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絵の具と法律ドラマと


小学校の図画工作の授業で、「絵の具を混ぜてみよう」という時間があったことを覚えている。

赤色と青色を混ぜると紫色ができると言ったような、そんなことを学ぶ時間だった気
がする。

『すごい〜!なんで〜』『きれい〜』というクラスメイトを脇目に、パレットの上で綺麗に混ざり合った色も、洗い流す時には色が混ざり合ってなんとも言えない色に変わってしまうじゃない、なんてことを考えていた。

筆を洗うバケツのようなものを「筆洗(ひっせん)」というそうだ。

1つ1つの絵の具は綺麗なはずなのに、筆洗はどうしていつも複雑な色をしているのだろう、とずっと小学生の頃思っていた。

でも筆洗が作る色が、なぜか好きだった。

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この夏、2本の素敵なドラマに出会った。

1つ目はNetflixで公開をしている「ウヨンウ弁護士は天才肌」というドラマだ。
自閉症スペクトラムの主人公ウヨンウが弁護士として駆け出していく様を描いた人間ドラマ。
 
彼女は法律を隅々まで記憶しているという天才だ。莫大な量の法律を即時に思い出し、事件の隙間から解決の糸口を見つけ出す。

彼女の実力もさることながら、人間性に惹かれて証言を決意する人も現れる。自身と周りの力で少しずつ弁護として成長していくヒューマンドラマだ。
 
もう一つの素敵なドラマは、TBS系列で放映している「石子と羽男」だ。

一度見たものを瞬時に記憶することができる高卒天才弁護士羽根岡(中村倫也さん)と、4回司法試験に落ちた東大卒パラリーガル石田(有村架純さん)が繰り広げるリーガルエンタテインメントドラマ。
 
天才的な能力があるのだけど、人付き合いはちょっと苦手、そんな羽根岡にクスッとしながら見られるところも面白い。
 
この2つのドラマの共通点は、リーガルドラマながら白か黒かの話ではないところだ。

子供の頃に見ていたドラマといえば、真実を見つけ悪を成敗するものが多かった。
水戸黄門の世界である。 それはそれで心地よくて、正しく生きることを教えてくれる。

しかし現実はそんなに白か黒ばかりではない。

例えば、『石子と羽男』では電動キックボードで飛び出てきた男性とぶつかることでの事件を扱う回がある。加害者側がぶつかった後に被害者に何もせずに逃げたと訴えられるが実際はそうではなかった。なぜ被害者はそんな主張をしたのか。

『ウヨンウ』では、障がいをもつ女性と性的関係を持った話が出てくる。そこに愛情はあったのか、本当に一方的な関係だったのか、なぜそんな訴えが起きたのか。

人生は、白か黒ではない。

物事は見方によっては赤色にも見えるし同じものも青色にも見えるときがある。
そしてその中に巻き込まれれば、なんとも言えない色の感情を飲み込んで生きていかねばならない。

僕達は筆洗の中を泳ぎ続けている。


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