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まちづくり活動の動機は「楽しさ」か「面白さ」か「義務感」か〜あるいはカント的道徳観の問題について

先日、コミュニティ政策学会の大会に参加した。

思えば私はこの会に20年近く参加しているのだが、こうして長く継続的にかかわっていると、やはりこういう業界でも、ファッションとかと似てトレンドみたいなものがあるのだなと思う。そういう変化の中で最先端にいないといけないとは思わないが、どういう議論が流行っているのか、ということは知っておけると面白いなと思う。

ところで、そんなトレンドに関して、大会で面白い議論があった。

一昔前に比べれば、「人々に地域活動に参加してもらうためには、義務や強制では無理筋ですよね」という感覚はだいぶコモンセンスになってきたように思う。それはまあそうだろう、という話なのだが、じゃあ人々にまちづくり活動を促すとして、一体何を大事にしたらいいの?というと、いまだ答えはない。

大会シンポジウムでは、ある登壇者は「面白くないとダメだ」っていう。そしたら別の登壇者が「いや、私は面白さじゃないと思う、楽しさだ」っていう。別の人は「やりがいが大事だ」という。別の人は「その取組の必要性、意義を語ることが大事だ」という。さらに「信頼関係が大事だ」という人もいた。

このやりとりが、とても面白いなと思った。たぶん、どれが正しいか、ということでいえば、どれも正しい。現時点で言える最もシンプルな答えは、当たり前だが「人による」である。特定の動機だけですべての人が動くわけではない。人それぞれ大事にしていること、価値観が違うわけだから、Aさんに動いてほしければ、Aさんが大事にしていることA’を尊重しないといけないし、Bさんに動いてほしければB'を尊重しなければならない。当たり前の話だが。

その意味では、今回の議論において、実は登壇者は「自分だったらこれが理由で動くよ」という、自身の価値観をはからずも自己表明してしまった形になった気がする。

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