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「シャイロックの子供たち」-映画とドラマ

平日の午前中はドラマか映画を観るのが日課になっている。
ドラマの後追いがあるときは迷わずそれを見るが、そういうのがない時は映画を観る・・・のだが、どれにしようかなと迷っているうちに時間が過ぎてしまうことも多い。

この夏のとある日、アマプラだったかネトフリだったか忘れたが、映画の「シャイロックの子供たち」を見つけて即決して観た。
映画公開時、池井戸潤原作の映画に阿部サダヲが主演、というのがピンと来なかったので観てみたいと思っていたものだった。

原作小説は未読。
(池井戸潤の映像化作品は八割がた観てるけど、どれも原作は未読)

映画は想像していたよりも軽めにできていた、という印象だった。
そして、阿部サダヲ演じる主役が「こんな感じだけど実はデキル人」的なキャラで、親しいお客と一計を案じて悪いやつを懲らしめ、若い部下の苦境を救う、といった結末になっていた。

そういう話だったからか、面白く観た割にはあまり記憶に残らなかった。

それから2週間ぐらいして、いつものように「どれにしようかな」とラインナップを眺めていて、ドラマ版を見つけた。
いかにもwowow製作と言った感じの不穏なビジュアルで、「あれ?こんな感じの話だったっけ?」と思って見始めた。

wowowっぽい~

ドラマの方は大変にシビアな話だった。
登場人物のキャラクターも全然違っていて、つい最近見たばかりなのに映画の内容が思い出せなくて、というか、重ならなくて、戸惑った。
そのあまりの気持ち悪さに、3回目ぐらいで一旦見るのをやめて、Wikipediaで調べてみた。

映画は、作者本人が脚本を書いたオリジナル版とのことだった。
あえて原作通りにせず、オリジナルキャラクターの柄本明を登場させて違う展開の話にしているのだった。

映画とドラマは、ドラマの方が先行してオンエアされている。
映画はドラマの最終回から3か月後の公開だ。
この「時差が3か月」っていことは、企画制作はほぼ同時進行だったんじゃないかと推測する。
作者の池井戸氏は映画化とドラマ化の話がほぼ同時に来て、どちらかを選ぶのではなく「じゃあ、映画の方はちょっと話を変えて私が脚本を書きましょう」ってなったんだろうか・・・

というのはどこまでも私の単なる想像だけど、作家にとってはあくまでも「シャイロックの子供たち」という一つの作品なのに、全然違う料理にして出す、ということに、職人技的な能力を感じた。

内容的には、これは完全に好みの問題だと思うけど、私としてはドラマの方が断然面白かった。
ドラマの方が時間をかけて語れるから、サスペンスをじっくり見せようと思うならドラマの方が合っているんだろう。
2時間ではこの作品の核を描き切れないと思ったから、作者自身がエンタメ色の強い脚本を書き直したんだろう。
しかもその脚本は日本アカデミーの優秀脚本賞を取っているというのだからすごい。
池井戸潤という作家の多才さに感嘆した、というのが、映画とドラマの両方を見ての一番の感想ということになるかもしれない。

そして、Wikipediaによればこの作品は、作家がことさらエンタメ性を意識して書いた小説だという。
そう言われると、原作まで読んでみたくなってくる。
すっかり掌で転がされている私なのだった。

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