僕にとって音とは何か
悲しい気持ち、切ない気持ち、やるせない気持ち、もどかしい気持ち。
苛立ち。
虚しさ。
感情的な一日を抱えて、今夜、も、車を走らせる。
ザゼンボーイズの「らんど」を選んだ。
僕が改めてなのか、こうしっかりと言葉にするの今更なのか分からないけれど、気が付いた。
今はこの「らんど」の一曲目から聞いているけれど、頭の中は別の事を考えている。あれやこれやと頭の中も、心の中も穏やかかではない。
その一杯一杯の僕の中、僕は音が欲しい。
今夜、その時にあまり言葉、歌詞はいらなかった。
ただ、僕の中に流れている音。
リズム、タイミング、間(ま)、気持ちの持ちよう、考え方の持ち方。
自分の中の思考回路が、自分の正義を府に落とす為に動く自分の心の中の音の癖が、向井秀徳の音と似ているのだ。
・・
音楽は思想・思考の共有、本能・深層心理の共感性を持つと思う。
言葉で表現される事や部分だけではない。それは生まれ持ったものなのか、後天的な環境で持ち合わせていくものなのかは分からないが。
僕にとって音や音楽は、僕が生きる上で、人生において特別なものだと。
改めて気づき考えた。
・・
無意識に頭を揺らす、体が動く。
足を踏む、手を叩く。
空気中に自分の動きを振りかざす。
この動きのリズムで、僕は自分も物事も動かしている。
この感覚が、向井君の音と僕の音が近いのかもしれない。
ナンバーガールの音が、僕の世界観の音と似ているのだろう。
僕が考えている事が何であれ、タイミングや事情はどうであれ。
僕は共感、ナンバーガールと、向井君たちとシンクロする。
ナンバーガールは僕にとって特別な存在だ。
でも、僕にとってナンバーガールが、僕の全てではない。
ただ、それを「影響を受けた」と言うのは、少し違うとずっと思っていた。
マイネイムイズナンバーガールと自分で語っていた頃もあった。
けれど、熱狂的なファンと言うには僕はやっぱり違うと思う。
比べるものでもないけど、コアでマニアックなファンとも違う。
ずっと言っているが、歌詞を完璧に覚えている訳でも無い。
完璧に演奏がコピー出来る訳でも無い。
時系列も、曲名も完全に覚えている訳でも無い。
ただ僕が生きている世界、見ている世界が、
ナンバーガールの世界と同じだったのだ。
だから
ここまで自分の人生や運命(境遇)を重ね合わせているのだと思う。
僕の人生で最初に幸せだったことは、ナンバーガールと出逢えたことだ。
向井秀徳の音であり、アヒトイナザワのドラムであり、田渕ひさ子のギター、中尾憲太朗のベースと出逢えた事だ。
僕の中で、世界一カッコいい音はナンバーガールだ。
向井秀徳の言葉や音楽だ。
一生、僕の中で世界一はアヒトイナザワのドラムだ。
最高に魅力的なのは田渕ひさ子のギターだ。
心が震えたのは、衝撃で吹き飛ばされたのは中尾憲太朗のベースだ。
同じように。
この日記で書いてある事で言えば、現在進行形のザゼンボーイズの音だ。
今夜で言えば「らんど」。
向井君の「探せ」の叫びであり、MIYAの激動のようなベースであり、吉兼 聡のトリッキーでカオスなギターであり、松下 敦の重厚なドラムなのだ。
比べるものでもない。
語るようなものでもないと思う。
・・
一曲目、二曲目と続き、三曲目を繰り返し再生し、四曲目を飛ばしかけ、戻り、三曲目を聞き、四曲目、五曲目。永遠少女に続き。頭を揺らし足を踏み込み、体を動かし、音を鳴らし、考え事をする。
考え事をするのだ。
僕はマイネイムイズナンバーガールから、次のステージに立ちたい。
・・
昔話を一つ。
僕がマイブラッディバレンタインを聴いている時。
ルミナスオレンジを聴いている時。
最近はコールター・オブ・ザ・ディーパーズを聴いている時。
僕は無心のようになっている時がある。
肉体的な作業をし動きながら、考え事をしている時がある。
そのバランスや度合いは解らないけれど、いわゆる没入感なのかもしれない。
ストレスと安易に言葉を使いたくないが、例えるなら外的要因のストレスから自分を切り離しているのだ。
その時に生じている感情や思考の動きを支えているのが、僕は「音楽」なのだ。
昔、シューゲイザーなのかノイズミュージックなのか当時の僕には分からないけれど、それを聞きながら自分の事をするという人の話を聞いた事がある。
僕らはその時、物事に集中している。
やるべき事、やりたい事。
やりたくない事。好きな事。
気持よくなる事。夢中になる事。
無心、無意識になる時。
あるいは、意識が拡張する時。
そこに音楽があるという話だ。
これも音楽だ。
窓の外はホワイト、洗濯物を取り込まないと。
しょうがない、だって僕ら人間じゃない。
「らんど」の次に「鉄風、鋭くなって」をかけてみた。
カッコいい。
・・
カッコいいについて。
僕は「らんど」に収録されている「ブルーサンダー」の冒頭。
僕はこのギターから始まって、ドラム、ベースが入り鳴り出す。
このリズムに対して、この楽器隊の入り方が僕の中での最適解。
一番カッコいい音。
このリズムというのか、この流れに対して、一番カッコの良い音の入り方がこれだ。そう思っていた。そう思っている自分を思い出した。
僕の音は変わらない。己の音は変わらない。
・・
あの街にはもう僕らのいない。
それでも僕はあの場所に僕らの影を残している。
・・
過ぎ去っていく想い出の中で、僕はこのリズムや間が好きだった。
この緊張感。
・・
一曲だけを張り付けて、これを聴いてと言いたくない。
アルバムと言う作品は、全部を通してひとつなのだ。
だから例えるなら一つの映画や小説を読んでいるようなものなのだと思う。
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