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世間に「ナメられる不安」を管理するために刀を帯びる人々

 ヤンキーが攻撃的なファションを好むのは、警戒色だっていう説を聞いたことがあって、僕はその説が好きなんですよね。

多くの生物は、保護色を備えたり他の物に偽装する擬態を行うなどして、外敵から身を隠している。それに対し警告色を持つ生物は、敢えて外敵に目立ちやすい体の色や模様を持つことにより、自身に手を出すと危険が及ぶぞと警告を発し、自身の安全を確保するものと考えられている。それらの多くは、実際に毒を持っていたり、不快な味や臭いの元となる化学物質を含んでいたりする。
これは、敢えて目立つことによって外敵・捕食者に嫌な思いと体色を結びつけて覚え込ませることが目的であると言われる。つまり、最初に出会った時に手を出して不快な記憶が残ると、捕食者の攻撃意欲が低下し、警告側が捕食され難くなるという戦略である。類似の現象としては、有毒な動物が目立つ姿勢をしたり耳障りな音を立てたりする例がある。これらも捕食者に見つかりやすくなることで、相手に敬遠させることを企図したものと思われる。
なお、用語としては警戒色が古く、現在でもこちらが広く使われるようである。しかし、英語のWarning colourationに対する訳語としては不自然である点などから、現在は専門分野では警告色を正しい訳語としている。

 ヤンキーについては、以前こんな話を書いたことがありまして。

カツアゲゲームはリスキーなゲームですね。なんせ、暴力ありきですから、いつ自分が殴られ、奪われる側に回るかわからないわけです。だから、ヤンキーといえど、殴り合いを辞さないような命知らずなプレイヤーは淘汰され、長期間生存できないんすね。しかし、それでもそういう命知らずなプレイヤーが存在する以上、カツアゲされるリスクはなくならないですね。
 とすると、なるべく殴り合いになることをなるべく避ける行動様式が発達していくはずです。例えば、実際に殴らなくても、相手の暴力を妨げたり、反対に相手の金品を奪い取れたりする、威嚇や警告色といった恐喝インターフェイスが発達していくことになるでしょう。よく知られる「やんのかこら」「何見てんだこら」的な威嚇や、赤や金などの色合いや刺激的な漢字を多用した刺繍など、派手で攻撃的な外見が適合的になっていくのかも知れないすね。毒を持つ蛇や昆虫と同じ作用で。
 また、実際に殴らなくても、相手の暴力を妨げたり、反対に相手の金品を奪い取れたりするためには、「あいつは普段はおとなしいが、やるときはとことんまでやるやつだ」という「評判」も重要な要素になるはずですね。だから、ヤンキーにとって、体裁や評判はとても大事っすね。メンツってやつです。逆に、評判を傷つけられる行為、例えばバカにされたり、ナメられた時には、ちゃんと「やるときはやるぞ」と示さねばならないわけで。

 つまり、いつ殴られるかわからない環境では、僕らは身の安全を確保するために警戒色をまとうんですよ。

 で、次の記事でも書いたんですけど、僕らの生きる「世間」っていうのは、武装解除の完了していない停戦状態なんだって思っていて。

これはDisarmament, Demobilization, Reintegrationのイニシャルで、日本語では「武装解除・動員解除・社会復帰」という意味だ。国連などが、紛争後の国家における復興と平和構築の促進を目的に行う国際平和活動の一種で。世界各地の紛争地で実施されてきた平和構築プロセスとされる。翻れば私達の生きる「世間」というのは、まだこのDDRが行われておらず、「非合法武装集団の解体」が未達な集団なのだ。

 で、僕らが武装解除の完了していない停戦状態社会に生きているとすると、いつ殴られるかわからないという不安の中に生きていることになります。

 でですね、こないだ散歩しててふと思ったんですけど。僕らはよく「将来の不安があるから貯金する」っていうけど、そこでいう不安って「他人からナメられるかもしれない」なんじゃないかなって思ったんですよ。とすると、貯金ってのは居合道でいう「鞘の内」なんですね。核抑止力なんですよ。「幸せは金で買えない」っていいますけど、誰かからナメた扱いを受けない権利は金で買える、というか、金持っていれば保持できる、っていうか。

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