初めて文フリに出たときのこと

 2018年の11月、私は初めて文フリに出た。ノンセクを理解してくれると思っていた彼に振られたショックでメンタルを相当やられていた。文章を全く書けなくなっていたけれど、彼との思い出をきちんと振り返ろうと思って、彼に長い手紙を書くような気持ちで長い長い文章を綴り、「キスなんていつでもできると思っていた-ノンセクシャルの私と恋愛-」というタイトルをつけ、ノートやはてなブログに書いていた短いエッセイを添えて、コピー本を作ることにした。

 コピー本の作り方もよくわかず、少し想像すればわかるようなページの割り振り方も知らなかった。前日の夜まで印刷する体裁に整えられず、どうにかこうにかネットで調べて、夜中にコンビニで必死にコピーをした。途中で紙が足りなくなり、恥ずかしくなって別のコンビニに走った。戻って来て、寝そうになりながらも、必死に折って綴じた。コピー本の厚みについてもあまり考えていなかったので、ページ数が確か60ページくらいの量の厚さになってしまった。ホチキスでとまらなくて、きりで穴をあけて、紐で綴じる羽目になった。確か12、3冊くらいしか作れなかったと思う。コピー代もかなりかかってしまった上に、見た目はあまりよくなかった。

 翌日、私はドキドキしながら、出来の悪いコピー本10数冊をリュックに詰めて、電車に揺られた。文フリに初出店なんて、1冊か2冊売れればいい方だ。ノンセクシャルという物珍しさから、もしかしたらもう少し買ってくれるかもしれない。それでも、売れて5冊が良い方だ。1冊も売れず、そのまま全部持ち帰りになるかもしれない。そう思っていた。

 こうして、私は自分のブースについた。左右の人は、もうきれいにセッティングしていた。私は挨拶をして、もたもたと間に合わせの布を敷いて不格好なコピー本を並べた。あまりにも貧弱で少し恥ずかしかった。

 開場して、30分くらい経過した頃だっただろうか。一人の人が本を買ってくれた。ぽつぽつと人が訪れ、「ノンセクシャルの本なんですか?」と話しかけてくれた。こうして、気が付くと、10数冊の本は、午後2時くらいには全て無くなっていた。私の書くものに興味を持ってくれる人がいることに、とても嬉しい気持ちになった。

 もっとちゃんと本の作り方を勉強して、読みやすい文章を書く練習をしよう。そう思えた。

 彼のことは、割とどうでも良くなっていて、文章を書くことの楽しさを久しぶりに思い出していた。

 


 



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