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Clubhouseという黒船から見えた二つの軸。これから音声プラットフォームはどうなるのか

 連日Clubhouseのことばかり発信してしまい、人によっては「わかったよ。たのしそうね。はいはい。」と思われる方もいるかもしれません。

 しかし、このClubhouse型の音声SNSの誕生は、音声コンテンツ文化にとって、価値観を変えるほどの大きな衝撃を与えました。僕にとっては、音声に限らず、動画やブログに対しても大きな視点の変化を与えました。

 これまで、私たちは、音声コンテンツを、生配信と収録配信(アーカイブ)という軸で考えていたのかもしれません。しかし、Clubhouseの躍進は、その軸を少し異なるところに置いてしまった。今日は、その新たな二つの軸についてお話します。


Clubhouse型は生き残るのか

 Clubhouseの特徴は、主役を一人にすることを前提にしていません。主役はルームの質であり、一人のスターの独壇場にするには向いていない。そこになれていないしゃべり屋さんは、リスナーからマウントをとってるように聴かせてしまうというわけです。

 これまでの個人至上主義の配信世界では心配しなくてもいいことでした。自分のコントロール外の相手の立ち位置を受け入れながら、反応を示せないリスナーの欲求をくみ取らなくてはならない。これまでは、発信するものをすべてコントロール下に置くことができたのに、それが得意な人は主役になれなくなったのです。

 リスナーは、配信者との双方向のコミュニケーションを求めていると思われてたのに、実はない方が長時間聴いていられた。個人配信型より、予想もコントロールも難しいルーム配信型は、これから何が起こるか予想できないコンテンツになります。予想通りの未来より、思わぬ未来を求めていた。これを提供できるツールを実現してしまいました。

 このようなツールは、すでにDabelやTwitterでも開発しています。今、Clubhouseの弱点も見えてきましたが、運営のアルファ・エクスプロレーションが単体でこれを乗り越えなくても、GAFAなどが買収してしまえば、強力なサーバーやマネタイズシステムを構築してしまうでしょう。

 マストドンと比較に出されることもありますが、招待制というプロセスを除けばかなりシンプルなので、マストドンのようなしぼみ方はあまり考えられないように思えます。(マストドンはしぼみましたが、似た形態のSlackやDiscordは日常に浸透しています。)

 高い可能性として言いますが、ルーム配信型の音声サービスは今後も生き続けることになるでしょう。


一つ目の軸「個人とルーム」

 そうなると、個人配信型の音声ライブプラットフォームにとって大きな危機となるでしょう。同じようなライバルサービスと、細かな機能で戦っているわけではなく、ライブの形態そのものが対抗軸となってしまったとき、時代をとれなかった方が後退する。もし、既存のライブ形態が後退した場合、しぼんだ市場の中でこれまでのライバルと潰しあいをすることになります

 もしかしたら、来年や再来年、今配信してるプラットフォームに仲間がいなくなっているということが起こるかもしれません。

 ここで重要になってくるのが、ユーザーによる文化創造力になると思います。僕は、配信活動の多くの時間をSPOONで過ごしてきました。SPOONでは、プラットフォーマーをからではなく、完全にユーザーから生まれたエンタメが多くありました。これがなければ、SPOONは生き残ることはできなかったでしょう。Radiotalkやstand.fmでの配信活動のリサーチもしましたが、素晴らしい配信者コミュニティや文化が形成されていますし、現在進行形でも集団による試行錯誤が行われています

 一方、ルーム配信型で一人勝ちしているClubhouseでは、まだエンタメ性のあるコンテンツを生み出せておらず、攻略したい人たちが手探りで作っている段階です。マネするものがないからこそ、あらゆることが試せるとも言えます。文化性を育めずしぼんでしまえば、他のプラットフォームの脅威からは外れてしまうでしょう。しかし、先ほども言ったように、似た形態のサービスは、あとからも生まれることを考えると、個人配信型のライブプラットフォーマーが安心して眠れることは、しばらくないかもしれません。


