ある閃きと共に、突然、指先、足先から順番に細胞が裏返っていく感覚におそわれ、それが身体中を昇り頭の先を抜けた。

そして、メグちゃんにこう言った。


「たぶん、今日、いま、この瞬間から、僕のダンスは変わる」



翌月、博多で大きなバトルイベントが2つあったのでエントリーした。

1つは『Fuku Lock』。

ロックダンスオンリーのソロバトルイベントで、毎回全国からエントリーがあるレベルの高いバトルだ。

これまでにない種類の緊張と興奮の中、予選を踊りきった。

これで予選落ちなら、もう悔いはない。

自分にできることは全てやった。

予選通過者は百数十名中、16人。
そこから16人がトーナメント形式でバトルし、優勝者が決まる。

1位通過からの発表だった。

優勝常連組の実力者の人たちの名前が次々と呼ばれていった。


そして……


「第5位通過!ノッポーーーー!!!」


呼ばれた。自分。

いま確かに呼ばれた。

泣くのを必死に我慢した。

基本的に自分は人前で泣くタイプではない。

予選5位通過の涙。
なんと中途半端。
でも、一生忘れない涙だろう。

20代から走り続けてきた、暗くて長いトンネル生活の終わりが、ついに見え始めた。

やはり『PLB』の時の感覚は、間違いでは無かった。

この日は最終的に本戦で一回勝ち上がり、ベスト8になることができた。


そしてもう1つ。
翌日に博多で『Carnival』があった。
今まで一度も予選通過したことがないバトルだ。


結果は……


ベスト4。


1ヶ月前までは、万年予選落ちだった自分。
そこからは考えられない結果だった。

運ももちろんあるが、昨日の結果がマグレではないと、確信できた。

このまま波に乗るかと思われた。


しかし、人生はそう甘くない。

これは、メグちゃん以外、ほとんどの人が知らない話。

この後私は、会社の仕事が原因で、うつ病になった。


【未来の自分から一言】
喜びに浸る間もなく、キミは病気になったね。
これもまた偶然ではなく必然。
キミにとって必要な出来事だったと、いまは思うよ。
さぁ、すべてのピースは揃った。
もう一度起き上がって、前に進みだそう。

☞《最終話》へ続く…



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