救われること
「己の心身の回復法」を知っている人は強いな、と思う。
本を読むことでも、ぼーっとすることでも、服を買うことでも、誰かと話すことでもなんでもいい。とても疲れてしまった時に、暴走せず淡々と自分を回復させるための行動ができたら。
私の場合は、料理をすることと、食べることの二つ。でも、同じ回復法と言ってもカテゴリーが少し違う。
料理をすることは、散らかった心をもとの場所に戻してあげるための行為。
食べることは、自分にご褒美を与え、ただただ癒されるための行為。
包丁を持ってコトコトと野菜を切っていると、自分の心がどんどん整う感じがする。オイルとにんにくを火にかけ、香りが立ってくると、すっと安心する。卵をフライパンに割り入れるときのカラっとした音(パカ、ではなくカラ、に聞こえる)を聞くと、ため息が漏れる。
特別凝るわけではない自分のための料理を作ることは、私にとって、心を落ち着けるためのとっても大切な行為だ。
休みの日でも、大学終わりの日でも、大好きなお店にご飯を食べに行くことは私にとっての最上級のご褒美だ。ゆっくりワインを飲みながら、興味をそそるメニューを選んで味わって食べる。このために頑張ってきてよかったと実感できる瞬間だ。時間の許す限りお店を巡って、飲んで、喋る。食と食が作る空間は何よりのエンターテインメントだと思う。
昨日は、私の大学がある街に母を案内した。一度訪れたことがあるセンスの良いワインスタンドで軽く飲み、女性の店主に「お二人よく似てますね」と言われて微笑んだ。二軒目は、落ち着く雰囲気のお店で、またワインを飲んで、牡蠣のリゾットとか、パテドカンパーニュとか、ちょっと贅沢なご飯を食べた。最後はすっきり締めたくなって、久しぶりにカンパリソーダを飲んだ。
母と二人で飲みながら、来年は海外旅行に行きたいねと話した。酔っ払っていつもより笑い声が少し大きくなってしまうけれど、こんなふうに日々を彩っていたいと、そう感じた。
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