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権力格差はコストの押しつけを可能とするってはなし。

 よく「強い者は弱い者から奪う」っていいますけど、奪うだけでなく、「押し付ける」の方が実態に近い場合もあるんすね。コストを移転するんです。

 例えば、何かを決める時、会ってお話ししましょうとなったとしますね。で、その相手が、目上の権力者であるとして、あなたはその人を自宅に呼びつけるでしょうか。多分、呼びつけはしないだろうと思います。むしろ、あなたの方から、「私からご自宅に伺わせていただきます」となるんじゃないですかね。

 これ、会っておしゃべりするのにかかるコストがあるとして、半々にすることもできる中、あなたは相手の負うコストを移転されたわけですよ。これを「奪う」と表現してもいいけど、「押し付ける」というニュアンスが僕なんかはぴったり来ているんですね。というのも、「奪う」には、「本来相手のものであるものを奪う」というニュアンスがありますけど、「押し付ける」には「相手のものであるかどうかはさておき、負債を与える」というニュアンスを込めることができるからです。

 身近なところでは、僕ら、必要な手続きをするために、役所に行くじゃないですか。これだって、「役所が来い」ということができるかもしれないですよね。でも、僕らは呼び出されて行きますよね。役所の方が強いから、手続きにかかる移動コストを押し付けられている形になっているわけです。

 翻れば、相手に何かを押し付けることができるというのは、パワーの象徴です。逆に言えば、押し付けられるのは弱さの象徴ともなります。で、僕らは自分がパワフルな存在であると思いたいし、自分のパワフルさを感じると快感を覚える生き物です。だから、しばしば僕らは相手に何かを押し付けることで、快感を得ようとするんですね。例えば、頼まれてもいないのにアドバイスしてくるアドバイスモンスターやコーチングモンスターは、この快感を得ているのかもしれません。

 もちろん、自分のパワーを確かめて快楽を得ることは間違いではないんですよ。例えば、きちんと仕事をやりきるとか、社会に貢献するとかで得られる快楽なんかがそうですね。これなんかは、自分のパワーを確かめたい欲を上手に昇華できた例でしょう。しかし、パワーは使いどころを間違うとろくなことにならないんですね。これは、バットマンとかスパイダーマンとかいったアメリカンヒーローが常に抱えるテーマだったりします。

 また、押し付けられたものを跳ね返す力もまたパワーなわけです。アドバイスモンスターやコーチングモンスターが「脅威」になるのは、それを押し付ける「パワー格差」があるってことです。パワーが均衡している場合、あなたは、アドバイスモンスターにこういうだろう。「あ?誰なんおまえ?」。ヤンキー的なコミュニケーション。「お前は一体どういう権限を持つ人間として、俺にそれを言っているのか?」という確認なんすね。翻って、「お前はその権限を持っていないのではないのですか?」という確認なんですよ。「どこ中だお前」もそうで、あれだって別にどこの中学のものかを聞きたいわけではなくて、「お前は私たちの縄張りに入る権利を持っていないのに、入っているのではないですか?」という確認なんです。

 パワーに格差があると、結果として押し付けが生じます。だから、パワーにいたずらに格差があることは望ましくないし、うっかり誰かがパワーを持ってしまった場合に備えて、帝王学的な倫理が必要になるんです。ちゃんとした支配者としてのスキルを身に着けていない人がうかつにパワーを持つと悲劇になりがちでね。免許持っていないのに高級スポーツカーに乗るようなもので。FGOじゃないですけど、「支配者スキルA」みたいなものが世の中にはあるんすね。帝王学、マネジメントスキル、リーダーシップ、なんといってもいいけど。

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