二つ目の軸「今と未来」

 Clubhouseの襲来を最も効果的に使った音声サービスは何か。これは誰もが口をそろえて「Voicy」と言うでしょう。Voicy社長の緒方さんは、他のプラットフォームの社長が地位を確保する隙を与えずに、Clubhouseの中で強力なインフルエンサーとしての地位を築いてしまいました。Clubhouseでの躍進はTwitterのフォロワー増加に始まり、Voicyのユーザー増加まで引き起こしてしまいました

 Voicy躍進によって世の中に広がった言葉が「アーカイブ」と言えるかもしれません。これまで、なんとなく聞いたことがあったけど、Clubhouseとのすみ分けられる世界として設定されていました。ライブとアーカイブの両方ができるプラットフォームが生き残るという声が、Clubhouse前夜では「そうだよね」と言えたことでしたが、今ではClubhouseのパワーがあまりに大きかったために、アーカイブ系のプラットフォームがライブにリソースを使うことに疑問すら生まれてくるかもしれません。

 昨年までは、その時しか聞けない「ライブ」と、資産として残せる「アーカイブ」という軸で音声サービスを見てきたところがありました。

 しかし、僕が見ている軸はここではありませんでした。一昨年の年末ごろから持っていた感情ではありましたが、Clubhouseの極端までの秘密性と一瞬性、時間消費をさせる設計により、より体系的に見えた軸になります。

 それは、今の価値が最大の音と、未来で価値が最大の音という軸です。今の主流は基本的に生ものであり、毎日、あるいは週一回の「更新」が必要となります。昨日のものに今日のものを重ねて、更に新しくするということです。この軸で言えば、ライブもアーカイブも同じようなものになってしまいます。

 なぜこれが軸に見えたのかというと、もう長い間SNS疲れ、テレビ疲れ、そしてClubhouse疲れという類の追いたくても追いきれない生物的限界を、リスナーにもクリエイターにもずっと課している時代が続いているためです。コンテンツ量は圧倒的に増えて、リスナーはアクセスしきれず、配信者は数を打たなければ見つけてもらえない。コンテンツに対して感じるユーザーのデメリットが、ライブもアーカイブも同じになってきていることがおわかりでしょうか。

 これに対し、未来に残る良い作品を作るためには時間が多く必要です。エゴサに使ってる時間も、宣伝に使ってる時間も、リスナーにこたえようという努力も邪魔になります。作品性を優先した場合、これまでの「たくさんの人に聞いてもらうことによる快感」は、今の価値が高い生もの主流の市場では得ることが難しくなります。


この快感に代わる喜びを作ろうとしています

 未来に、今作ってるものがどれだけ残っているのでしょうか。音の時代が盛り上がることが、未来にとってどのようにつながるのでしょうか。僕が考えるようにしているのが、その視点です。

 一年前、配信活動になれてきた自分にとって、せっかく作った作品が日々捨てられていくような気がして、どんなに聞いてくれる人がいても悲しかった記憶があります。このままのやり方では、いつまでも僕の作品は未来に残せるほどのものにはならない。そのための一歩がCastLeでの挑戦でした。今は、二歩目になります。

 声によるコミュニケーションは、人間にとってかなり古代からある、文字以上に古いツールです。であるならば、声があらゆる文字に変わることができる技術が生み出されれば、人の持ってる能力をさらに引き出せる可能性を感じています。

 このためのアイデアはたくさんありますが、書き溜めるにとどめて、今の開発に専念している感じです。正直言って、今のコンテンツ意識を変えることができるアイデアだと思う!早く作りたい!

 「未来はこうなるだろう」の声にただ従うのではなく、こうなる可能性があるからこうしたら自分の生きたい未来の社会につなげられるといった攻めの姿勢で楽しんでいきます。一緒に作ってくださる方がいましたら、ぜひお声がけください!


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CastLeVoiceを開発するために寄付を集めています。ぜひお気持ちお願いいたします。

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