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K-POPを支えてきた30の企業・コミュニティ

個人的にSpotifyで、K-POPの歴史をお話しているわけだが、現在少しだけお休みをいただいているので、復習と予習ができるよう、K-POPを支えてきた企業を総ざらいしてみる。

①K-POP誕生前の貢献者

K-POPの始まりを、ファンダム経済を成功させたH.O.Tとするなら、そこにいたるまで重要な役割をした企業とコミュニティがある。

東亜企画

韓国のロック、ポップ、バラードの基礎を築いたアーティストが所属。事務所が強制的なマネジメントをすることがない自由な気風が特徴。複数のジャンルを混ぜ合わせるというKpopの基礎にも繋がった。90年代に入ると共にLINE音響やテヨンAVに押される形で表舞台から消えた。
スタート:1980年頃?
出身アーティスト:チョヨンピル、ユジュハ、キムヒュンシク

カカオエンターテインメント(旧ソウルレコード、旧LOEN)

韓国で最も大きなシェアを誇るレーベル会社。その歴史はK-POPが始まる前から続く。韓国最もシェアが高いデジタル音源販売プラットフォームであるMelOnを抱える。StarshipやIST、Highupといったマネジメント企業を傘下に置く。
スタート:1982年
出身アーティスト:IU、Apink、Ailee、TheBoyz、STAYC(HighUp)

ハンベクヒ師団

韓国初のアイドル育成システムを構築し、SMなどの事務所がモデルにした。ハンベクヒという敏腕マネージャーを中心に、GM企画(現MBK)を作ったキムグァンスもマネージャーとして所属した。
スタート:1980年代前半?
出身アーティスト:キムワンソン、インスニ

BANANAカルチャー(旧イェダン企画)

かつてソウルレコードに次ぐレーベル会社だった。冬のソナタのブレイクにより日本市場に韓流を根付かせたパイオニアでもある。現在はエンターテインメントに限らず手広く開発を行う。
スタート:1984年
出身アーティスト:ソテジワアイドゥル、EXID

テヨンAV

ロックやテクノをより実験的にポップに近づけたプロデュースグループが多く所属した。CJ ENMの前身となるレーベル。CUBEを作ったホンスンソン、Mysticを作ったユンジョンシンの出身。
スタート:1980年代末
出身アーティスト:015B、N.EX.T

LINEプロダクション(旧LINE音響)

90年代前半の人気を独占したキムチャンファンを中心とした事務所。事務所の色にとらわれないアーティスト性が支持をうけ、BTSが記録を出すまでアルバム売上記録のトップ2を持ち続けていた。ファンダム市場の台頭と内部汚職により衰退。
スタート:1990年
出身アーティスト:シンスンフン、キムゴンモ、クローン、ノイズ

クラブ・ムーンナイト

80年代後半から、アメリカのヒップホップ文化の入口となった梨泰院のナイトクラブ。K-POPの音楽の基礎はここで構築され第0世代のラッパー、ダンサー、DJのほとんどはここからスタートした。SM音楽を作ったユヨンジンや、YGを作ったヤンヒョンソクはここで活躍した。
スタート:1980年代後半?
出身アーティスト:ヒョンジニョン、デュース、ターボ

②K-POP黎明期の貢献者

ファンダム(ファンクラブ的なCD売上以外でも高い経済効果をもたらすファンの集団)の誕生によって、韓国歌謡界の中心が入れ替わるのが1996年以降。アジア通貨危機も重なり海外進出の動機もできた時代に、今に続くK-POPグループのスタイルを構築した。

SMエンターテインメント

アイドルによるファンダム市場を成功させてから常にトップを走り続ける事務所。四大事務所の1つ。高いビジュアルを備えたアイドルが多いことで有名。ヨーロッパを中心に世界中の作曲家、振付師、練習生をかき集め、総合戦をとるため、大衆受けの良い曲から癖の強い音楽まで幅広くリリースする。また、アジア市場の攻略を最初に成功させた。強いプロデュース能力から、アイドル自身のアーティスト性が失われるとよく批判を受ける。Woollim、MysticStoryを傘下に置く。Pledisを作ったハンソンス、SorceMusicを作ったソソクジン、ADORのミンヒジンの出身。
スタート:1989年
出身アーティスト:H.O.T、SES、神話、BoA、東方神起、SuperJunior、少女時代、SHINee、f(x)、EXO、RedVelvet、NCT、aespa

DSPメディア

日本のグループをモデルにしたプロデュースが多かった、SMと共にファンダム市場の成功を導いた事務所。マネージャー出身のイホヨンがテソン企画という名前で作った。80年代後半から実験的なグループをいくつか成功させている。また、SMの少女時代とともに日本でのK-POPブームを導いた。イホヨンのカリスマ性を中心に発展したが、イホヨンが病床に伏したことをきっかけに人材が大量流出した。イホヨン死後の清算が終わった現在はRBW傘下。
スタート:1991年
出身アーティスト:ソバンチャ、ZAM、ジェクスキス、Fin.KL、ClickB、SS501、KARA

JYPエンターテインメント

天才アーティストにして天才プロデューサーであるパクジニョンが作った事務所。四大事務所の1つ。godのプロデュースの成功を皮切りに、多くのアイドルグループを生み出した。デビュー前の人選から力を入れることを特徴とし、デビュー後のスキャンダルがあまりないことで有名。日本での第3次K-POPブームを最初に成功させた。アメリカ市場の開拓や日本人グループのプロデュースなど、他の事務所はしないような市場開拓に挑戦してきた。衣装の精度の低さに批判を受けることが多い。Bighitを作ったパンシヒョク、CUBEを作ったホンスンソンと共に初期運営していた。
スタート:1996年
出身アーティスト:ピ、WonderGirls、2PM、missA、Twice、GOT7、Straykids、ITZY、NMIXX

YGエンターテインメント

韓国歌謡界の構造を塗り替えたソテジワアイドゥル出身のヤンヒョンソクが、グループ解散後作った事務所。四大事務所の1つ。ムーンナイトで培われた音楽性や人脈による独自のヒップホップ市場を基礎としているため、他の事務所グループと比べると癖が強く見える。構造的にスキャンダルを起こす環境にアーティストが陥りやすい傾向にあるが、アーティスト自身のカリスマ性によって支持を失わず成長を続けている。北米や東南アジアで支持をうけやすい。P-nationを作ったPSYがアーティストとして所属していた。
スタート:1996年
出身アーティスト:1TYM、SE7EN、BIGBANG、2NE1、WINNER、AKMU、BLACKPINK、TRESURE

CJ ENM

サムスン系企業の第一製糖(CJ)から映画部門として誕生した巨大エンタメ企業。カカオエンターテインメントに次ぐレーベル規模を持つ。音楽コンテンツは、テヨンAVやサイダス、M-netといった強力な企業リソースを吸収することで拡大した。SWINGやWakeoneといったマネジメント事務所を傘下におく。JYPやYGが得意としていたサバイバル番組を世界規模の人気に押し上げ、コロナ禍で全世界のユーザーを獲得した。
スタート:1994年
出身アーティスト:WannaOne、IZ*ONE、X1、Kep1er

iHQ(旧サイダス)

90年代末から2000年代始めに一世を風靡したエンタメ企業。映画館の運営で成功した。音楽部門では弱い側面を持っていたが、JYPと共同でgodを国民グループにのし上げたことで地位を確保した。現在は映画部門がCJ ENMに吸収され、iHQとしてベテランソロアーティストが中心に所属する。
スタート:1999年
出身アーティスト:god

MBK(Pocketdol Studio、旧GM企画)

ハンベクヒの弟子であるキムグァンスが作った事務所の系譜。SMとDSPによる2強時代から頭角を現し、JYPやYGより先に三強入りしていた。男女混成からソロ、アイドルまでスタイルのこだわりがなく、ほとんどのグループがヒットしている。現在は直属のアーティストはおらず、Pocketdolという子会社を置き、マネジメントを全て任せている。キムグァンスによるいくつかの事件が足を引っ張り下降気味だったが、オーディション番組『放課後のときめき』のヒットにより盛り返しを見せるかもしれない。
スタート:1995年
出身アーティスト:Turbo、MCtheMax、SGWannabe、Davichi、T-ARA、CLASS:y

ナウヌリ

ナウコムが運営していたインターネットサービス。ネイバーやサイワールドが主流になる前に、オンラインコミュニティを構築していた。マネジメント事務所に頼らないアーティストたちが多く曲をあげ、黒人音楽を中心に同好会も形成されていた。チョPDとVerbal Jint、PSYなどの癖が強いラッパーたちがここから出発し、21世紀の韓国ラップの基礎を作り上げた。
スタート:1994年(2013年終了)
出身アーティスト:チョPD、PSY、フィソン、チョンイン

③アジア市場定着の貢献者

2000年代後半から、日本を中心とした海外のK-POP市場が安定しだす。SMやDSP、YGの日本進出成功に続く形で、事務所起業ブームが起こる。

FNCエンターテインメント

ロックバンドの成功と、GM企画のキムグァンスの協力もあって、K-POPの世界市場を拓くタイミングに成功した。バンドメンバーの自主性を重んじる姿勢に評価を受けていたが、CNBLUE以降は事務所とアイドルとの関係性に度々疑問が投げられており、スキャンダルも絶えない。韓国ロックの代名詞のような存在だったが、最近はバンドよりポップグループのデビューが目立つ。
スタート:2006年
出身アーティスト:FTISLAND、CNBLUE、AOA、SF9

ミュージックCUBE

テヨンAV、JYPを経験したホンスンソンが作った事務所。当初はJYPをはじめ、他の大きな事務所でデビュー出来なかったメンバーを集めた寄せ集めと揶揄されたが、次々と個性的なグループが成功し、海外でも大きな支持を得た。アイドル一人ひとりが自己プロデュース能力が高い傾向にあり、契約終了後も成績を残し続けるアーティストが多い。しかし、事務所側からのプロデュース能力との釣り合いが取れず、炎上に対応しきれないことがある。RBWを作る前のキムジヌが代表取締役を務めていた。
スタート:2008年
出身アーティスト:BEAST、4minute、(G)I-DLE、Pentagon

HYBE(Bighitエンターテインメント)

パクジニョンの右腕として活躍した作曲家パンシヒョクが作った事務所でありレーベル会社。四大事務所の1つにして、唯一第2世代進出に成功しなかった。アイドル個人が持つストーリーを重視する傾向がある。防弾少年団の成功により、K-POPがアメリカンポップと世界市場で並ぶきっかけを作った。マネジメントだけでなく、Weverseといったアイドルとファンの交流プラットフォームを開発し、コロナ禍のファンダム経済の構築に成功しただけでなく、最大のライバルプラットフォームのVLIVEとの統合も成功させようとしている。発信力ではほかのマネジメント企業から頭一つ抜けている。Pledis、SourceMusic、ADORを傘下に置き、ENHYPENが所属するBeliftLabをCJと共同運営する。STARSHIPを作ったキムシデの出身。
スタート:2005年
出身アーティスト:BTS、TXT、ENHYPEN

STARSHIPエンターテインメント

Bighit出身のキムシデが作ったKakao傘下の事務所。四大事務所と比較すると目立たないことが多いが、最近は四大事務所を押しのけて売上を独占することが多い。他の大きな事務所の戦略を利用したマーケティング戦略を得意とし、特に国内人気が高い。
スタート:2008年
出身アーティスト:K.Will、SISTER、MonstaX、宇宙少女、CRAVITY、IVE

Woollimエンターテインメント

マネージャー出身のイジュンヨプが作った事務所。SM傘下ではあるもののかなり自立性が高い。アイドルの時代に乗り遅れたと見られた2000年代初めに創業し、第二世代でブレイクに成功した。デビュー数は特別多くないものの、練習生からは人気の事務所。
スタート:2003年
出身アーティスト:EpikHigh、INFINITE、GoldenChild、RocketPunch

PLEDISエンターテインメント

SMのマネージャーだったハンソンスが作ったHYBE傘下の事務所。第二世代から頭角を現し、小さいながら日本を中心に海外人気を積み重ねた。AfterSchoolやSEVENTEENといった世代を代表するグループを創業以来必ず出している。メディア対応はあまり得意では無い。
スタート:2007年
出身アーティスト:AfterSchool、NU'EST、SEVENTEEN、fromis_9

④世界市場定着の貢献者

2010年代後半からコロナ禍にかけて、K-POPは全世界にブームを起こした。特に第2世代ではブレイクに成功できなかった事務所の追い上げが起こり、K-POP覇権の版図が変わりつつある。

RainbowBridgeWorld(RBW)

CUBE代表取締役出身のキムジヌが作った事務所。第三世代から頭角を現した。既存のアイドル像にとらわれない、時代にフィットしたスタイルで国内で大きな支持を得た。M&A戦略も得意とし、DSPやWMを傘下に置く。
スタート:2010年
出身アーティスト:MAMAMOO、ONEUS

WMエンターテインメント

マネージャー出身のイウォンミンが作ったRBW傘下の事務所。アットホームな雰囲気がトレンドに合致し、第三世代から台頭した。イウォンミンのような雰囲気が優しいグループが多い。
スタート:2008年
出身アーティスト:OhMyGirl、ONF

SourceMusic

SM出身のソソンジンが作ったHYBE傘下の事務所。ガールズグループを専門にしており、王道のスタイルを得意としている。ダンスの正確さにも定評がある。2015年、Bighitと共同で事務所初のガールズグループGLAMをデビューさせようとするが失敗、そのあとデビューしたGFRIENDがTWICEやBLACKPINKとともに第3世代のK-POPの潮流を作った。メディア対応能力とアーティストフォロー能力の低さによりしばし炎上する。
スタート:2009年
出身アーティスト:GFRIEND、LeSserafim

MysticStory

BrownEyedGirlsを輩出したAPOPとの合併やSMからの資金調達に成功し、第四世代からようやくアイドルグループのデビューに漕ぎ着けた、元015Bでボーカル経験もあるユンジョンシンが作った事務所。名前の通り、不気味さとキュートさが混ざりあったストーリー性のある世界観が話題を呼んでいる。
スタート:2011年
出身アーティスト:BrownEyedGirls、Billlie

YueHua

中国に本社を置く事務所圏レーベル会社。第三世代から存在感を増した。韓国企業と連携したマネジメントをすることが多く、CJ系列のSTONEとは中韓市場を行き来するパイプとなっている。Starshipとは宇宙少女を共同運営している。
スタート:2009年
出身アーティスト:UNIQ、イェナ、Everglow

KQエンターテインメント(セブンシーズンズ)

セブンシーズンズを取り込む形で2016年創業した、アメリカのSonyの影響が強い事務所。アーティスト性やパフォーマンスの高さに、国内より海外、特に北米での人気が高く、ATEEZは逆輸入型のファンダム獲得に成功した。
スタート:2013年
出身アーティスト:Block.B、ATEEZ

P Nation

高い自己プロデュース能力で国内国外ともに社会現象を起こしたPsyが作った事務所。当初はソロ歌手が多い東亜企画のようなスタイルだったが、JYPと共同で行ったサバイバル番組を通してグループのデビューを成功させた。
スタート:2018年
出身アーティスト:ヒョナ、Crush、TNX

ADOR

SMでクリエイティブディレクターとして少女時代やSHINee、Exo、RedVelvet、NCTのコンセプトを成功させてきたミンヒジンがHYBEの傘下として作った事務所。まだ未知数だが、ミンヒジンが作った世界観ということで大きな注目を集めている。
スタート:2021年
出身アーティスト:NewJeans

BigPlanetMadeエンターテインメント(BPM)

SMが作った事務所だがすぐに独立した。人気を持続している実力派アーティストが多く合流しており、水面下での成長にひそかな注目が集まっている。
スタート:2021年
出身アーティスト:ソユ(元SISTER)、VIVIZ(元GFRIEND)、イムジン


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